p.74 抽出テキスト
7.1 心エコー 経胸壁心エコー図検査(TTE)は,画像検査の中でももっとも簡便で迅速に施行可能な検査の1 つである.心筋梗塞や非虚血性心筋症においては心機能を非侵襲的に評価することができ,左室収縮能の指標である左室駆出率(LVEF)が低いほど突然死リスクが高いことが報告されている 724 MADIT-I 試験は,心筋梗塞で無症候性の非持続性心室 頻拍(NSVT),左室機能障害(LVEF ≦35%)があり,心臓電気生理学的検査でプロカインアミドが無効な持続性VT,心室細動(VF)が誘発される患者の生存率が,植込み型除細動器(ICD)によって54% 改善されることを示した153.その後MADIT-II 試験により,心室性不整脈の有無や誘発性にかかわらず心筋梗塞後に高度の左室機能不全(LVEF ≦30%)がある患者において,ICD の予防的植込みは生存率を改善する(31% の死亡率減少)ことが示された 154 SCD-HeFT 試験は虚血,非虚血の双方による心不全患 者を登録した最大規模の一次予防ランダム化比較試験である159.おもな登録基準は13 ヵ月以上の心不全歴を有す る,2アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬,β遮断薬による心不全治療を受けている,3LVEF ≦35%,4ニューヨーク心臓協会(NYHA)心機能分類II ~III の4項目であり,冠動脈疾患が全体の52% を占めた.結果, ICD 群はプラセボ,アミオダロン群に比し死亡率が約20%低下した.これらの結果は,LVEF 低下を伴う器質的心疾患患者に対する積極的なICD 適用を推奨するものである.不整脈非薬物治療ガイドライン(2018 年改訂版)では,虚血性・非虚血性心筋症患者でLVEF ≦35%,NYHA 心機能分類II 以上の心不全症状を有する患者でNSVT があれば推奨クラスI,なければクラスIIa のICD 適応としている 2 また肥大型心筋症(HCM)については,TTE における左 室壁厚の測定が重要である.左室肥大の程度と突然死リスクは関係しており,左室壁厚30 mm 以上の著明な肥大は心臓突然死の主要危険因子とされている 82. 7.2 心臓MRI 心臓MRI における遅延造影(LGE)は線維化や浮腫を反映するとされ,心筋梗塞や心筋症などの器質的心疾患において認められる(図34). 7.2.1 急性および陳旧性心筋梗塞 心筋梗塞巣は急性および陳旧性のいずれもLGE が認められ,領域の広さは梗塞範囲と相関することが知られている725.また,LGE 領域として測定された梗塞サイズは従来の予後予測因子であった左室容積やLVEF よりも優れた予後予測指標であることが報告されている 726 7.2.2 肥大型心筋症 近年の研究により,HCM ではMRI でのLGE 領域が広 表40 画像検査の心臓突然死リスク評価に関する推奨とエ ビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル 心機能・構造評価にTTE を行う. I A HCM の心臓突然死リスク評価のため,心臓MRI 遅延造影を考慮する. IIa A DCM の心臓突然死リスク評価のため,心臓MRI 遅延造影を考慮してもよい. IIb C虚血性・非虚血性心不全における予後予測のため,MIBG 心筋シンチグラフィを行うことを考慮してもよい. IIb C 図34 心臓MRI で認められたLGE A(HCM):肥大した左室前壁心筋の中層にLGE を認める(矢印) B(心臓サルコイドーシス):左室前壁心外膜側にLGE を認める(矢印) A B