p.41 抽出テキスト
動療法によりHDL-Cが10 mg/dL上昇することが報告されている509).東アジア人の健常成人を対象としたメタ解析でも,有酸素運動はTC,TGを低下させHDL-Cを上昇させた(TC -5.8 mg/dL,TG -13.7 mg/dL,HDL-C +2.2 mg/dL) 510).また150分/週以上の運動を実施した研究に限ると,LDL-C(-8.9 mg/dL)も低下することが示された510). 以上から身体活動量の増加や習慣的な有酸素性運動により,エネルギー消費量が増加し,内臓脂肪と皮下脂肪がエネルギー源として利用され,腹囲や体重が減少し,また骨格筋のインスリン抵抗性改善によりメタボリックシンドローム関連因子が改善すると考えられる494, 511, 512). さらに古典的危険因子のみならず,中等度の運動を6ヵ月以上継続すると,単核球からの動脈硬化惹起性であるTNF-α,INF-γの分泌が抑制され,血中CRP値が減少することが示されている513).炎症の抑制による心血管イベントの減少が報告されていることから514),古典的危険因子の改善がみられなくても運動を継続することで動脈硬化抑制を介したCAD予防効果が期待できる. 6.6 運動の種類 運動は有酸素運動とレジスタンス運動に分けられる.有酸素運動は大きな筋肉を一定期間リズミカルに動かす運動であり,歩行,ランニング,水泳,サイクリングなどが含まれる.レジスタンス運動は筋肉抵抗(レジスタンス)をかける動作を繰り返して行う運動であり,筋力トレーニングなどが含まれる.有酸素運動は心肺機能,全身の持久力向上効果があり,レジスタンス運動は筋力,筋持久力,筋量を高める効果があり,双方の運動を行うことが望ましい.特に高血圧,脂質異常症,糖代謝異常,肥満などの生活習慣病予防や治療に対しては効果と安全性の面から有酸素運動がより推奨されている41). 6.7 有酸素運動 有酸素運動の目標とする運動強度はリスクと効果の観点から中等度(最大酸素摂取量の40~60%)が奨められる(表15).一次予防では最大酸素摂取量を測定する機会は少ないため,一般的な指標として,自覚症状に基づくBorg指数で11~13(楽である~ややきつい)程度の運動が奨められる(表16) 493, 515).具体的な運動としては,歩行やゆっくりしたジョギング,サイクリング,水中運動などが推奨される(図6). 中等度以上(3メッツ以上)の有酸素運動を1日30分以 職場などで座位時間が長いと心血管疾患,総死亡増加につながることが報告されている501, 502).またテレビを見る時間が長いと心血管疾患やCADによる死亡率が高い503).運動を行っても運動以外の座位時間が長い生活であれば活動量としては不十分になることが示唆され,運動習慣増加のみでなく,座位などの不活動時間を減少させることも重要である(表15). 6.4 身体活動の動脈硬化性疾患,冠動脈疾患 への効果 運動によるCADの一次予防に関しては,エビデンスレベルの高いRCTがないのが実情である.しかし,大規模観察研究の結果,運動習慣の増加および不活動時間の減少がCADを含めた心血管疾患発症低下と総死亡減少に関連していたことから,運動によるCADの抑制が期待される490–492).有酸素運動や生活活動を含む身体活動量と動脈硬化性疾患との関連を評価したコホート研究のシステマティックレビューによると,非活動群に対して身体活動量が多い群ではCAD死亡,心血管死亡,総死亡が有意に少ないことが示されている492, 504).その効果は,家事や職場での歩行などの低強度(1.6~2.9メッツ)の身体活動でも観察された505, 506).したがって,有酸素運動を含む身体活動の増加はCADを含む動脈硬化性疾患の発症および生命予後改善に有効といえる. 6.5 運動の潜在的効果 運動療法は古典的冠危険因子を改善することが下記のように示されている. 降圧:有酸素運動には降圧効果があることが示されている.たとえば,中等度から高強度の有酸素運動を平均40分/日,3~4回/週を少なくとも12週間行うと高血圧の有無にかかわらず,収縮期血圧で2~5 mmHg,拡張期血圧で1~4 mmHgの低下がメタ解析で示されている41, 507). 糖代謝:2型糖尿病に対する運動療法は,血糖コントロールを改善し,肥満・内臓脂肪蓄積・インスリン抵抗性を改善することが示されている.たとえば2型糖尿病患者で平均3.4回/週を8週以上(平均18週間),有酸素運動やレジスタンス運動を行うと,HbA1cを0.66%減少させることがメタ解析で報告されている508). 脂質:運動療法は脂質プロファイル改善効果があることが示されている.たとえば,CADを有しない健常成人で10週間から24ヵ月間,中等度(3~5.9メッツ)/日の有酸素運動の効果を非運動療法群と比較したメタ解析では,運