p.62 抽出テキスト
ず,収縮期血圧110 mmHg未満への降圧は避けるように提案されている692).しかし,特に高齢者では個々の状態によって影響され一律的に決まるものではないと考えられるために,具体的な下限血圧値の記載は行わないこととした. 降圧目標達成のための非薬物療法については,CKD診療ガイドライン2018では,CKD患者において高血圧・尿蛋白の抑制とCVDの予防のため,6 g/日未満の食塩摂取制限が推奨されている.ただし,過度の減塩は害となる可能性があるため,3 g/日を目安として個々の症例に応じた下限も設定されている692).薬物療法については,CKD診療ガイドライン2018やJSH2019では,以下が推奨されている74, 692).・ 糖尿病合併の有無にかかわらず蛋白尿A1区分では,第 一選択薬としてRA系阻害薬(ARB,ACE阻害薬),Ca拮抗薬,サイアザイド系利尿薬(eGFR 30 mL/分/1.73 m 2以上の場合)のいずれかの投与・ 糖尿病合併の有無にかかわらず蛋白尿A2・A3区分で は,第一選択薬としてRA系阻害薬(ARB,ACE阻害薬)の投与b. 脂質管理 高血圧治療以外では,脂質異常症を有するCKD患者に対する脂質低下療法としてスタチン単独およびエゼチミブとの併用により尿蛋白・腎機能悪化の抑制作用,CVD発症予防作用の報告があり,CKD診療ガイドライン2018ではこれらの薬剤が提案されている692).そのために脂質異常症(高LDLコレステロール血症)を有するCKD患者に対してはスタチン単独またはエゼチミブとの併用による加療を考慮する. 一方,脂質異常症(高TG血症)を有するCKD患者に対するフィブラート系薬剤は,中等度腎機能障害患者には慎重投与,高度腎機能障害患者には禁忌とされてきた692).なお,これら従来のフィブラート系薬剤が腎排泄型であるのに対し,選択的PPARαモジュレーター(SPPARMα)のペマフィブラートは胆汁排泄型である.そのためペマフィブラートについて,厚生労働省は2022年10月に,高度腎機能障害患者(今回の改訂では高度腎機能障害患者を「推算糸球体濾過量(eGFR)が30 mL/分/1.73 m 2未満の腎機能障害のある患者」と定義)に対して,これまでの禁忌から慎重投与へと医薬品添付文書の改訂を行った.CKD患者におけるペマフィブラートの有用性や安全性に関する今後のエビデンスが期待される. 4.4.2 CKD治療に関する新薬の動向 a. ナトリウム・グルコース共輸送体2(SGLT2)阻害薬 蛋白尿を有さない糖尿病非合併CKD患者における 下,ESKDへの進行)は両群間に差を認めなかった81).よってSTEP試験では,高齢(60~80歳)患者の高血圧に対する厳格降圧によるCVD抑制効果が認められた一方で, CKD抑制効果は明らかではなかった81). また,非糖尿病の高リスク高血圧患者9,361人(平均年齢67.9歳,75歳以上28.2%,CKD症例28.3%[ただし, eGFR<20 mL/分/1.73 m 2は対象から除外],CVD既往あり20.0%)を対象としたSPRINT試験の最終報告としてサブ解析が報告されている.厳格降圧群(収縮期血圧120 mmHg未満)と標準降圧群(収縮期血圧140 mmHg未満)が当初の介入試験期間(中央値3.33年)に試験後の観察期間を加えた統合期間(中央値3.88年)で比較検討されている80).介入試験期間では,主要複合アウトカム(脳・心血管疾患,急性心不全,心血管死)は,厳格降圧群1.77%,標準降圧群2.40%,HR 0.73(0.63-0.86),総死亡もそれぞれ1.06%,1.41%,0.75(0.61-0.92)といずれも厳格降圧群で有意に少なく,統合期間での解析でも,主要複合アウトカム(厳格降圧群1.84%,標準降圧群2.43%,0.76 [0.65- 0.88])と総死亡(厳格降圧群1.23%,標準降圧群1.55%, 0.79 [0.66-0.94])で同様の減少が示された80).一方で,統 合期間における解析でも,急性腎障害(AKI)は厳格降圧群で多く認められ(厳格降圧群1.3%,標準降圧群0.8%, 1.69 [1.37-2.10]),また正常腎機能高血圧患者で腎機能低 下(30%以上のeGFR低下が90日以上持続)も有意に多かった(厳格降圧群1.29%,標準降圧群0.39%,3.34 [2.44-4.66]) 80).以上から,厳格降圧はCVDや総死亡を減少させる一方でAKI発症リスクを増加させる可能性が示されている80). したがって,高血圧を有するCKD患者に対する降圧目標については,ESKD進展抑制とCVD発症抑制の観点から,CKD診療ガイドライン2018や高血圧治療ガイドライン2019(JSH2019)での診察室血圧の降圧目標を踏襲し,・ 糖尿病合併CKD:蛋白尿の有無にかかわらず130/80 mmHg未満・ 糖尿病非合併CKD:蛋白尿A1区分では140/90 mmHg 未満,蛋白尿A2・A3区分では130/80 mmHg未満が推奨される74, 692).また,家庭血圧での血圧値は,収縮期血圧,拡張期血圧ともに診察室血圧での血圧値から5 mmHgずつ低い値となる74). 一方,降圧の下限値については,国内での前向きコホート研究であるGON-RYO研究では,110/70 mmHg未満で脳血管障害を含むCVDや腎代替療法(腎移植,腹膜透析,血液透析)導入前の死亡が増加することが報告されており707),CKD診療ガイドライン2018では,AKI予防の観点から,糖尿病合併の有無およびCKDステージにかかわら