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p.17 抽出テキスト

JALS 31),EPOCH-JAPAN 32)などがある(表5).

表5で示したように,各リスク予測モデルは,予測するアウトカム(死亡・発症),リスク評価期間,対象集団,ベースラインの年代が異なっており,モデルを適用する際に注意が必要である. a. 生涯リスクモデル

わが国でも複数のコホート研究から危険因子の保有状況で層別化した生涯リスクモデル33–38)が報告されており,それぞれの危険因子に応じた生涯リスクを提示することが可能となってきたが,臨床応用には至っていない. b. リスク年齢モデル

わが国でよく知られた予測モデルの多くはスコアテーブル式で提示されていることが多く,リスク年齢を算出するのに手間がかかる.またパネル式であっても,パネルに表示された年齢や危険因子レベルの幅が広いため,個人のリスク年齢をパネルだけからは算出しにくいという問題がある.忙しい臨床の場で簡単にリスク年齢を算出できるようなアプリやオンラインツールの開発が望まれる.

1.2.3 リスク予測モデルのわが国のガイドラインへの 応用

日本動脈硬化学会の動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版39)では,糖尿病・慢性腎臓病・末梢動脈疾患のいずれかがあるものは「高リスク」,それ以外は,2021年に新たに発表された久山町研究に基づくスコアを用いて推算した動脈硬化性疾患(CAD+アテローム血栓性脳梗塞)発症の10年絶対リスクを3カテゴリー(2%未満:低リスク,2~10%未満:中リスク,10%以上:高リスク)に分類した上で,それぞれのリスクに応じた脂質管理目標が示されている(詳しくは第2章3 脂質異常を参照).なお,同学会ではCADの発症予測をスマホ・アプリやオンラインで可能とする動脈硬化性疾患発症予測ツールを学会ホームページで提供している40).

日本高血圧学会の高血圧治療ガイドライン2019 41)は,予後影響因子の組み合わせによるリスク層別化(低リスク,中等リスク,高リスク)を行い,それに基づく血圧の管理指針が示されている.このリスク層別化は久山町モデルやJALSスコアとの整合性が確認されているが,対応する絶対リスクは明示されていない.

1.2.4 リスク予測モデルを臨床で扱う際の留意点と現状

リスク予測モデルは実在する集団データを用いて作成されるが,異なる特性(人種,地域,時代など)を持つ集団や個人に適用すると,絶対リスクの予測確率が不正確になることが知られている.実際,欧米で用いられるSCOREやフラミンガムスコアを日本人に当てはめると,循環器疾

患・CADの絶対リスクが過大評価されることが報告されている42, 43).

第1章1 わが国の循環器疾患の特徴で述べたように, CADに比べ脳卒中が多いことがわが国の循環器疾患の特徴である.脳卒中の病型はくも膜下出血・脳内出血・脳梗塞に大別され,脳梗塞はさらに心原性塞栓症・アテローム血栓性脳梗塞・ラクナ梗塞・その他の脳梗塞という臨床分類がなされている.このうち疫学的に高LDLコレステロール(LDL-C)血症が危険因子として確認できるのは主にアテローム血栓性脳梗塞である.その他のタイプの脳卒中が比較的多くを占めるわが国の現状においては,CADと脳卒中との統合アウトカムを予測するモデルでは高LDL-C血症が過小評価される傾向があり,CAD予防の観点から懸念が残る.

そのため日本動脈硬化学会の動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版44)では,CADのみをアウトカムとした吹田スコアを採用し,脂質異常症の細かいリスク評価ができるようにした.一方,近年,久山町研究から脳卒中のうちアテローム血栓性脳梗塞のみを取り出しCADと統合した複合アウトカム(ASCVD)を予測する新たなモデルが開発され,動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版39)に採用されている.

1.3 包括的リスク管理の実践

1.3.1 絶対リスクの見積もりと患者コミュニケーション

適切なリスク予測モデルを用いて将来の絶対リスクを見積もることは,個々の患者のCAD発症予防における患者評価の第一歩である.リスク予測モデルを患者とのコミュニケーションに活用し,絶対リスクに対する患者の理解,期待されるリスク低減,介入のメリット・デメリットを明確にすることが大切である.

1.3.2 治療目標の設定

具体的な治療目標をふまえ,その他の危険因子や合併症,患者の意向なども考慮し,患者と協議しながら具体的な治療目標や方法を設定する.個々の絶対リスク,年齢,併存疾患に応じた治療目標は,各章を参照していただきたい.

1.3.3 包括的リスク管理の実践

患者のリスクへの理解を深め,生活習慣改善を促し,薬物療法アドヒアランスを向上させるため,個々の患者に合わせた支援が必要である.しかし,支援する上でさまざま