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p.33 抽出テキスト

ついては第2,3章の該当する節を参照).CAD一次予防を目的とした抗血小板薬のルーチンでの使用は推奨しない.

4.3 冠動脈危険因子としての肥満, メタボリックシンドローム

肥満は加齢,喫煙,脂質異常,高血圧,糖尿病などのCAD危険因子とは独立した危険因子であることがFramingham Heart Studyにおける26年間の観察から明らかにされている228).日本人での観察研究でもおおむね同様であり,BMI 23~24.9 kg/m 2 を基準とすると,男女ともBMI≧27 kg/m 2くらいから量反応的にCADリスクが上昇する229).

肥満,特に内臓脂肪の過剰蓄積に伴って血圧の上昇,トリグリセライドの上昇やHDLコレステロールの低下230),インスリン抵抗性に伴う耐糖能異常231)などのCAD危険因子を重複して有する状態が増える.こうした内臓脂肪の過剰蓄積に伴うCAD危険因子の重複した状態がメタボリックシンドロームと定義されている231).久山町研究では,メタボリックシンドロームでは男性で1.94倍,女性で2.86倍にCADリスクが上昇することが報告されている232).同様に吹田研究でもメタボリックシンドロームを有する場合,男性で1.5倍,女性で2.7倍のCADリスク上昇が認められた233).

4.4 肥満,メタボリックシンドロームへの 治療介入

肥満の是正により直接,CADの発症を減少させたという報告は見当たらない.これは,肥満是正そのものがCAD予防に無効であるためではなく,生活習慣介入による適正体重の長期維持が難しいことが理由の一つと考えられる.

たとえば,2型糖尿病患者を対象にした米国の長期RCTであるLook AHEADでは,摂取エネルギーの制限と運動による体重減少を目的とした生活習慣への積極的介入により,心血管イベントの発症や死亡が通常の糖尿病教育や支援に比べて減少するかを検討したが,統計学的に有意な心血管イベント抑制効果は証明されなかった234).介入群と対照群との体重変化をみると,試験開始時点からの体重減少は1年後で介入群が8.6%減少,対照群が0.7%減少と両群の差が最大であったものの,その後介入群でリバウンド傾向(体重増加)を認めた一方,対照群の体重は少しずつ減少し続けた.その結果,試験終了時(9.6年後)には介入群で6.0%減,対照群で3.5%減と両者の差が小さくなってい

れていない)

50).わが国で行われたJ-DOIT3試験では,

Steno-2より一層厳しい管理目標でコントロールを行った(包括的治療強化)群で,従来の管理目標でコントロールした群と比較して,CADリスクの減少は認めなかったが,脳卒中の発症は有意に低下した51).したがって,循環器疾患予防の観点からは既存の危険因子の管理目標を包括的に達成していくことが重要である.

4.2.4 アスピリン

前回の虚血性心疾患の一次予防ガイドライン(2012年改訂版)では「虚血性心疾患の一次予防において,冠危険因子を合わせ持つ糖尿病患者には,禁忌でないかぎりアスピリンの使用が考慮されるべき」としていたが219),本ガイドラインでは,その後の科学的根拠を吟味した.少量アスピリンによる抗血小板治療の二次予防の有用性に関しては報告されているものの220),一次予防の有用性は明らかではない.日本人2型糖尿病患者を対象にした一次予防試験であるJPADでは,アスピリン群で心血管イベント発症リスクが20%低下したものの有意差はみられなかった221).また,糖尿病患者を対象としたアスピリンによる一次予防効果を検証した3つのRCT 222–224)やそれを含むメタ解析225)でも有効性が示されなかった.糖尿病患者を対象にアスピリンによる一次予防効果を検証した最近の報告(ASCEND)では,アスピリン群で心血管イベントの有意な減少を認めたが,同時に出血リスクの有意な増加も認めた226).

4.2.5 糖尿病に対する治療介入

以上をまとめると,糖尿病患者では,細小血管合併症(腎症,網膜症,場合により末梢神経障害)を有する場合はCAD発症ハイリスク群である.良好な血糖コントロールが心筋梗塞などの大血管イベント発症を抑制するが,その効果発現には10年以上の長期を要する.そのため診断・治療早期から可能なかぎり良好な血糖コントロールが推奨される.

血糖降下薬選択のガイドとして,日本糖尿病学会による2型糖尿病の薬物療法のアルゴリズムコンセンサスステートメントが推奨できる227).このアルゴリズムではStep 1:病態(肥満/非肥満),Step 2: 安全性,Step 3:各薬剤が有するadditional benefits,Step 4:患者背景,の各ステップを順に考慮することで適切な薬剤選択が可能である.

CAD発症ハイリスク患者で特に肥満を伴う場合にはSGLT2阻害薬やGLP-1受容体作動薬の使用が推奨できる.また,血糖コントロールに加え,高血圧,脂質異常,慢性腎臓病などの冠動脈危険因子の包括的コントロールが予後改善に重要である(血糖以外の危険因子の管理目標などに