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知見も十分とはいえない状況にある.今後は学校心臓病検診や小児生活習慣病予防健診等の機会を利用した小児血圧測定を全国的に一層普及させ,それらのデータを基に将来の心血管疾患予防につながるより確かな小児基準を構築することが重要である. 小児高血圧基準に関するエビデンス ・ 小児では疾患発症リスクによる基準設定が困難であ り,欧米では年齢ごとの90/95パーセンタイル値以上を正常高値血圧/高血圧と定義して経過観察の対象としている719, 720).・ わが国の小児血圧疫学研究(見附スタディ)におけ る95パーセンタイル値は,全年齢群でJSH2019 の高血圧基準より10~15 mmHg低い.正常高値血圧基準の参考となる90パーセンタイル値(mmHg)は,小学校低,高学年,中学校男子,女子でそれぞれ約105/60,115/60,130/70,125/70 である.JSH2004基準(JSH2019と同じ)による小児全体の高血圧出現頻度は0.1~3%,肥満小児では3~5%である721, 722). 小児でも高血圧は頸動脈IMTの増大や左室肥大の要因となる723, 724).低体重出生児に高血圧発症が多いことも知られており,ネフロン数の減少やインスリン抵抗性などがその要因とされる725, 726).小児本態性高血圧の治療は,肥満解消や,食事,運動などの生活習慣改善が基本である.小児でも食塩摂取量と血圧とは関連があり,減塩も重要となる727).薬物ではCa拮抗薬,ACE阻害薬,ARBのいくつかに小児への適応がある74). 5.2 脂質異常症 小児の脂質値には年齢差,性差を認め,男子の思春期にコレステロールが一時低下する特徴がある.わが国の小児脂質高値基準は,全国的な小児血清脂質調査における95パーセンタイル値(mg/dL)から,総コレステロール(TC)≧220,LDLコレステロール(LDL-C)≧140,トリグリセライド≧140,HDLコレステロール(HDL-C)<40,およびnon-HDLコレステロール(non-HDL-C)≧150 がカットオフ値として用いられている728, 729). 小児の脂質異常症は思春期から若年成人に早期の冠動脈硬化を引き起こすため,CAD一次予防において重要な危険因子とされている730).小児肥満やメタボリックシンドロームに伴う脂質異常症には,食事,運動,肥満対策などの生活習慣改善が基本となる.小児の家族性高コレステ 5 小児 小児や若年者の冠動脈の病理学的検討によれば,動脈硬化は小児期から認められ,小児の剖検例においても生前の心血管危険因子集積数が多いほど,動脈硬化巣の面積が広いことが報告されている714).小児期は,基本的な生活習慣を身につける時期であり,健康に役立つ知識や健康的な生活習慣を習得させ,小児生活習慣病に関する適切なスクリーニング検査を行い,有所見者には早期介入を行うことが,将来のCAD予防の鍵となる715).わが国では,低出生体重児で出生する者が多く,低出生体重児は,将来,肥満やCADなどの非感染性疾患に罹患しやすい716, 717).さらに,家族性高コレステロール血症など小児期から動脈硬化が進行しやすい疾患や,小児期に冠動脈イベントを発生しうる先天性冠動脈異常や心臓血管後遺症を有する川崎病に関する理解も深める必要もある. 5.1 高血圧 小児の血圧は体格に応じたカフを用いて3回以上測定することを原則とするが,測定値は年齢,性別,身長などに左右される.わが国では日本高血圧学会の高血圧治療ガイドライン2019(JSH2019)で,年齢群別,性別に小児高血圧基準が示されている(表31) 74).成人では,JSH2019で脳心血管疾患死増加を根拠に収縮期血圧120~139 mmHgの間に正常高値血圧,高値血圧を新たに定義して注意喚起がなされているが,小児の正常高値血圧基準は示されていない.小児血圧の成人へのトラッキング718)を考慮すれば,わが国でもCAD一次予防上,小児正常高値血圧基準の確立が必須である. しかしわが国では元来,小児血圧測定の機会が少ないため,ハイリスク者はもとより,小児全般の正常値に関する 表31 小児の年代別,性別高血圧基準 収縮期血圧 (mmHg)拡張期血圧 (mmHg) 幼児≧120 ≧70小学校 低学年高学年≧130 ≧135 ≧80 ≧80中学校 男子女子≧140 ≧135 ≧85 ≧80高等学校≧140 ≧85 (日本高血圧学会. 高血圧治療ガイドライン2019. 2019 74)より)