p.37 抽出テキスト
レコーダ,ILR が有用である.房室ブロックが記録された場合の診断フローチャートを図9 に示す372.房室ブロックが可逆的原因により生じていないか(たとえば薬剤性),生理的要因で生じていないか,原因となる背景疾患がないか(たとえば睡眠呼吸障害)を検索する.夜間就寝中の副交感神経優位に伴う1 度房室ブロックやウェンケバッハ型2 度房室ブロックは生理的なものであり,無害である. a. 1 度房室ブロック,ウェンケバッハ型2 度房室ブロッ ク1度房室ブロックおよびウェンケバッハ型2度房室ブロックが記録された場合,まず器質的心疾患の存在を疑う.器質的心疾患が疑われる場合にはTTE を考慮する.浸潤性心筋症(心アミロイドーシス,心サルコイドーシス,ヘモクロマトーシス,ファブリー病など),心内膜炎,成人先天性心疾患(ACHD)が疑われる場合は,高度画像診断[心臓MRI,99mTc ピロリン酸シンチグラフィやPET などの心臓核医学検査,心臓CT,経食道心エコー図(TEE)検査]などを行い,判明した疾患の治療を行う.器質的心疾患の疑いがない場合は経過観察とする. 1 度房室ブロックにおいて,PR 間隔>0.3 秒になると,心房心室収縮の同期性が失われ心拍出量低下や肺動脈楔入圧上昇をきたす場合があるので,病的と判断する 373 b. モビッツII 型2 度房室ブロック,2:1 房室ブロッ ク,発作性房室ブロック,高度房室ブロック,完全房室ブロックまずTTE を行う.これによって浸潤性心筋症,心内膜炎,ACHD などが疑われる場合は,高度画像診断を行う. TTE および高度画像診断の結果にかかわらず,房室ブロックに対する治療アルゴリズム(恒久式ペースメーカの適応判断)に進む. 発作性房室ブロックは失神および心臓突然死をきたしうる房室ブロックであるが,最近の研究から,1内因性(器質的):刺激伝導障害によるもの,2外因性(機能的):迷走神経緊張によるもの,3血中アデノシン濃度が低いために生じるもの(low-adenosine syncope)に細分類され,重症度も異なることが報告されている 371 c. 房室ブロック部位の同定 ブロック部位が遠位になるほど,補充調律拍数が低下するため重症度が高くなる.ブロック部位が房室結節内のブロックか,房室結節より遠位(ヒス束内,ヒス束よりも遠位)のブロックなのかを判断する.房室結節内のブロックは進行が遅く,アトロピンやイソプロテレノールへの反応が良好である.これに対し,ヒス束内およびヒス束より遠位のブロックは急速に進行することがあり,アトロピンへの反応も不良である.臨床的に房室結節より遠位のブロックであることが明ら かな場合は,治療アルゴリズムに進む.2:1 房室ブロックはウェンケバッハ型なのかモビッツII 型なのか判別できないことが多い.2:1 房室ブロックで症候性の場合は治療アルゴリズムに進む.無症候性の場合は,運動負荷心電図検査を行う.これによって出現・増悪する場合は房室結節より遠位のブロックと判断し,治療アルゴリズムに進む.運動負荷心電図検査でブロック部位が同定できない場合, EPS を考慮する.房室結節より遠位のブロックの場合,治療アルゴリズムに進む.無症候性で,かつ房室結節内ブロックであれば,3 秒以上の心停止や40 拍/分未満の高度の徐脈を伴わないかぎり,経過観察を行う. 1度房室ブロックおよびウェンケバッハ型2度房室ブロックの多くは房室結節内ブロックと考えてよい.症候性の場合は治療アルゴリズムに進む.無症候性であれば経過観察を行う. 2 頻脈性上室不整脈の診断 2.1 心房細動(AF) AF は臨床的にもっともよく遭遇する不整脈であり,日本人の有病率は0.6 ~1.1% 前後と推定されている374, 375.特に65 歳以上の高齢者に多く,心不全,脳梗塞,認知症,死亡といった合併症の危険因子となる.AF の発症に関わる因子として,男性,高血圧,心不全,冠動脈疾患,心臓弁膜症,糖尿病,肥満,睡眠呼吸障害,高尿酸血症,喫煙,飲酒,遺伝などが知られている376-380. AF の電気生理学的な機序としては,肺静脈が多くを占めるトリガーとなる異常自動能381,そして心房筋の電気的あるいは構造的なリモデリングがAF の持続に重要な役割を果たすと考えられている382, 383. AF 治療方針に関わるのは患者の血行動態であり,心不全やショックを合併していれば,急性期治療が必要となる.実際には血行動態の安定した患者が多く,脳梗塞のリスクを評価し,適応があれば抗凝固薬,心拍数に応じてレートコントロール薬を投与する.またAF の症状やタイプ,持続期間などに応じて,リズムコントロール薬の投与やアブレーションなどの非薬物的治療を考慮する384.AF の診断に関する推奨とエビデンスレベルを表15 に示す.