p.48 抽出テキスト
徴症と完全大血管転位の術後症例を対象とした報告が多い.欧米ではtransannular patch を用いた症例で,VT と突然死のリスクが高いと報告されているが521,わが国の研究で同様の結果は得られていない522.手術切開傷,医療材料(パッチ,弁)を不整脈基質とするマクロリエントリーVT が特徴的であるが203, 523,マイクロリエントリー・非リエントリー性のVT も発症する. 危険因子として,ファロー四徴症術後症例の検討では, 1中等度以上の肺動脈弁逆流,2持続性VT の既往,3 QRS 幅延長(≧180 ms),4LVEF 低下(<40%)があげられ524,術後残存する血行動態異常と心室機能低下は特に重要視されている525, 526.EPS については,ESC ガイドラインでは,左室機能不全,NSVT,QRS 幅延長(≧180 ms)のうち1 つ以上の危険因子がある症例の評価には考慮できる(推奨クラスIIb)とする一方527,危険因子や症状のない症例へのEPS は推奨していない(推奨クラスIII) 188, 527.同様の推奨はAHA ガイドライン520 にもあり,危険因子と不整脈があるファロー四徴症術後症例では,持続性VT・VF の発症を評価するためのEPS が有用(推奨クラスIIa)と記載されている. 3.3 トルサードドポアント(TdP) TdP は,QRS の極性と振幅が心拍ごとに刻々と変化し,等電位線を軸としてねじれる波形(twisting of the points)が特徴的な多形性VT である71(図18).TdP が認められる代表的な疾患は先天性QT 延長症候群(LQTS)や短連結性特発性VF(SCIVF)であるが,LQTS については第2章4.1 を参照されたい.また,高度房室ブロックなどの徐脈や低K 血症などの電解質異常からshort-long-short sequence のQRS 連結期の後にTdP が生じることがある(二次性LQTS).しかし,非持続性のエピソードや,記録可 能なリード数が限られている場合は,このような発症形式や軸のねじれが常に観察されるとは限らない. 3.3.1 短連結性特発性心室細動(SCIVF) 短い連結期のPVC はTdP やVF を引き起こすことが知られてきた528.SCIVF はidiopathic paroxysmal VF と認識されており,300 ms 以下の短い連結期からTdP を呈する529.心電図にQT 延長は認められず,TdP でありながら多形性VT の形状はとらない.Leenhardt ら529 が検討したSCIVF の14 人では30% に突然死の家族歴があり,連結期は平均245 ms であった.SCIVF には遺伝子変異がいくつか報告されている530-533.メカニズムは依然として不明で,誘因も明確ではない(感情的ストレス,カテコラミン誘発,徐脈など).それゆえ,診断はVF 発生時のテレメトリーあるいはICD 記録などを介してのみ可能となる. CASPER 試験534 では心停止の原因としてSCIVF の患者数を過小評価している可能性に言及している.ホルター心電図,イベント心電図などを用いてモニタリングを繰り返すことにより,連結期の短いPVC を同定することが,診断の手がかりとなる. 3.4 心室細動(VF) VF の特徴は,QRS 波形に著しい変動を伴う不規則な電気活動で,QRS の伝導速度はきわめて速く心室速度は300拍/ 分(興奮周期<200 ms)を超える71(図19).VF は心停止の要因となる致死性不整脈の中でもっとも予後が悪い.発症には多彩な病態が関与するが,成人における一般的な原因は心原性と非心原性に大別される(表18). 器質的心疾患ではVT で発症しVF へ移行するパターンを経験することが多いが,ブルガダ症候群や心臓電気生理学的検査(EPS)においてはしばしばVF からの発症様式を認める.LQTS,QT 短縮症候群(SQTS),カテコラミン誘発多形性心室頻拍(CPVT)においては,多形性VT やVFを短時間で繰り返し発症し,electrical storm の状態となることがある. ここでは,狭義の特発性VF について記載することとし, 図19 VF の心電図の実例 図18 TdP の心電図の実例