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p.67 抽出テキスト

の予後を左右する.ひとたび瘤が形成されると,血管リモデリングが成人期にもわたり長期に継続する.瘤径が大きければ大きいほど心イベントをきたすリスクが高くなることが証明されており756),瘤が残存する症例,また瘤が退縮したとしても中等以上(Z score≧5.0)の瘤の既往がある症例では生涯にわたる経過観察を要する757).

川崎病の遠隔期における心血管系への影響は,1 血栓性閉塞による急性冠症候群,2長期にわたる血管リモデリングによる冠動脈狭窄・閉塞,3早期動脈硬化の進展リスクが挙げられる.したがって冠動脈イベント予防は,アスピリンによる抗血小板療法が主体となる(推奨クラスI,エビデンスレベルC).巨大瘤や急性心筋梗塞の既往,瘤内血栓を有する例にはワルファリンによる抗凝固療法を行う(推奨クラスI,エビデンスレベルC).直接経口抗凝固薬(DOAC)による血栓予防も期待されているが,まだエビデンスはない.

この他に血管リモデリング抑制を目的にACE阻害薬やARBを使用する報告もあるが,長期予後は不明である.早期動脈硬化進展の危惧から動脈硬化危険因子を減らす生活習慣指導が推奨される.成人における膨大な抗動脈硬化治療のエビデンスから,川崎病に関する日米のガイドラインでは,ひとたび冠動脈瘤をきたした症例には,ACE阻害薬やスタチンの使用を考慮するよう提言されている(推奨クラスIIb,エビデンスレベルC) 757, 758).しかし,現時点では,ACE阻害薬やスタチンの開始時期や開始条件に関する明確なエビデンスはない.

小児科から内科への移行医療の対象となる疾患であるが,診療逸脱(ドロップアウト)が最も問題である.一般医家は川崎病冠動脈瘤既往を有する症例には診療逸脱の有無を確認し,逸脱例はしかるべき医療機関への受診を促すべきである.

5.5.2 先天性冠動脈異常

a. 突然死の原因としての先天性冠動脈異常i. 学童・若年者における心臓突然死759-761)

わが国における学校管理下突然死の発生頻度は年間生徒10万人に対して約0.2件である762).その中で,運動中の突然死の3/4を心臓突然死が占める762, 763). ii. 先天性冠動脈異常とその分類764)

心臓突然死の原因疾患は,肥大型心筋症や先天性冠動脈異常が多数を占める760, 761).先天性冠動脈異常のなかでも特に冠動脈が対側の冠動脈洞から起始する異常は,冠動脈の中枢側が大動脈壁内を走行することがあり,また,肺動脈と大動脈に挟まれた位置に存在する.運動中の両大血管の内圧上昇や拡張は異常走行している冠動脈を圧迫し,

上に増加した753).小児の糖尿病診断は,成人と同様,空腹時血糖(FPG),経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)の2時間値,随時血糖,HbA1cによって,1糖尿病型,2境界型,3正常型に分けられる754).小児でも成人と同様に血糖値とHbA1cを使った糖尿病診断のフローチャートが用いられている.成人では,FPGが100 mg/dL以上かつ110 mg/dL未満を正常高値と判定するが,小児期メタボリックシンドローム診断基準ではFPGが100 mg/dL以上なら空腹時高血糖ありと判定し,OGTTの実施が奨められる.

小児の2型糖尿病は,肥満との関連が強く,高血圧や脂質異常症も合併しやすい.高血糖が持続すれば,網膜症,腎症,神経障害ばかりでなく,CADや脳梗塞の発症リスクも上昇する.米国人小児を対象とした研究によれば,小児期発症の2型糖尿病の15年後の予後は,1型糖尿病より悪く,患者1000人あたり3.7人/年の心血管イベントが発生したと報告されており755),小児期からの肥満・糖尿病予防や適切な治療管理が必要である(推奨クラス IIa,エビデンスレベルB).

5.5 冠動脈突然死の可能性を有する疾患

5.5.1 川崎病(表37)

表37 冠動脈疾患予防における川崎病の薬物治療に関する推奨とエビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

川崎病後遺症として冠動脈瘤残存例や中等瘤以上の既往を有する例にはアスピリンを投与する. I C巨大瘤や急性心筋梗塞の既往,瘤内血栓を有する例にはワルファリンを投与する. I C冠動脈瘤合併例には,スタチンやACE 阻害薬の投与を考慮してもよい. IIb C

川崎病は乳幼児に好発する原因不明の全身の中型血管炎であり,特に冠動脈の強い炎症による冠動脈瘤形成がそ

表36 冠動脈疾患一次予防における小児の糖代謝異常・糖尿病の推奨とエビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

冠動脈疾患予防のためには,小児肥満・2型糖尿病の予防や適切な治療管理を考慮する. IIa B