p.35 抽出テキスト
エネルギー比率50~55%で総死亡リスクが最も低く,低炭水化物あるいは高炭水化物食は総死亡リスクが高かった246).低炭水化物食でも動物性脂肪摂取が高いと総死亡リスクの上昇,植物性脂肪が高いと総死亡リスクの低下が認められている246).血清脂質については,高脂肪食と比較したところ,低脂肪食でTCとLDL-Cの低下,TGの上昇およびHDL-Cの低下が認められる247).したがって,適正な総エネルギー摂取量のもとで脂肪エネルギー比率20 ~25%,炭水化物エネルギー比率50~60%に設定することが奨められる. 総エネルギー摂取量の設定 目標とする体重の目安は,総死亡が最も低いBMIが年齢によって幅があることを考慮し248),かつ肥満症の定義249)をふまえて以下の式から算出する. 18~49歳:[身長(m)] 2×18.5~24.9 kg/m 2,50 ~64歳:[身長(m)] 2×20.0~24.9 kg/m 2,65~74歳:[身長(m)] 2×21.5~24.9 kg/m 2,75歳以上:[身長(m)] 2×21.5~24.9 kg/m 2とする. 目標とする体重と日常生活活動量をもとに,総エネルギー摂取量を適正化する.総エネルギー摂取量(kcal/日)=目標とする体重(kg)×身体活動量(軽い労作で25~30,普通の労作で30~35,重い労作で35~)を目指す248, 250).ただし高齢者では現体重に基づき,フレイル,摂食状況や代謝状態の評価をふまえ適宜判断する248, 250). 5.2 食塩 食塩摂取量の増加によって血圧が上昇することが明らかにされている251, 252).また減塩介入で,高血圧者では収縮期および拡張期血圧の有意な低下,正常血圧者でも収縮期血圧の低下が認められている253).血圧を低下させることがCADや脳卒中リスクを下げることも,これまでの多くの臨床研究で明らかにされてきた79, 82).食塩摂取量と心血管疾患や総死亡リスクの関係については,実施国や性別,対象集団によって有意である場合とそうでない場合があり,一定した結論が得られていない252, 254, 255)が,24時間蓄尿法を用いた研究では,用量依存性に食塩摂取量や排泄量が増えると心血管疾患や総死亡リスクが増加している256, 257).心血管疾患の疾患別でみると,脳卒中では食塩摂取量の増加とともに脳卒中の発症と死亡リスクが増加することを示す報告が多いが254, 255, 257),CADでは脳卒中ほど明確には言及できない254, 255, 257–261).以上から,食塩の過剰 える. 6) 鶏卵の卵黄はコレステロールを多く含むため(お よそ220~240 mg/個),高LDL-C血症または糖尿病患者では制限を考慮すること(コレステロール摂取を200 mg/日未満),また過剰摂取は健常人でも控えることが望まれる.魚卵,子持ち魚や小魚あるいは内臓類(レバーやモツ)などはコレステロールが多いので,摂り過ぎないように注意する. 7) 食物繊維は,生活習慣病の重症化予防にはおお むね25 g/日以上の摂取が推奨される.なかでも穀類では,白米よりも麦飯,玄米,七分づき米(胚芽精米),雑穀類,また白パンよりも全粒穀パンのほうが食物繊維を多く含むために推奨される.野菜・果物は,動脈硬化性疾患の発症予防のために積極的に摂取する. 8) 果糖を含む加工食品の摂取量を減らすことを推奨 する. 9) 日本食の特色である海藻や大豆・大豆製品,そし て地中海食の特色であるナッツ類を摂取する. 10) 通常の食品から,いずれのビタミンも適正に摂取 することが心血管疾患リスクの低減,適正な血清脂質の維持に望ましい. 11) 多量飲酒(46~60 g/日以上)はCADのみならず 循環器疾患・がんなどの危険因子である.近年の質の高い研究から,従来いわれていた少量飲酒のCAD予防効果を否定する結果が報告されている.脳出血の増加やがんのリスク上昇を含むアルコール関連健康障害リスクを考慮すると,アルコールの摂取は25 g/日以下,あるいはできるだけ減らすことが望ましい. 5.1 総エネルギー摂取量と脂肪エネルギー 比率 過体重あるいは肥満者では,代謝異常の有無にかかわらず動脈硬化性疾患発症リスクが高い240–243).減量介入によって総死亡リスクは有意に減少し244),身体活動と食事療法介入によって,糖代謝異常のない者で血圧,総コレステロール(TC),LDLコレステロール(LDL-C),トリグリセライド(TG)の低下とHDLコレステロール(HDL-C)の増加を認めている245).よって適正な総エネルギー摂取量と適正な体重を維持することがCAD予防に大切である. 炭水化物のエネルギー比率でみると,炭水化物の摂取