p.42 抽出テキスト
2.3 発作性上室頻拍(PSVT) 2.3.1 はじめに 心電図上RR 間隔が600 ms 以内(心拍数100 拍/ 分以上)のnarrow QRS(QRS <120 ms)が連続していれば, PSVT が疑われる.PSVT の診断に12 誘導心電図は不可欠である.頻拍中の心電図のみならず,洞調律時の心電図も重要である.上室頻拍の3 大原因は1房室結節リエントリー性頻拍(AVNRT),2副伝導路を介した房室回帰性頻拍(AVRT),3AT である. PSVT の詳細な診断には,EPS が必要である.PSVT に対するEPS はアブレーションを前提として行われる.その目的は,1頻拍の誘発と診断,2アブレーションの標的部位となる頻拍の発生起源,回路の同定,および3アブレーションの効果判定である.それぞれの頻拍に特徴的な所見はあるが,完全な感度・特異度を有する所見はないため,観察された複数の所見を総合的に勘案して,電気生理学的な診断をつける.典型的な所見を示す例では診断に困ることはないが,非典型例では種々の電気生理学的検査を駆使 して診断を下す必要がある.PSVT の診断に関する推奨とエビデンスレベルを表16 に示す. 2.3.2 房室結節リエントリー性頻拍(AVNRT) 房室結節領域には房室接合部(compact AV node)へ前方(上方)から進入する速伝導路(fast pathway)と,後方(下方)から侵入する遅伝導路(slow pathway)がある. AVNRT は同領域内でリエントリーを起こす頻拍の総称である.通常型と非通常型に大別される 440 a. 通常型(slow-fast type)AVNRT 房室結節領域内に伝導速度が速く不応期の長い速伝導路(fast pathway)と,伝導速度が遅く不応期の短い遅伝導路(slow pathway)の2 本の伝導を有する.遅伝導路を順伝導,速伝導路を逆伝導としたリエントリー回路を有する頻拍を通常型AVNRT と診断する441-443(図13).slowfast type はもっとも頻度の高いAVNRT である444.図14に典型例の12 誘導心電図を示す.頻拍中QRS 波の終末に逆行性の心房興奮を示すP′波が重なっている. 高位右房からの期外刺激で順伝導がfast pathway からslow pathway に乗り変えた際に,不応期を脱したfast pathway を逆伝導し頻拍が誘発される.逆伝導のfast pathway の最早期興奮部位は房室接合部前方(上方)である.頻拍中にヒス束の不応期のタイミングに入れた右室からの期外刺激は心房を早期捕捉しない.逆伝導は減衰伝導特性を示し,傍ヒス束ペーシングでは,QRS 幅の延長に伴いSpike-A 時間の延長を認める 445 Maruyama らは,頻拍中に頻拍周期より10 ~40 ms 短 図13 Nakagawa らが想定した通常型AVNRT の頻拍回路(Wilber DJ, et al. 2008 442 より改変) ©2008 Blackwell Publishing. Reproduced with permission of John Wiley & Sons Inc. 速伝導路速伝導路速伝導路ヒス束 遅伝導路遅伝導路 左房興奮右房興奮 冠静脈洞ユースタチアンリッジ 下大静脈 遅伝導路焼灼領域 右前斜位像 冠静脈洞周囲心筋 左前斜位像 ユースタチアンリッジヒス束 トダロー腱索 表16 PSVT の診断に関する推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル PSVT の診断のために12 誘導心電図を記録する. I C AVNRT,AVRT,AT の鑑別診断のために,EPS を行う. I C