p.65 抽出テキスト
の肥満判定にBMIのパーセンタイル値や,BMIのZ-スコアが用いられている. わが国の内臓脂肪型肥満のゴールドスタンダードは,小児では腹部CT画像における臍高レベルの内臓脂肪面積が60 cm 2以上の場合とされている743).過剰な内臓脂肪型蓄積を反映する腹部肥満の簡易診断法は臍周囲長が用いられ,小学生で75 cm以上,中学生では80 cm以上の場合, 6歳以降のすべての年齢で,ウエスト身長比=臍周囲長(cm)/身長(cm)が0.5以上の場合に腹部肥満ありと診断する744).ただし,小児は日々成長しているため,体格の推移や治療効果の判断には身長体重の成長曲線や肥満度曲線を描いて経時的に評価することが大切である745). 2000年に成人肥満症の判定基準が策定されたのを受けて,小児肥満症の判定基準は2002年に策定された746).現在は2014年に改訂された診断基準が用いられている(表34) 747).同様に小児と成人のメタボリックシンドロームの診断基準を表35 に示す231, 748).小児肥満症やメタボリックシンドロームの中核となる病態は,過剰な内臓脂肪蓄積である.10代から過剰な内臓脂肪蓄積に伴って総頸動脈stiffnessの亢進が認められることや,12~18歳時の心血管危険因子の集積数が多いほど,21年後の総頸動脈の内膜中膜厚(IMT)がより厚くなることが報告されている749, 750). 2014年に改訂された小児肥満症診断基準に基づいて, ロール血症(FH)に関する推奨を表32に示す.小児FHは早期診断の重要性への認識が増すなか,わが国では2017年に初めて小児FHのガイドラインが策定された.その後改訂された「小児家族性高コレステロール血症診療ガイドライン2022」における小児FHの診断基準では,FH家族歴が不明確でもコレステロール値のみで疑いを含めた診断が可能となり(表33) 679, 731),従来のカスケードスクリーニングに加え,ユニバーサルスクリーニングによる診断の重要性が増してきている732, 733).わが国では,各地で実施されている小児生活習慣病予防健診がその機会の一つとなっており,小学4年生(9~10歳)対象の健診において,単独でも疑い診断となるLDL-C 180 mg/dL以上に相当する児童の頻度は0.3~0.4%と報告されている734, 735).小児期におけるFHの早期診断や早期治療の有効性に関するエビデンスは徐々に報告されつつあり736, 737),CAD一次予防のためには早期治療を考慮すべきである(表32).小児においてもスタチンが第一選択薬であり738),わが国では2015年から10歳以上の小児にピタバスタチンが適応となり,安全性,有効性が報告されている739).(FHについては第3章3.家族性高コレステロール血症も参照) 5.3 肥満症・メタボリックシンドローム 古典的な心血管危険因子として知られる,高血圧,脂質異常症,糖尿病に加え,小児肥満の重要性が増している740).小児でも過剰な内臓脂肪蓄積は,アディポサイトカインバランスの変調を介して,高血圧,脂質異常症,糖代謝異常や血液凝固系亢進,全身の慢性炎症を引き起こす741).若年者の肥満は成人後のCAD発症リスクを上昇させる742). わが国では,小児の体格判定に,成人で用いられるBMIの絶対値ではなく,村田らの肥満度(肥満度=[(実測体重-標準体重) / 標準体重]×100)が広く用いられている.この式から算出された肥満度を用いて,幼児期は,肥満度+15%以上を「ふとりぎみ」,6歳以上18歳未満は,肥満度が+20%以上を「肥満」と判定する.欧米では,小児表33 小児家族性高コレステロール血症(FH)(15 歳未満) の診断基準1. 高 LDL-C 血症(未治療時の LDL-C 値 140 mg/dL 以上,複数回確認) 2. FH の家族歴(親または同胞) 3. 親の LDL-C が 180 mg/dL 以上または早発性冠動脈疾患の家族歴(祖父母または親)他の原発性・続発性高 LDL-C 血症を除外し,項目1と2で,FHと診断する.項目1 と3 で,FH疑いと診断する.本人のLDL-C 180 mg/dL以上の場合はFHと診断する.項目1 のみでも,250 mg/dL以上はFH,180 mg/dL以上は FH疑いと診断する.・ LDL-C が 250 mg/dL 以上の場合や黄色腫が認められる場合,ホモ接合体を鑑別する.・ 本人に FH の病原性遺伝子変異がある場合は FH と診断する.親または同胞に FH 病原性遺伝子変異が判明すれば FH の家族歴(項目2)に加える.・ 早発性冠動脈疾患は,男性55歳未満,女性65歳未満で発症した冠動脈疾患と定義する.・ FH 疑い例は更なる精査や脂質低下療法が必要である. (日本動脈硬化学会.動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022.2022 731),日本小児科学会・日本動脈硬化学会.小児家族性高コレステロール血症診療ガイドライン2022.2022 679)より) 表32 冠動脈疾患一次予防における小児家族性高コレステ ロール血症(FH)治療の推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル 小児FH で早発性冠動脈疾患の家族歴が濃厚な例やLDL コレステロール180 mg/ dL 以上が持続する例には,スタチンが適応となる10 歳からの治療を考慮する. IIa C