p.32 抽出テキスト
第2章 不整脈および関連する病態の診断法 1 徐脈性不整脈 1.1 洞不全症候群(SSS) 1.1.1 はじめに 洞機能不全は,自律神経や薬剤の関与による一過性(可逆的・生理的)の原因,あるいは変性や器質的心疾患に伴って起こる慢性の原因があり,洞結節自動能の低下や洞房間伝導障害が生じるために引き起こされる病態である.このうち,慢性的な原因によって高度な障害が生じ,アダムス・ストークス症候群,心不全,易疲労感が出現するものをSSS とよぶ.一般的には生命予後は良好とされ,ペースメーカの治療適応を考えるうえで,徐脈に伴う症状の有無はきわめて重要である. 1.1.2 分類 a.原因と経過からの分類• 可逆的・生理的(一過性) • 器質的(慢性) b.心電図からの分類(Rubenstein の分類361) • I 型:洞徐脈(<50 拍/ 分)(図6A) • II 型:洞停止(図6B)または洞房ブロック(図6C) • III 型:徐脈頻脈症候群(図6D) 1.1.3 原因 原因としては特発性のものが多いが,次のようなものに由来して生じる二次的な場合がある.一過性(可逆的・生理的)のものとして副交感神経緊張状態,薬剤,電解質異常,内分泌異常,脳圧亢進,低体温など,器質的(慢性)のものとして,虚血性心疾患,高血圧,心筋症,アミロイドーシス,心膜炎,心筋炎,膠原病などがある.一過性の因子が慢性の洞機能不全を悪化させている場合があり,両者の鑑別が難しいことがある. 特発性は加齢が重要な因子で,一般に発症年齢は70 ~ 80 歳代がもっとも多く362, 363,男女差はない.洞結節細胞もしくは周囲心房筋の加齢に伴う変性,線維化などが関連していると考えられている.小児に生じる場合は先天性疾患に伴う場合が多く,一部で遺伝子異常に基づく家族性発症が知られているが364, 365,頻度は少ない.自律神経,特に副交感神経の関与が大きく,徐脈は夜間に著明である.睡眠時無呼吸との関連,さらにブルガダ症候群との合併も報告され,背景疾患にも注意が必要である366-368. 1.1.4 診断 SSS の診断に関する推奨とエビデンスレベルを表13 に示す. a.自覚症状 心拍出量低下による全身倦怠感・息切れ,および一過性脳虚血によるめまい・失神・眼前暗黒感が一般的であるが,軽微な症状から失神までさまざまな症状が出現する.自覚症状や状況からタイプを推定できる場合があるため,詳細な病歴聴取(失神・前失神・めまいの有無,全身倦怠感・息切れの有無,症状の頻度・持続時間,体位・運動との関係,発生状況・時刻,食事・排尿・精神的ストレスの関連, B A C D 図6 心電図によるSSS の分類A:I 型(洞徐脈),B:II 型(洞停止),C:II 型(洞房ブロック),D: III 型(徐脈頻脈症候群)