p.55 抽出テキスト
性疾患で,そのホモ接合体は臨床的にはFHホモ接合体の表現型となり,FHホモ接合体に含める. 3.3 FHの診断 3.3.1 診断基準 成人(15歳以上)FHの診断基準(動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版)を表28に示す39).若年患者などでアキレス腱肥厚が顕著でない症例もいるため,家族歴の聴取は重要である.また,急性心筋梗塞の急性期などでは,一時的にLDL-C値が低下することが多いため,心筋梗塞患者を診察する際には必ずアキレス腱の触診や家族歴の聴取を実施すべきである. FHホモ接合体の多くは血清総コレステロール値600 mg/dL以上,小児期から認められる皮膚・腱黄色腫と動脈硬化性疾患,両親がヘテロ接合体であるという特徴を有する.FHホモ接合体の黄色腫は手指・肘・膝関節や臀部といった屈曲や摩擦などの機械的刺激を受ける部位に好発する.重症FHヘテロ接合体との鑑別は難しいため,FHホモ接合体の確定診断には遺伝子解析が必要となる. 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版の診断基準 皮膚結節性黄色腫,早発性CADを3主徴とする.FH患者では生下時から高LDL-C血症が持続し,若年時から冠動脈硬化症の進展を認めるため,FHは単独でCADのリスクがきわめて高い疾患であり,未治療の男性で30~50歳,女性で50~70歳の間に心筋梗塞,狭心症などのCADを発症することが多い668).実際,わが国の急性冠症候群患者に占めるFHの割合は全体で2.7~5.7%と,一般人口に占める割合である約0.3%よりも著しく高く,より若年では8%前後ときわめて高いことが報告されている669, 670).他にも未治療のFHヘテロ接合体ではCAD発症リスクが約13倍高いこと671)や,非FHよりも15年以上早くCADを発症するがスタチンなどの脂質低下治療によりその発症を遅らせることができること672)が報告されている.そのため,高LDL-C血症患者を診察する場合にはFHを常に念頭に置き,早期診断および適切な治療を行うことが肝要である. 日本人でも他国と同様約300人に1人という高頻度でFHヘテロ接合体が存在し,40万人以上の患者がいると推定される673).日本におけるFHの診断率に関する正確な報告はないが,低いことが予想されるため,FHの診断率の向上は喫緊の課題である.また,1人のFH患者を診断した場合には,家族スクリーニング(カスケードスクリーニング)を実施し,早期に治療することが若年死の予防につながる. 3.2 FHの原因遺伝子 FHの診断に遺伝学的検査は必須ではないが,高LDL-C血症に下記のLDL受容体関連遺伝子の変異が認められれば確定診断が可能である.また該当患者が遺伝子診断されている場合,その家族も確定診断が可能である.2022年10月現在,指定難病であるFHを疑う患者に対する遺伝学的検査は保険診療内で実施可能である.しかし,検査の実施には別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生(支)局長への届け出をしている施設を介することが必要である. FHヘテロ接合体の原因となるのはLDL受容体,アポリポ蛋白B-100(アポB-100)の病原性遺伝子変異およびPCSK9の病原性機能獲得型遺伝子変異(Gain-of-function mutation)で,臨床診断されたFHヘテロ接合体の6~8割で原因遺伝子の変異が確認される674, 675).FHホモ接合体は対立遺伝子双方にLDL受容体,アポB-100,または機能獲得型のPCSK9の異常をもつものと定義される.常染色体潜性(劣性)高コレステロール血症(ARH)はlowdensity lipoprotein receptor adaptor protein 1(LDLRAP1)遺伝子の病原性変異に起因する常染色体潜性(劣性)遺伝表28 成人(15 歳以上)家族性高コレステロール血症 (FH)の診断基準1. 高 LDL-C 血症(未治療時の LDL-C 値 180 mg/dL以上) 2. 腱黄色腫(手背,肘,膝等またはアキレス腱肥厚)あるいは皮膚結節性黄色腫3. FH あるいは早発性冠動脈疾患の家族歴(第一度近親者)・ 他の原発性・続発性脂質異常症を除外した上で診断する.・ すでに薬物治療中の場合,治療のきっかけとなった脂質値を参考にする.・ アキレス腱肥厚はX線撮影により男性 8.0 mm 以上,女性 7.5 mm 以上,あるいは超音波により男性 6.0 mm 以上,女性 5.5 mm 以上にて診断する.・ 皮膚結節性黄色腫に眼瞼黄色腫は含まない.・ 早発性冠動脈疾患は男性55歳未満,女性65歳未満で発症した冠動脈疾患と定義する.・ 2項目以上を満たす場合に FH と診断する.・ 2項目以上を満たさない場合でも,LDL-C が 250 mg/dL 以上の場合,あるいは2 または3 を満たし LDL-C が 160 mg/dL 以上の場合は FH を強く疑う.・ FH 病原性遺伝子変異がある場合は FH と診断する.・ FH ホモ接合体が疑われる場合は遺伝学的検査による診断が望ましい.診断が難しい FH ヘテロ接合体疑いも遺伝学的検査が有用である.・ この診断基準は FH ホモ接合体にも当てはまる.・ FH と診断した場合,家族についても調べることが強く推奨さ れる. (日本動脈硬化学会. 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版. 2022 39)より)