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が自らの症状を心疾患によるものと理解していなかったことが示されている564).またCADではないが,わが国の地域住民5,172人の調査から,脳卒中発作時の5症状を理解している割合は慢性疾患保有者であっても約2~3割と低いことが示されており565),日常診療において循環器疾患発症時の症状と対処方法に関する患者教育が十分でないことが伺える.

また,発症時の適切な対処行動はCADハイリスク者だけでなく,家庭や職場で心停止など救急救命が必要な状況に居合わせうる,つまりバイスタンダーとなりうるすべての市民に広く啓発すべきである.わが国の院外心停止の連続症例観察研究で,バイスタンダーによる適切な心肺蘇生が予後を改善させることが示されており566),市民啓発には上記のCAD発症時の症状,救急要請の重要性に関する知識の普及に加えて,適切な心肺蘇生の技術普及が重要である.

7.3 高尿酸血症とCAD(表22)

表22 冠動脈疾患一次予防における高尿酸血症治療に関する推奨とエビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

高尿酸血症患者には,肥満,高血圧,糖尿病,メタボリックシンドローム,慢性腎臓病などの併存が多いことを念頭に動脈硬化危険因子の評価を行う. I A高尿酸血症患者に対し,冠動脈疾患イベント発症予防を目的とした尿酸降下剤の投与は,エビデンスが乏しく,推奨されない

*. III No benefit C * 痛風関節炎または痛風結節,尿路結石の予防を目的とした尿酸降下剤投与はこのかぎりではない.

7.3.1 高尿酸血症とCAD発症

本稿では,血清尿酸値が7.0 mg/dLを超えている状態を高尿酸血症と定義する.一般集団において,高尿酸血症は肥満567)や高血圧568),糖尿病569),メタボリックシンドローム570),慢性腎臓病571)などのさまざまな動脈硬化危険因子と関連することが多くの疫学研究で報告されている.ACS等のCADイベント発症との関連については,高尿酸血症はCADの独立した危険因子であるとの報告がある一方で572–574),合併する他の動脈硬化危険因子と交絡していたとの報告もあり575–578),見解が一致していない.また,高尿酸血症に関連する遺伝子変異と心臓死やCADとの関連について,メンデルランダム化解析等も実施されているが,

れた557).また,ESCAPE Projectは,欧州のPM2.5環境基準値である年平均制限値25 μm/m 3を下回る曝露であっても有意なACS発症リスクの上昇が生じると報告した558).

しかしながら,わが国でのエビデンスは十分ではない. NIPPON DATA80 の24年間追跡ではSPM長期曝露はCVD死亡と関連を示さず559),JPHCではMI発症リスク上昇は示されたものの循環器疾患死亡リスクとの関連を認めなかったことから560),日本における長期追跡の結果は一貫していない.わが国では2009年のPM2.5濃度環境基準設定以前の評価における粒子状物質の定義が詳細ではなかったことから,PM2.5濃度の長期曝露影響については当面諸外国の報告に基づき判断するしかない.欧米の結論では, PM2.5濃度がCADリスクを上昇させることは明確であり561),CVDハイリスク者は可能なかぎり大気汚染を避けることが推奨されている562).

7.2 CAD発症時対処に関する患者教育・ 市民啓発(表21)

表21 冠動脈疾患一次予防に関連した教育・啓発に関する推奨とエビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

冠動脈疾患ハイリスク患者には,CAD 発症時の症状や救急車要請に関しても教育する. I C冠動脈疾患を含む急性冠症候群による突然死を予防するため,バイスタンダーとなりうるすべての人にCAD の症状や救急要請の重要性,心肺蘇生技術について広く周知する. I C

AMI発症時の治療開始の遅れは予後不良につながるため563),発症時の適切な判断と対処による急性期の早期治療は重要である.したがって,すべての医療従事者は,高血圧・糖尿病・脂質異常症などの危険因子を有するCADハイリスク者に対し,生活習慣改善や服薬治療,つまりCAD発症予防に関する患者教育だけでなく,発症時症状の理解および救急要請の重要性に関する患者教育を行う必要がある.特に,高齢者や糖尿病患者では胸痛や胸部絞扼感などの典型的な症状を示さないことが多く,より丁寧な指導が求められる.しかしながら,発作時症状の知識に関するシステマティックレビューでは,胸痛などの典型的症状は一般集団の約80%が理解しているのに対し,非典型症状(胃・腹部の不快感や嘔気嘔吐など)は10~28%の人にしか理解されていないこと,ACS発症者の半数以上