p.67 抽出テキスト
4.6.9 類似疾患との鑑別 ARVC/ACM では右室起源の心室性不整脈を認めるため,特発性流出路起源VT を鑑別する必要がある682.また形態学的にARVC/ACM と類似するものとしてアスリート心臓,心内シャント疾患,肺高血圧症があり鑑別を要する682, 693.左室優位に病変がみられる症例では,拡張型心筋症(DCM),神経筋疾患,心臓サルコイドーシス,心筋炎などが鑑別診断にあげられる.2010-TFC では診断感度が高く,心臓サルコイドーシスなど疾患によっては診断基準を満たすこともあり注意を要する. 4.7 その他の遺伝性不整脈疾患 [進行性心臓伝導障害(PCCD)など] PCCD や家族性AF・心房静止などが該当する.ここではPCCD を中心に述べる. PCCD は進行性,家族性の房室ブロックや脚ブロックを特徴とし,失神やペースメーカ植込みの原因となる遺伝性不整脈である.PCCD はさまざまな病態からなる症候群であり,不整脈,心筋症,骨格筋ミオパチーは臨床的にも遺伝学的にもオーバーラップすると考えられる.表現型がPCCD の場合は基礎心疾患のない50 歳以下のPCCD が主であるが43,年齢の基準をどうすべきか,基礎心疾患の存在を否定すべきかどうか,骨格筋ミオパチーを除外すべきかどうかに関しては統一された見解がない.診断に関する推奨とエビデンスレベルを表35 に示す. 4.7.1 臨床所見・検査 PCCD は加齢に伴うSSS や脚ブロックなどの伝導障害との鑑別が難しいことがあるが,心電図所見,家族歴,発症年齢によってある程度は鑑別可能である. a. 症状 PCCD の症状は伝導障害の程度によりさまざまで,無症状のものから,ふらつき,めまい,失神,痙攣や,心停止,突然死まで認められる.徐脈に伴う脳虚血症状(アダムス・ストークス発作)がみられることもある.PCCD は単一の疾患概念ではなく,オーバーラップする心筋症や骨格筋ミオパチーによって症状は大きく異なる.なかでもLMNA 変異によるPCCD 患者は,一般に30 歳代までは伝導障害や心房不整脈が主で,40 歳以降に心機能の低下と重症心室不整脈を合併し,突然死やDCM に進行することが多い321, 322, 694. b. 家族歴 PCCD の診断には家族歴はきわめて重要である.50 歳以下のペースメーカ植込みや突然死の家族歴がある場合にはSCN5A やLMNA などの遺伝子異常を有する可能性が高い. c. 安静時心電図 進行性の伝導障害を示す心電図所見として,二束ブロックまたはモビッツII 型2 度以上の房室ブロックなどがある.しかしながら加齢に伴う伝導障害でも類似の心電図所見はしばしば認められるため,RBBB や単独のヘミブロック,1度およびウェンケバッハ型2 度房室ブロックのみの心電図異常所見や,診断時年齢が70 歳以上の孤発例はPCCDから除外する. 心筋Na チャネル遺伝子(SCN5A)変異陽性例では,ブルガダ症候群やLQTS を合併することもある.LMNA 変異でみられる伝導障害はP 波異常,PQ 延長,心房静止, SSS,脚ブロック,房室ブロックなど多岐にわたり,また心室不整脈による突然死も多い. d. ホルター心電図 ホルター心電図は,徐脈性不整脈あるいは頻脈性不整脈の検出に有効である.二束ブロックを伴う1 度房室ブロック,症候性の高度房室ブロックは突然死の危険因子と考えられる 43 e. 心臓電気生理学的検査 EPS による洞結節回復時間,AH 間隔やHV 間隔の計測はペースメーカ植込みの判断には有用だが2,プログラム刺激によるVT・VF の誘発が突然死のリスクの評価に有用かどうかのエビデンスはない. f. 画像検査 PCCD は一般的には心臓伝導障害が主であり,心機能は保たれていることが多い.ただし,SCN5A やLMNA 遺伝子異常など一部のPCCD はDCM や左室緻密化障害などの心筋症を合併することから,心エコー,心臓CT やMRI 表35 PCCD の診断に関する推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル 基礎心疾患のない50 歳以下の心臓伝導障害(安静時心電図で二束ブロックやモビッツII 型以上の房室ブロック)で,家族歴として特に50 歳以下のペースメーカ植込みあるいは突然死がある場合には,積極的にPCCD の診断を行う. I C PCCD 患者で,合併するDCM や左室緻密化障害などの診断や,心サルコイドーシスやアミロイドーシスなどの二次性心筋症を鑑別する目的で,経胸壁心エコー図検査(TTE),心臓CT,心臓MRI, PET などの画像診断を行う. I C