p.72 抽出テキスト
脈拍変動と類似し,典型例では一過性の心拍数上昇に引き続く洞性徐脈から洞停止(心停止)へと進行する711.心停止時間は比較的長く10 秒以上の心停止もまれではない.そのため,一次性の洞不全症候群と誤診されペースメーカ治療が行われている場合があるので,注意が必要である.てんかん性失神に対するペースメーカ治療の有効性については,エビデンスが得られておらず,抗てんかん薬治療でペースメーカ作動を認めなくなったとの報告もある712, 713.また,ペースメーカ治療によりてんかん発作が増悪したとの報告もある 714 6. 潜因性脳梗塞の診断 6.1 概念 潜因性脳梗塞(cryptogenic stroke)は,原因不明の脳梗塞と定義される715.脳梗塞のおもな病型はアテローム血栓性脳梗塞,心原性脳塞栓,ラクナ梗塞の3 つである716.この3 つ以外の原因としては,卵円孔開存による奇異性塞栓症,心房中隔瘤,大動脈弓アテロームによる塞栓症などが含まれる.一方で,さまざまな検査を行っても原因不明のことがあり,これを一般に潜因性脳梗塞とよぶ711.したがって潜因性脳梗塞の診断は,原因を特定できる脳梗塞を除外することによってなされる.潜因性脳梗塞の多くは,検出することができない発作性心房細動(AF)が原因であると考えられている 717 塞栓源不明脳塞栓症(ESUS)という用語がある.これは 画像診断上では脳塞栓症と診断されるが,原因となる塞栓源が認められないことを指す718.つまり,ESUS は潜因性脳梗塞の中に含まれる病態である.ESUS という用語は, AF に起因する脳塞栓症の予防薬である直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)の登場により,多く使用されるようになった. 6.2 診断方法 6.2.1 画像診断 医療面接,身体所見,一般検査で脳梗塞が疑われた場合,最初に脳の画像検査を行うことが推奨されている.拡散強調MRI は,禁忌の場合を除いて,他のMRI シーケンスやCT よりも脳イメージングとして優先される717, 719.何らかの理由で拡散強調MRI を行うことができない場合に は,CT で代用する.ほとんどの潜因性脳梗塞は,心原性,おもにAF による心原性脳塞栓と考えられているため,次のステップとして,ホルター心電図やイベント心電図を用いてAF の検出を試みる.同時に,経胸壁心エコー図検査(TTE)で心臓内の血栓の有無についても評価する.左心耳内の血栓は通常TTE では検出困難であるが,比較的大きな左房内血栓や左室瘤内の血栓などはTTE でも検出可能である 720 異常が検出されなかった場合には,頸部血管エコーなど を用いて頸動脈狭窄の有無を評価する.それでも異常が検出されなかった場合に,経食道心エコー図検査(TEE)で左心耳内の血栓の有無を評価する721.TEE は,TTE と比較して左心耳内血栓の検出率が高い.原因としては少ないが,奇異性塞栓の可能性を考え,下肢静脈エコーで深部静脈血栓症,TEE で卵円孔開存や心房中隔欠損症などのシャント疾患の有無を評価し,さらには大動脈CT で上行大動脈の壁在血栓の有無を評価する.以上のプロセスを経て原因を特定できなかった脳梗塞を,潜因性脳梗塞として診断する133(表39,図33). 表39 潜因性脳梗塞の診断に関する推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル 脳塞栓が疑われた患者において,最初の脳イメージング検査として拡散強調MRIを行う. I A脳塞栓の原因として心原性が疑われる場合に,TTE を行う. I A脳塞栓の原因としてAF が疑われる場合に,ホルター心電図およびイベント心電図を用いて長時間心電図モニタリングを行う. I B潜因性脳梗塞の原因としてAF が疑われ,長時間心電図モニタリングで検出されない場合に,ILR 植込み術を行う. I B脳塞栓の原因としてAF が疑われる場合に,TEE を考慮する. IIa B脳塞栓の原因検索として頸部血管エコー,下肢静脈エコー・大動脈CT を考慮する. IIa Bスマートフォンやスマートウォッチなどを用いた発作性AF の検出を考慮してもよい. IIb C脳塞栓の原因検索として,長時間心電図モニタリングをはじめとする非侵襲的検査を行うことなしに,ILR 植込み術を行うことは推奨されない. III No benefit B