p.66 抽出テキスト
ARVC/ACM における不整脈の出現は大きく予後に影響を及ぼすため,確定診断に至らない場合であっても定期的なホルター心電図での不整脈評価は重要である. 4.6.6 家族歴 2010-TFC でARVC/ACM と診断された第1 度近親者(遺伝子を50% 共有している親子・兄弟姉妹)がいる場合,剖検や外科手術の際に病理学的にARVC/ACM と診断された第1 度近親者がいる場合に大基準の基準となる.また評価中の患者においてARVC/ACM に関連する遺伝子変異の所見が認められた場合も大基準の基準となる.ARVC/ ACM 全体では,デスモソーム関連遺伝子変異は全体の約50% であり,その中でも一番多いのがPKP2 変異である682.わが国からの報告では,DSG2 変異が48% と最多であるが684.この遺伝子変異の相違による不整脈の発生や予後について差があるかどうかは明らかとなっていない. 4.6.7運動とARVC/ACM ARVC/ACM はアスリートに多いことが知られており,運動強度に応じてARVC/ACM が進行することが後ろ向き研究で示されている685.青年期にARVC/ACM と診断された患者は,成人期に診断された患者と比べて,持久力が必要なスポーツ競技(マラソンやクロスカントリーなど)の経験者が多かった686,このため,運動歴の詳細な聴取は非常に重要である.ARVC/ACM におけるカテコラミン増加は心室不整脈の誘発に重大な影響を及ぼし72, 73,運動は心臓突然死リスクを増加させることから685, 688-689,競技スポーツや強度の高いレクリエーション活動は高度に制限する必要がある690.運動負荷試験および運動処方に関する 報告はほとんどみられない.ARVC/ACM 37 人を対象に薬剤負荷と運動負荷試験を比較すると,多形性心室不整脈の発生率はイソプロテレノール負荷で有意に高かったとの報告がある(89.2% vs 43.2%) 691.ARVC/ACM 29 人を対象とした心肺運動負荷試験において,運動中の換気効率の指標(V ・E/VCO2 slope)が34 を超える患者では,中等度/重度の右室拡張と心不全が多い傾向にあった 692 4.6.8 ALVC の診断 肥大型心筋症(HCM),LQTS,ブルガダ症候群,CPVTなどの遺伝性疾患の一部は,原因遺伝子の変異による関連蛋白質の異常が病因と考えられている.ARVC に関しては,デスモソームもしくは介在板(intercalated disk)の機能障害を最終共通路とする機序(final common pathway)が考えられている.一方で,ARVC/ACM の診断基準を満たさず,左室起源の心室性不整脈や左室の構造変化が認められARVC/ACM に関連する遺伝子変異(Desmoplakin, Phospholanban,Lamin A/C,Filamin C など)が確認された場合には,ALVC もしくはleft-dominant variant of ARVC と診断される.心電図所見としては,四肢誘導の低電位(0.5 mV 未満)や下側壁誘導のT 波の陰転化が特徴的であり,VT はRBBB 型を呈する(図30).実際にはARVC と診断された患者に左室の心筋障害や,左室起源の心室性不整脈が認められる両心室型もあり,多様な臨床像を呈する.遺伝学的検査と合わせて総合的に診断する必要がある. 図30 ARVC/ACM の多様な表現型 ・ε波・陰性T 波V1 ~V4(~V6)・VT(LBBB 型)・遅延電位・terminal activation duration ↑・頻発する期外収縮・右室でのMRI 遅延造影所見・右室拡大・右室収縮能障害・線維化置換像(心内膜生検) デスモソーム介在板イオンチャネル細胞骨格筋小胞体サルコメアイオンチャネルミトコンドリア ARVC ARVC +ALVC ALVC・四肢誘導低電位・陰性T 波V4 ~V6)・VT(RBBB 型)・頻発するPVC・左室でのMRI 遅延造影所見・左室収縮能障害 ACM 右室 左室