p.59 抽出テキスト
MDRD推算式を用いてGFRを算出することを推奨している(MDRD推算式は腎機能低下者を主な対象として日本人向けに開発されたものであり,血清Cr値,性別,年齢から求める697)).・ 一方,日本人向けのCKD-EPI式も開発されてい る698).・ 正常腎機能者が多いと考えられる日本人一般住民を 対象とした前向きコホート研究において,MDRD式によるeGFRの代わりにCKD-EPI式によるeGFRを用いることで全死亡リスクの予測能が有意に改善したことも報告されている699).・ なお,るい痩,下肢切断などの極端に筋肉量が少な い場合には血清シスタチンC(Cys-C)値に基づくGFR推算式が推奨されている700).・ なお,CKDの評価にはCCr(クレアチニン・クリア ランス)は用いないこととされている. 4.2 CKDと心血管疾患(CVD)リスク: 心腎連関 CKDは,上記のように透析療法や移植が必要なESKDのリスクを増加させることに加えて,動脈硬化を促進しCVDの発症と死亡率も上昇させることが知られている(心腎連関) 692).たとえば米国一般住民を対象に死亡リスクとESKDに至るリスクを腎機能別に検討した報告では, ESKDに至る前の段階の保存期CKDであってもESKDへ進行するリスクより死亡するリスクのほうが高いことが示されている701).欧米に比べてCVDの頻度が低いとされる日本でも,大規模疫学研究の久山町研究では欧米での研究結果と同様に,CKD(GFR 60 mL/min/1.73 m 2未満)群では正常腎機能群に比較してCVDの発症頻度が高いことが報告されている702).また,一般住民105,872人を対象とした14コホート研究のメタ解析の結果でも,腎機能についてGFR 60 mL/分/1.73 m 2未満のCKDの存在は,CVDと全死亡のリスクとなり,さらにGFR が低下するほど相対リスクの上昇が認められている703).同時に,アルブミン尿も腎機能とは独立したCVD,全死亡の危険因子であり,アルブミン尿の増加とともにCVD,全死亡のリスクが高くなることが示されている703). 4.3 CKDの重症度分類 ここまでCKDに関して腎機能(GFR)の低下を中心に論じてきたが,アルブミン尿や蛋白尿の存在は,腎臓の構造 CKDの定義に関する注意事項 ・ 現在の CKDの定義は,1尿異常(特に蛋白尿の存 在が重要とされる),画像診断,血液,病理で腎障害の存在が明らか,2糸球体濾過量(GFR)<60 mL/分/1.73 m 2,のいずれか,または両方が3ヵ月以上持続する状態とされている.・ 日常診療ではGFRは,血清クレアチニン(Cr)と年 齢,性別より,成人では日本人のGFR推算式を用いて推算GFR(eGFR)として評価することが一般的である692).・ 日本腎臓学会「エビデンスに基づくCKD診療ガイ ドライン 2018」692)では日本人向けに開発された 表29 冠動脈疾患一次予防における慢性腎臓病(CKD)に 対する評価・治療の推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル CKD 患者にはCKD-CGA 分類による重症度評価を行う. I C診察室血圧の降圧目標糖尿病合併CKD:130/80 mmHg 未満とする(蛋白尿の有無にかかわらず). I B糖尿病非合併CKD:蛋白尿A1 区分では140/90 mmHg 未満とする. I A糖尿病非合併CKD:蛋白尿A2・3 区分では130/80 mmHg 未満を考慮してもよい(CKD ステージも参考にして決定). IIb B薬物による降圧療法糖尿病合併/ 非合併にかかわらず蛋白尿A1 区分:第一選択薬として,RA系阻害薬(ARB,ACE 阻害薬),Ca 拮抗薬,サイアザイド系利尿薬(eGFR 30 mL/ 分/ 1.73 m2 以上の場合)のいずれかの投与を考慮する. IIa C糖尿病合併/ 非合併にかかわらず蛋白尿A2・A3 区分:第一選択薬として, RA 系阻害薬(ARB,ACE 阻害薬)の投与を行う. I A脂質異常症を有するCKD 患者の脂質降下療法脂質異常症(高LDL コレステロール血症)を有するCKD 患者に対してはスタチン単独またはエゼチミブとの併用による加療を考慮する. IIa B脂質異常症(高TG 血症)を有するCKD患者に対するフィブラート系薬剤は,高度腎機能障害を伴う場合には,肝臓で代謝されるペマフィブラート慎重投与,それ以外のフィブラート系薬剤は禁忌である. III Harm C