GL検索 v0.1.0
画像は 58 ページを描画したものです
page 58

p.58 抽出テキスト

3.7 妊娠可能女性の治療

妊娠を希望するFH患者には,安全に妊娠の継続と出産を行うために妊娠前に頸動脈エコーなどの動脈硬化の評価と十分な妊娠前カウンセリング(計画妊娠の必要性や中止すべき薬剤など)が望ましい.レジンを除く薬物療法は胎児奇形が懸念されるため,妊娠中の使用継続は控えるべきである.また,授乳中も同様である.

FHホモ接合体の妊娠はより計画的に行う必要があり,妊娠前に動脈硬化の評価(頸動脈エコーや運動負荷心電図を含む)を行うべきである.妊娠後期や出産時は著明なLDL-C上昇および心血管系への負荷がかかるため,妊娠中はLDLアフェレシスの実施が望ましい.FHホモ接合体合併妊娠患者ではLDLアフェレシスを安全に行うことができる691).

4 慢性腎臓病(CKD) (表29)

4.1 CKDの定義

CKDは腎障害や腎機能の低下が持続する病態を包括的に表す臨床診断学的定義である692).CKDは心筋梗塞や脳卒中,心不全などの心血管疾患(CVD)や死亡のリスクを上昇させることが国内の研究でも示されており(心腎連関),CADの一次予防の対象としてのCKDも重要である.日本腎臓学会,日本循環器学会,日本糖尿病学会などの学会,日本医師会,自治体,患者団体などが密接に協力して作成した腎疾患対策検討会報告書693)が2018年7月に厚生労働省健康局から発出され,それに基づいて,CKDの早期発見と早期治療の重要性についての啓発活動が行われている692, 694, 695).また,CKDが進行すると末期腎不全(ESKD)に至り,透析療法や腎移植術が必要となる.国内の慢性透析患者数は2020年末で約34.8万人であり,平均年齢は年々上昇傾向を示し,透析人口は高齢化している696).

日本人のCKD患者数は約1,330万人と推計され,成人約8人に1人はCKDであり,高齢者ではCKD有病率が高い692).CKDの多くは自覚症状に乏しいが,血液・尿検査で診断が可能である.このため健康診断や医療機関での検査によってCKDを早期に診断し,適切な治療を行うことで,CKDの重症化を防ぎ,CVDの発症を抑制することが重要とされる692).

すべきである.

3.5.3 薬物療法

ヘテロ接合体よりも積極的かつ迅速なLDL-C低下治療が必要である.また,スタチン・レジン・PCSK9阻害薬などのLDL-C低下機序はLDL受容体の発現増強が主であるため,LDL受容体活性がわずかに残存しているdefective typeでは不十分ながらもLDL-C低下効果を認めるが, LDL受容体活性が完全に欠損したnegative typeではLDL-C低下効果は期待できない686, 687).したがって,医療経済的な観点からPCSK9阻害薬を数回投与してもLDL-Cが低下しない症例には漫然と投与すべきではない.一方,後ろ向き試験ではあるが,FHホモ接合体に対するスタチン投与は死亡率の減少に寄与したとする報告がある688). MTP阻害薬はLDL受容体非依存的にLDL-C値を約50%低下させる689, 690)が,消化器症状や肝機能障害などの副作用軽減のために厳格な食事療法や節酒などの管理が必要である.なおFHホモ接合体は指定難病(告示番号79)であり,PCSK9阻害薬やMTP阻害薬,LDLアフェレシスなどの高額な治療に対して医療費助成制度がある.

3.5.4 LDLアフェレシス

FHホモ接合体では既存の薬物療法のみではLDL-C管理目標値に到達できないことも多く,しばしば1~2週間に1度のLDLアフェレシス治療が必要となる.LDLアフェレシスの開始年齢は早ければ早いほどよいが,ベッド上で安静にできる4~6歳頃の開始が現実的である.

3.6 小児(15歳未満)の治療

診断後は速やかに生活習慣の改善を指導する.また生涯にわたって喫煙しないこと,同居家族の禁煙も指導する.生活習慣の改善をしてもLDL-C値が180 mg/dL未満に低下しない場合,男女にかかわらず10歳以上で薬物療法の開始を考慮する.第一選択薬はスタチンであり,日本ではピタバスタチン(ただしジェネリック薬品は不可)が10歳以上の小児FHの適応となっており,1 mgから開始する(2 mg/日まで).LDL-C管理目標値は140 mg/dL未満であるが,達成困難な場合も多い.早発性CADや心臓突然死の家族歴,糖尿病などの合併例では,より積極的にLDL-C低下治療を実施する.疑い症例についても,LDL-C 180 mg/dL以上が続く場合などはスタチン開始を考慮してもよい.なお,診断または治療で迷う場合には専門医へ紹介または相談すべきである.