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による特徴的な変化を示さない.一方,女性の場合,平均閉経年齢である50歳前は男性より低値であるが,50歳以後に上昇して男性より高値となる.トリグリセライド(TG)も同様で,50歳前は男性より低値で推移するが,50歳を過ぎると上昇して男性の値に近づく.HDLコレステロール(HDL-C)は男女ともに年齢による変化を示さず,女性が高値で推移する327a). その長期的な影響に関して,たとえば米国のNurses’ Health Study(NHS)では,閉経後女性でLDL-C高値とHDL-C低値がその他の危険因子とは独立したCADの予測因子であることを挙げている636).日本人女性の血清脂質とCAD発症との関連を検討した前向きコホート研究も複数存在する.JALS-ECCでは,総コレステロール(TC)低値群(Q1)に比べ高値群(Q4)の多因子調整心筋梗塞発症率が有意に高かった105).またCIRCSでは,多因子調整心筋梗塞発症ハザード比が,LDL-Cが30 mg/dL増加するごとに1.42倍と有意に高くなることが示された95). EPOCH-JAPANでは,40~69歳の女性において,TC高値群のCAD死亡ハザード比は低値群に比べて有意に高かった637).NIPPON DATA80 でも,TC低値群に比べてTC高値群の女性は多因子調整心疾患死亡ハザード比が有意に高かった106).日本人女性ではnon-HDL-C高値がCAD発症と有意に関連することも複数のコホート研究によって示されている(JALS-ECC,CIRCS) 105, 107, 129, 132). 以上より,TC,LDL-C,TG,non-HDL-Cなどの高値は,女性でもCADの危険因子であると考えられる. 治療介入,特にスタチンに関してわが国の女性に対象を絞った大規模臨床試験は少ない.MEGA試験では,プラバスタチン投与におけるCADのリスク低下は女性で認めなかったと当初報告されたが151),その後より詳細なサブ解析では55歳以上の女性に関してはMACE発症の有意なリスク低下が認められた638).JUPITER試験でも,ロスバスタチン投与により,女性の不安定狭心症入院・血行再建イベントのリスクは低下したが,心筋梗塞イベントの予防効果は明らかでなかった639).Cholesterol Treatment Trialists’ (CTT)Collaborationによるスタチンに関するメタ解析(心 血管疾患の一次予防)では,LDL-Cの1 mmol/L(38.7 mg/dL)の低下は,男性では心血管疾患リスク比を有意に低下させるが,女性では低下傾向を示すにとどまった150). このように,スタチンによる心血管疾患の一次予防効果は日本人女性では男性ほど明らかではない.一方で国際的には,二次予防に関するメタ解析でスタチンによるCVD予防効果が男女で同等であり640),スタチンを用いた27件のRCTに関するメタ解析では,一次予防・二次予防の双方で女性において心血管疾患の有意なリスク低下があり, 2 女性(表26) 表26 冠動脈疾患一次予防における脂質異常症を有する女性に対するホルモン補充療法(HRT)の推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル 脂質異常症と更年期障害を同時に有する女性に対しては,禁忌・慎重投与に該当しないことを確認した上で,HRT を考慮する. IIa A 2.1 日本人女性における冠動脈疾患の現状 CADの中で,心筋梗塞に関して最も多く疫学調査が行われているが,世界的にみて女性の発症率が男性よりも低いことが知られている624).一方で,心筋梗塞発症後の死亡率は,米国でも625–228),日本でも629, 630),女性が男性より高い.1990年代から2000年代にかけて行われたわが国の疫学調査で,女性の心筋梗塞の年齢調整発症率は,男性の20~50%であった6, 8, 631, 632).女性では50歳以降にCADの入院受療率が増加するが,依然として男性より低率である633). CAD発症率の加齢に伴う増加632),世界に類をみない日本人女性の高齢化634)とあわせ,今後女性のCADの発症・死亡の増加を見据えた対策が重要である.実際,2019年の人口動態統計による男女別死亡数・死亡率の順位をみると,女性では心疾患と脳血管疾患をあわせた死亡数・死亡率は悪性新生物よりも多くなっている635). 2.2 女性における動脈硬化危険因子と冠動脈 疾患との関連 2.2.1 血清脂質 血清脂質値と年齢との関係は,男女で大きく異なっている.下記のように,女性は閉経に伴うエストロゲン低下により血清脂質値が変化するが,特にLDLコレステロール(LDL-C)の上昇が閉経後女性におけるCAD発症率増加に寄与していると考えられる. 2019年の国民健康・栄養調査報告によれば,男性ではLDL-Cとnon HDLコレステロール(non-HDL-C)は年齢