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p.36 抽出テキスト

ト研究では,魚およびn-3PUFA摂取の多い群で非致死性CADの発症リスク278),あるいは心血管疾患死亡リスクが低下していた279, 280).コホート研究のメタ解析では, CADイベント発症リスクの低下281),脳卒中リスクの低下を認めている282).したがって,RCTとコホート研究のメタ解析の結果は必ずしも一致しないが,魚油の摂取はCADを抑制する可能性がある.また血清脂質において,魚油の摂取を増やすことは,TGの低下に有効である283).

n-6PUFAに関して,SFAをn-6PUFA,なかでもリノール酸に置換することはCADイベント発症あるいは死亡リスクを低下させる可能性はあるが284),n-6PUFAの摂取量を増やすことによる効果はいまだ明らかでない.血清脂質への影響は,中等度の動脈硬化性疾患のリスクを有する者を対象とするRCTで,摂取エネルギー比率9.6%EのSFAをn-6PUFAに置換することで,TC,LDL-Cが有意に低下した272).他のRCTでは,脂質異常者を対象にコーン油によるn-6PUFA 19%Eの投与でバター投与と比べてTC, LDL-C,TG が低下した273).RCT のメタ解析でもn-6PUFAの高摂取群でTCの低下が示された268).

MUFAは肉,油脂,穀物や大豆など多くの食品に含まれる.RCTおよびコホート研究のメタ解析では,SFAをMUFAに置換しても,総死亡,心血管疾患発症,心筋梗塞発症,脳卒中発症,CAD死亡リスクに影響を及ぼさなかった263, 285).しかし,米国のコホート研究で行われた解析における理論的推定値では,SFAを植物食品由来MUFAで置き換えた場合,総死亡リスクと心血管疾患死亡リスクの低下を認めている284).よって植物性食品からの摂取が望まれる.血清脂質では,脂質異常症患者において高MUFA食は高SFA食よりもTC,LDL-Cを低下させた286–288).別の研究では総エネルギー摂取量に対するエネルギー比率12%Eを超えるMUFA摂取は12%E以下と比べて,血清脂質には有意な影響を示さなかった289).このように,MUFA摂取の増加で血清脂質の改善の可能性があるが,過剰摂取ではその効果は期待できない.また,高SFA食と比べて高MUFA食および上記の高PUFA食でHDL-Cが低下する報告286–288)があるが,わずかであり,この低下による悪影響は認められていない.

トランス脂肪酸について,天然由来(牛肉や羊肉,牛乳および乳製品)のトランス脂肪酸を工業的に生成されたもの(油脂を水素添加および精製する過程で生成)と同様に扱うべきかどうかについてのコンセンサスは得られていないが290–294),米国のコホート研究では,トランス脂肪酸摂取量は総死亡リスクおよび心血管疾患死亡リスクの上昇と関連していた284, 295).日本人では,メタボリックシンドローム患者および若年のCAD患者で,工業由来のトランス脂

摂取は血圧上昇を招くことから高リスク患者のみならず健常者でも日常より減塩すべきであり,高血圧や肥満症などを合併する場合ではCADや脳卒中の発症予防がより期待できる.

食塩摂取量の目標については,わが国の現状をふまえ, 6 g/日未満を目標とする74).しかし注意が必要な点として,食塩摂取量や排泄量の測定方法による違いがあるものの,心血管疾患高リスク患者を含む観察研究やコホート調査やそのメタ解析では,食塩摂取量と心血管疾患や総死亡リスクとの関係でJ-型もしくはU-型を示す報告があり,減塩には個々の病態を考慮する必要がある258, 262).特に高齢者では過度の減塩が脱水の誘因になることや,意欲(食欲)低下による摂取エネルギー不足で体重減少,サルコペニアをきたすことに注意する39, 74).また,減塩食品でも摂取量が増えれば食塩過剰になってしまうことを認識しておく必要がある.

食品選びのポイント

日本人の食塩摂取源のおよそ70%は調味料であり,添加を少なめにする.食塩を多く含む食品には,梅干や漬物,味噌汁,海産物の干物などの保存食品,かまぼこなどの練り製品,加工肉(ハム,ベーコン,ソーセージ,フライドチキン)などがあるため,重なることを控える.麺類のスープやおでんの出汁などを残すのも工夫の一つである.

5.3 脂肪酸

飽和脂肪酸(SFA)は血清TC,LDL-Cを上昇させ,摂取制限によりこれらの低下が認められる.そして制限することによって,心血管疾患発症リスクが低下する263).また, SFAを多価不飽和脂肪酸(PUFA)に置換することで心血管疾患発症リスクは21%減少したが,一価不飽和脂肪酸(MUFA)への置換の効果は明らかではない263).CAD予防のために,飽和脂肪酸は総エネルギー比率7%未満を目標とする.

n-3系多価不飽和脂肪酸(n-3PUFA)(魚油,αリノレン酸の食事またはカプセル製剤などのサプリメントを含む)を用いたRCTのメタ解析では,心血管死亡リスクや心血管疾患発症,CAD発症リスクへの影響についての結論は一致せず264–268),CAD発症の有意な抑制を認めた報告でもリスクは軽度低下(5~9%)にとどまっていた266, 268).欧米のコホート研究では,心血管疾患発症における魚摂取の有効性は一定していない269–277)が,日本人のコホー