GL検索 v0.1.0
画像は 45 ページを描画したものです
page 45

p.45 抽出テキスト

ク上昇が示された546–548).死亡率については,死亡前2日間の最高気温が1度低いことにより循環器疾患死亡リスクは1.8%増加し,その関連は80歳未満でより強いことが示されている546).発症については,わが国の地域循環器疾患登録研究から夏季の最高気温と冬季の最低気温がAMI発症に関連すること549),J-MINUETによるAMI症例3,283人のサブ解析からは,AMI発症が冬季に多いことに加えて,冬季発症者の予後が不良であることが報告されている547).またJROADによる106万7,171人のDPC分析からは,入院前日の温度差が大きいほどCVD入院が多く,その関連は65歳未満と比較して75歳以上でより強いことが示されている550).J-PCIレジストリによる連続56,863人のST上昇型急性心筋梗塞(STEMI)の分析でも同様に,気温変動は年間通して,最低気温の低さは冬季にのみSTEMIの発生と関連することが認められている551).

7.1.4 大気汚染物質とCAD(表20)

表20 冠動脈疾患一次予防における大気汚染への対応に関する推奨とエビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

冠動脈疾患ハイリスク者では大気汚染への曝露を避けることを考慮する. IIa C

大気汚染物質は広範囲に蔓延するため,集団全体へ大きな影響を及ぼしうる552).WHOの推計によると,2016年の大気汚染による過剰死亡420万人の58%がCADと脳卒中であり,18%の慢性閉塞性肺疾患(COPD)および急性下気道感染症,6%の肺がんと比較してきわめて大きい553).

汚染物質は粒子が小さいほど大気中に長く浮遊し,吸入・沈着しやすい.大気中に浮遊する粒子状物質(SPM)のうち粒子径が10~2.5 μmのものはPM10-2.5,2.5 μm未満のものはPM2.5,0.1 μm未満の超微小粒子はultrafine particleと定義される.CADへの影響についてはPM2.5に関する知見が蓄積されている. a. 短期曝露

PM2.5濃度上昇によるCAD死亡リスクの増加554)や院外心停止の増加555)が,わが国の疫学調査から報告されている.一方,PM10-2.5とCADとの関連については,現段階では結論づけられておらず556),知見の蓄積が求められる. b. 長期曝露

米国対がん協会研究の18年追跡では,PM2.5濃度 10 μm/ m 3上昇によりCAD死亡リスクが7.5%増加することが示さ

ン依存症の形成が懸念されている530).また受動喫煙も発生する531).システマティックレビューによると,加熱式タバコは従来の喫煙ほどにはCVDリスクが高くない可能性があるが,非喫煙者が加熱式タバコを開始した場合はCVD発生リスクを上昇させる可能性がある532, 533).また動物実験では,加熱式タバコが紙巻タバコと同程度に血管内皮機能を障害したとの報告もあり534),加熱式タバコの動脈硬化性疾患への関与が懸念される.

7.1.2 口腔衛生とCAD

歯周病はCADの危険因子またはマーカーであると報告されており535, 536),2013年の欧州歯周病学会と米国歯周病学会合同ワークショップによるコンセンサスレポートでは強い根拠があるとされた537).わが国でも,歯周病を有する者はCAD有病割合が高いとの報告もある538).歯周病がCAD発症に関与する根拠として,アテローム性動脈硬化などの血管病変から複数の歯周病原細菌が検出されていること539, 540),歯周病原細菌が血小板凝集を誘導すること541),歯周病に伴う慢性炎症がCADを惹起させること542)などが挙げられている.一方で,歯周病とCADに関連はないとの報告もあり543),米国心臓協会(AHA)のシステマティックレビューでは,歯周病がCADの発症や進行に影響するとの十分なエビデンスはないとしている544).

7.1.3 季節・気温とCAD(表19)

表19 冠動脈疾患一次予防における季節・気温への対応に関する推奨とエビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

寒冷(冬季の低気温)・暑熱(夏季の高気温),急激な温度変化が冠動脈疾患誘発リスクを高めるため,冠動脈疾患ハイリスク者にはこれらに留意するなどの指導を考慮する. IIa C

外気温の変化は血圧や心拍等の循環動態に生理的反応を生じさせるため,CADハイリスク者に対する日常診療場面では,急激な温度変化を避けるよう生活指導が行われる.循環器疾患発症・死亡の季節変動に関するレビューによると545),循環器疾患による入院や死亡は冬季に多く,各季節における気温変動からイベント発生率上昇の日数(ラグ)は冬季が長く夏季は短い.また,こうした季節差は温暖地域で特に顕著である545).

わが国での季節・気温とCAD・循環器疾患に関する報告の多くで,冬季もしくは低気温による循環器疾患のリス