p.70 抽出テキスト
度房室ブロックが誘発された場合には,ペースメーカ治療の推奨クラスI 適応である698.しかし房室ブロックが心電図で確認されておらずHV 時間70 ms 未満の場合,ペースメーカ治療はクラスIIb 適応であるため,治療前にILRによる経過観察を行い,原因疾患を精査することが推奨される698, 702-704. 5.4 正常心電図で基礎心疾患も認めない 原因不明の失神 基礎心疾患もなく心機能も正常で,正常心電図を呈するものの,発作性房室ブロックにより前兆なく失神する患者群が存在することが報告されている705, 706.アデノシンに高い感受性を示すため,アデノシン三リン酸(ATP)感受性房室ブロックあるいは低アデノシン房室ブロックともよばれている706.EPS で房室伝導系に何ら異常は認めず,臨床的にはATP 20 mg 静注で10 秒以上の房室ブロックを呈することで診断される.アデノシン血中濃度は低く,心房期外収縮や心室期外収縮は房室ブロックの誘因とはならず,房室ブロック中のPP 間隔は房室伝導時とほぼ同じである.いわゆる刺激伝導系の器質的障害による発作性房室ブロックでは,後に持続性房室ブロックへ移行していくことが一般的であるが,ATP 感受性発作性房室ブロックでは持続性房室ブロックへの進展はこれまで報告されていない.テオフィリン内服の有効性が示唆されているが,現時点でのエビデンスはまだ少ない707.現時点まで,ペースメーカの適応に関する推奨は定まっていない. 5.5 反射性失神 「失神の診断・治療ガイドライン(2012 年改訂版)」5 では,反射性失神に対する用語が統一され,神経調節性失神や神経調節性失神症候群などの用語は使用されていない.現在,反射性失神には,血管迷走神経性失神,頸動脈洞症候群,状況失神,てんかん性失神が含まれている.反射性失神の多くは血管迷走神経性失神が占め,頸動脈洞症候群と状況失神の割合は小さい.静脈還流量の低下による交感神経の緊張ならびに心室の過収縮により機械受容体の刺激と脳幹の血管運動中枢を介した反射が誘発される.この反射による副交感神経の過緊張が,一過性の心拍数減少と血圧低下をもたらし,その結果,全般性脳虚血をきたすことにより失神に至る.洞性徐脈や洞停止のみならず,房室ブロックが発症することもある. 血管迷走神経性失神は,1心抑制型,2血管抑制型, 3両者を伴う混合型,に分類されるが,心抑制型では心停止時間が長く十数秒に及ぶことも珍しくなく,けいれん様の反応を伴い,てんかんと誤診断されることもあるため,注意が必要である708.反射性失神と起立性低血圧の症状によるおもな診断を示した(表36A). 診断にはチルト試験が有用である.チルト試験は再現性と感度は低いものの特異度は高い709.したがって,チルト 表36 失神の診断に関する推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル A.反射性失神と起立性低血圧基礎疾患のない健常人に発生する失神で,典型的な前駆症状(前兆)を伴い,立位負荷や痛み・恐怖によって発生する場合には,血管迷走神経性失神と診断する. I C失神が特異的な要因(咳嗽,排尿,排便,嚥下,食後,運動後)時,あるいはその直後に発生する場合には,状況失神と診断する. I C立位時に失神し,起立試験で有意な血圧低下(収縮期血圧20 mmHg 以上または拡張期血圧10 mmHg 以上の低下)を認める場合には,起立性低血圧による失神と診断する. I C上記基準を満たす典型的な症状ではないが,心原性失神を疑わせる所見がない場合には,血管迷走神経性失神あるいは起立性低血圧を考慮する. IIa C B.心原性失神心電図で下記の所見を認める場合には,不整脈性失神を念頭において鑑別を行う.・ 肉体的訓練を行っていないにもかかわらず,覚醒時に40 拍/ 分未満の洞性徐脈の持続,あるいは3 秒以上の洞停止を認める・ モビッツII 型2 度あるいは3 度房室ブロック・ 右脚と左脚の交代性脚ブロック・ VT あるいは心拍数の非常に早い発作性上室頻拍・ 非持続性多形性VT およびQT 延長・短縮・ 心停止を伴うペースメーカやICD の機 能異常I C急性心筋虚血に伴う失神では,心筋虚血をその原因とする心原性失神と診断する. I C心房粘液腫,左房内ボール型血栓,重症大動脈弁狭窄症,肺動脈塞栓,あるいは急性大動脈解離などの患者に失神症状がある場合には,構造的心肺異常による失神を疑う. I C