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ただし,後期高齢者を対象としたコホート研究で,服用していたスタチンを中止した場合に,複合心血管イベントによる入院リスクが33%増加していた601)ことから,現段階では,もともとスタチンを服用していた後期高齢者には継続することを提案する. 1.1.7 糖尿病602) 糖尿病は,サルコペニアやフレイル,認知症のリスクであるため,高齢者の血糖管理は重要である.一方,高齢者では低血糖を起こしやすく,自覚症状が現れにくいため,重症低血糖をきたしやすい.重症低血糖は心血管疾患や認知症の発症,死亡の危険因子となる.したがって,高齢者糖尿病では,血糖を厳格に管理することで得られるメリットとデメリットを勘案し,目標設定を行う必要がある.このような背景に基づき,日本老年医学会から「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標(HbA1c値)」が2016年に発表された(表25) 602).ここでは患者の特徴・健康状態,特に認知機能とADL等に基づいた患者カテゴリー(I ~IIIの3群)および使用している薬剤の低血糖リスクを勘案し目標値が設定されている.高齢者糖尿病では,治療を厳格に行うことによって低血糖が発生するのを避けることが重 過降圧に関係するかもしれない転倒・骨折が起こりやすいため,特に後期高齢者では,原則として通常の半量から使用を開始し,1~3ヵ月かけて増量するなど,緩徐に降圧することが望ましい.また, 認知機能の低下等によって服薬アドヒアランスが低下することがある場合,一包化や合剤の使用, 家族への服薬指導等の工夫が必要である. 1.1.6 脂質異常症600) 脂質異常症の管理では,脂質だけでなく,高血圧,糖尿病等の他の動脈硬化リスク因子を含めて包括的に管理することが重要である.まず,生活習慣の改善が第一であり,特に肥満を有する場合,過食や糖質の過剰摂取を抑え,体重を減らすよう努める.しかしながら,過度の食事制限は,筋量や筋力の低下を伴う体重減少(サルコペニア)につながることがあり,体調の悪化,歩行障害・転倒につながる危険もあるため,体調と体重を確認しながら管理を行う. CADの一次予防に関して,前期高齢者ではスタチン治療によるLDLコレステロールの低下により,CADや非心原性脳梗塞の予防効果が認められているが,後期高齢者については,いまだ一定のエビデンスが得られていないため,個別に判断する. 表25 高齢者糖尿病の血糖コントロール目標(HbA1c 値) カテゴリーIカテゴリーIIカテゴリーIII 患者の特徴・健康状態注1) 1認知機能正常かつ2ADL自立1 軽度認知障害~軽度認知症または2 手段的ADL低下,基本的ADL 自立1 中等度以上の認知症または2基本的ADL低下または3多くの併存疾患や機能障害 重症低血糖が危惧される薬剤(インスリン製剤,SU薬,グリニド薬など)の使用なし注2) 7.0%未満7.0%未満8.0%未満 あり注3) 65歳以上75歳未満7.5%未満(下限6.5%) 75歳以上8.0%未満(下限7.0%) 8.0%未満(下限7.0%) 8.5%未満(下限7.5%) 治療目標は,年齢,罹病期間,低血糖の危険性,サポート体制などに加え,高齢者では認知機能や基本的ADL,手段的ADL,併存疾患なども考慮して個別に設定する.ただし,加齢に伴って重症低血糖の危険性が高くなることに十分注意する.注1:認知機能や基本的ADL(着衣,移動,入浴,トイレの使用など),手段的ADL(IADL:買い物,食事の準備,服薬管理,金銭管理など)の評価に関しては,日本老年医学会のホームページ(https://www.jpn-geriat-soc.or.jp/)を参照する.エンドオブライフの状態では,著しい高血糖を防止し,それに伴う脱水や急性合併症を予防する治療を優先する.注2:高齢者糖尿病においても,合併症予防のための目標は7.0%未満である.ただし,適切な食事療法や運動療法だけで達成可能な場合,または薬物療法の副作用なく達成可能な場合の目標を6.0%未満,治療の強化が難しい場合の目標を8.0%未満とする.下限を設けない.カテゴリーIIIに該当する状態で,多剤併用による有害作用が懸念される場合や,重篤な併存疾患を有し,社会的サポートが乏しい場合などには,8.5%未満を目標とすることも許容される.注3:糖尿病罹病期間も考慮し,合併症発症・進展阻止が優先される場合には,重症低血糖を予防する対策を講じつつ,個々の高齢者ごとに個別の目標や下限を設定してもよい.65歳未満からこれらの薬剤を用いて治療中であり,かつ血糖コントロール状態が表の目標や下限を下回る場合には,基本的に現状を維持するが,重症低血糖に十分注意する.グリニド薬は,種類・使用量・血糖値などを勘案し,重症低血糖が危惧されない薬剤に分類される場合もある.【重要な注意事項】 糖尿病治療薬の使用にあたっては,日本老年医学会編「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン」を参照すること.薬剤使用時には多剤併用を避け,副作用の出現に十分に注意する. (日本老年医学会・日本糖尿病学会 編・著. 高齢者糖尿病診療ガイドライン2017,p.46,南江堂,2017 602)より)