p.47 抽出テキスト
表面電位図,心磁図検査の有用性を報告した研究もみられる504-506.しかしこれらの非侵襲的検査だけで,ICD の適応を決めることは推奨されていない. わが国の不整脈非薬物治療ガイドライン(2018 年改訂版) 2 は,基礎心疾患がある症例にNSVT があり,SAECGで心室レイトポテンシャル(LP)が陽性の場合,EPS 施行を推奨している.すなわち,1冠動脈疾患(心筋梗塞発症から40 日以上,冠血行再建術後90 日以上)があり,2十分な薬物治療が行われ,3LVEF ≦40% の低下があり, 4NSVT がある症例に,5EPS でVT/VF が誘発された場合,MUSTT 研究256 結果に準じてICD 治療を考慮する. 3.2.3 拡張型心筋症 拡張型心筋症(DCM)患者のおもな死因は心不全と心臓突然死であり,心臓突然死の主因はVT/VF である.心筋線維化などによる伝導障害が不整脈基質となる. 心臓突然死の危険因子として,VT/VF の既往,LVEF低下(30 ~35% 以下)が知られている159, 507.心機能低下例(LVEF 30% 未満)にみられるNSVT は心臓突然死の危険因子となり得る508.心電図に記録されるfragmented QRS 509,TWA 陽性が高リスク症例の選別に有用であると する報告もみられる.EPS を用いた評価については否定的な見解が多い82.心臓MRI 検査による不整脈基質の評価を支持する研究が散見される 510 3.2.4 肥大型心筋症 わが国の疫学調査では,肥大型心筋症(HCM)の年間死亡率は2.8% と報告されている511.死因の過半数は心臓突然死で,本症は若年者の突然死の原因として重要である.持続性VT と心臓突然死の関係が示される一方で,NSVTに関する知見は十分でない. NSVT は心臓突然死の危険因子にあげられ,陰性適中率は高いが(95% 以上),陽性適中率は低い(20 ~ 25%) 512-514.運動負荷試験での異常血圧反応(25 mmHg未満の上昇,持続的血圧低下,回復早期の一時的な血圧低下)も心臓突然死の危険因子にあげられる80, 81.心臓MRI検査における遅延造影の有無と広がりは,突然死(3.41 倍),心臓死(2.93 倍),総死亡(1.8 倍)に関連するとしたメタ解析の結果が報告されている515.EPS での持続性VT の誘発率は高くなく,しばしば多形性VT,VF が誘発されるが,これらは予後不良を示唆する所見とはいえない516, 517.このためEPS を用いたリスク評価は推奨されていない. SAECG の心室LP が不整脈イベントに関連するとの報告があるが518, 519,一定した見解に至ってはいない. 2017 年の米国心臓協会(AHA)/ 米国心臓病学会(ACC)/ 米国不整脈学会(HRS)ガイドライン520 は,確立された危険因子として,1持続性VT・VF による心停止からの蘇生,2失神または血行動態破綻を伴う持続性VTの自然発症歴,3HCM に関連した突然死の家族歴,4 30 mm 以上の左室肥大,56 ヵ月以内に生じた原因不明の失神,6NSVT,7運動時の異常血圧反応,をあげている.2015 年の欧州心臓病学会(ESC)ガイドライン188 は5 年間の突然死発生率を,危険因子を用いた計算式(HCM Risk-SCD Calculator)で推定することを提唱している. わが国の心筋症診療ガイドライン(2018 年改訂版) 82 は, 最近の心原性あるいは原因不明の失神,著明な左室壁厚(30 mm 以上),HCM Risk-SCD Calculator(イベント予測6% 以上)を特に重要な危険因子に位置付け,その他の危険因子(突然死の家族歴,NSVT,運動時の血圧反応異常)と修飾因子(左室流出路閉塞,心臓MRI 検査での広範囲なガドリニウム遅延造影所見,拡張相HCM,心室瘤)を複合的に用いたリスク階層化を推奨している. 3.2.5 先天性心疾患術後 先天性心疾患に伴う持続性VT については,ファロー四 表17 PVC・VT の診断とリスク評価に関する推奨とエビ デンスレベル63, 64, 154, 159 推奨クラスエビデンス レベル 虚血性心筋症または非虚血性心筋症の症例にLVEF 測定検査を行い,低心機能症例(30 ~35% 以下)を検出する. I A虚血性心筋症または非虚血性心筋症の低心機能症例(30 ~35% 以下)に,NSVTの評価検査を行う. I A基礎心疾患が疑われるVT 症例では,基礎心疾患の検出と特徴の分析に心臓のMRI またはCT 検査を考慮する. IIa C虚血性心筋症,非虚血性心筋症,または先天性心疾患術後成人例で,失神またはVT を疑う症状があるが,一次予防のICD治療対象にならない場合,持続性VT 発症のリスク評価にEPS を考慮する. IIa Bファロー四徴症術後成人例で,1 つ以上の危険因子(左室機能低下,NSVT,QRS幅>180 ms)がある場合,心臓突然死のリスク評価にEPS を考慮してもよい. IIb B HCM 症例の心臓突然死のリスク評価にEPS は推奨されない. III No benefit B無症候性または危険因子のない先天性心疾患術後症例では,心臓突然死のリスク評価にEPS は推奨されない. III No benefit B