p.73 抽出テキスト
6.2.2 心電図モニタリングによる心房細動の検出 永続性または持続性のAF は一般的な心電図検査で容易に検出できるが,発作性AF の検出は難しいことが多い.現在の欧米のガイドラインでは,一過性(発作性)AF が疑われ,他の脳梗塞の原因が特定されていない潜因性脳梗塞を含む虚血性脳卒中の患者では,まずは心電図モニタリングを行うことを推奨している66, 717.ホルター心電図(24 ~ 48 時間)あるいはイベント心電図(2 ~4 週間)が使用される.メタ解析において,心電図モニタリングの継続時間が長くなると,新規AF の検出率が高くなることが報告され,モニタリングが72 時間未満の場合は5.1%,7 日間以上では15%,3 ヵ月では29.1% の患者で新規にAF が検出された722.最近では,スマートフォンやスマートウォッチを用いて心電図を記録できるシステムが開発されており(巻末図37 ~40),これらを使用すればさらにAF の検出率が向上する可能性がある.ただし,このような新しい心電計を用いてのAF の検出においては,現時点では多くの制限および課題があり,診療において活用できる状況ではない. 6.2.3 植込み型心電計によるAF の検出 近年,植込み型ループレコーダ(ILR)が,潜因性脳梗塞患者における一過性(発作性)AF の検出に使用されるようになっている.AF の検出率はILR のほうが非侵襲的心電図よりも有意に高いことが示されている.ILR では2 ~3年間心電図をモニタリングすることができる.特に,無症候性の患者においては有用なツールである. CRYSTAL AF 試験では,ILR の使用で6 ヵ月までに8.9% の症例で新規にAF が検出されたのに対して,従来の非侵襲的心電図モニタリングでは1.4% であった.12 ヵ月までではそれぞれ12.4% と2.0% であり,ILR の有用性が示された241.EMBRACE 試験でも同様の結果が報告され,AF が新たに検出されたのは30 日間のILR を受けた患者の16.1%,24 時間モニタリングを受けた患者では3.2%であった428.系統的レビューでは,心電図モニタリングの期間と手法を順次アップさせることにより,虚血性脳卒中患者のAF の新規検出率が高くなることが示されている.フェーズ1(救急室内)7.7%,フェーズ2(入院期間中) 5.1%,フェーズ3(最初の外来受診時)10.7%,フェーズ4 (イベント心電図やILR の使用による2 回目の外来受診時) 16.9%,その後のILR などによる心電図モニタリングの継続で23.7% のAF を検出できることを示している 429 このように,ILR を植込むことで,さらにAF の検出率 は向上する.AF による塞栓症発現のリスク層別化スコア(CHADS2 スコアなど)などを使用して,対象を絞って心電図モニタリングを行うと,さらにAF の検出率は高くなる723. 6.3 治療方針 AF が検出されなければ,潜因性脳梗塞の第一選択薬は抗血小板薬である.しかし,AF が検出されれば,脳梗塞(塞栓)予防のため,DOAC あるいはワルファリンなどを用いた抗凝固療法の適応を考慮する.必要に応じて,抗不整脈薬あるいはアブレーションによる洞調律維持,またはβ遮断薬などによる心拍数調節を行う. 7 心臓突然死の原因となる器質的心 疾患の画像診断(心筋梗塞,心筋 症など) 画像検査の心臓突然死リスク評価に関する推奨とエビデンスレベルを表40 に示す. 図33 脳梗塞が疑われた患者の診断手順とILR の適応(Nielsen JC, et al. 2020 133 より改変) © 2020 European Heart Rhythm Association, Asia Pacific Heart Rhythm Society, Heart Rhythm Society and Latin American Heart Rhythm Society. 脳梗塞が疑われた場合 AF・心内血栓がなかった場合 脳塞栓が疑われた場合 頸動脈に異常がなかった場合 異常がなかった場合:潜因性脳梗塞 心原性の評価ホルター心電図・イベント心電図・ 心エコー 頸動脈の評価頸部血管エコー(またはMRA,CTA,血管カテーテル検査) AF を疑ってのILR TEE・下肢静脈エコー・大動脈CT 医療面接・身体所見・一般検査 脳イメージング検査頭部拡散強調MRI(実施困難例では頭部CT)