p.30 抽出テキスト
左脚ブロックでは,器質的心疾患がなく,2 度モビッツII 型以上の房室ブロックへの進行を認めなければ運動制限は必要ない 330. 9.3 心房期外収縮および心室期外収縮 心房期外収縮(PAC)は加齢とともに増加するが,運動との関連は一定ではない331.PAC が頻発しても血行動態の破綻はない.ただし,将来の心房細動(AF)発症との関連に留意する. 心室期外収縮(PVC)が単形性で,安静時または運動中の単発ないし2 連発の場合には,運動制限は必要ない.運動により減少ないし消失するPVC は,運動制限の必要はない.無症候性中年男性(42 ~53 歳)6,101 人を対象に運動負荷試験を行い,安静時,運動中,運動後の回復期のPVC を高頻度(2 連発または30 秒間に10% 以上の出現),低頻度,無群に分け,23 年間追跡した前向き対照比較試験では,運動中および回復期のPVC 高頻度群で心血管疾患死亡が有意に多かった76.運動中や運動後の回復期のPVC が増加する例,多源性や3 連発以上を認める例では精査が必要である78, 332.特に,運動により増加する右脚ブロック型でQRS 幅が130 ms を超えるPVC は精査が必要である 332. 9.4 心房細動,心房粗動 心房細動(AF)は高強度の運動で誘発される,もっとも多い不整脈である331.身体活動・運動とAF 発症リスクは,一般住民,アスリート,また年齢によっても異なる 331 一般健常人では,日常生活の活動度が高いとAF の発症 が抑制される可能性がある.65 歳以上の米国人男女5,446人を対象にしたCardiovascular Health Study では,身体活動レベル(kcal/週)が高いほど10 年間のAF 発症リスクが有意に低かった333.低強度と高強度に比し,中強度の運動でAF 発症リスクは有意に低かった 333 持久的体力(心肺運動能力)とAF/心房粗動(AFL)の発 症との関係を検討した6 研究(205,094 人)のメタ解析によると,体力の向上はAF/AFL 発症リスクを9% 低下させた 334 もっとも運動耐容能が低い群に比べ,中等度群で28%,最 高度群で49%,AF/AFL の発症リスクが低値であった 334. 一方,平均年齢18.2 歳の男性1,126,899 人を登録し,26.3年間追跡したスウェーデンの前向きコホート研究では,体力の増加とともに心血管疾患の発症リスクは低下したが, AF と徐脈性不整脈の発症は体力の高い例で増加し,AF発症は体力とはU 字型の関係を示した335. 2011 年9 月までに報告されたAF(発作性,持続性,永 続性のいずれか)患者を対象に運動や身体活動量の影響を評価したランダム化比較試験やコホート研究のシステマティックレビューでは,中強度の運動で体力と生活の質(QOL)が向上し,一方,長期間の高強度の運動はAF の発症リスクを増加させた336.高強度の運動トレーニングの増加や長期間の継続はAF,AFL ともに増加させ,また両者は合併する337. 運動強度を設定するために運動負荷試験が推奨される.米国心臓病学会財団(ACCF)/米国心臓協会(AHA)のガイドラインでは,エビデンスからではなく経験則より,心拍数は安静時で60 ~80 拍/分,中強度の運動下では90 ~115 拍/分が推奨されている338.安静時心拍数110拍/ 分未満であれば,運動負荷時の心拍数上昇の程度,自覚症状,運動時間,ピークの代謝当量などで,運動の適否を判断する. AF 患者は運動負荷に対する心拍数上昇の程度が大きく,同一患者でもそのときの体調により心拍数の反応が異なる場合もあり,心拍数による運動強度設定は困難である.運動強度の設定は,心肺運動負荷試験による嫌気性代謝閾値での負荷量から処方する.トレッドミル検査では,中強度負荷の場合は最大運動負荷でのMET の40 ~60%,軽強度負荷なら20 ~40% の運動速度で運動処方を行う 339 安静時心拍数が110 拍/分を超えている場合,その日の運 動は中止するか,運動強度や運動時間を軽くまたは短くする. AF 症例では,心不全の合併の有無とその評価を十分行ってから運動の適否を検討する.また,脳梗塞予防の目的で抗凝固療法が行われていることが多いため,転倒などの外傷による出血性合併症には十分注意する. 9.5 心室頻拍 器質的心疾患がなく,かつ単形性持続性心室頻拍(VT)のアブレーション治療後3ヵ月以上VTを認めないアスリートでは,競技スポーツへの復帰は可能である330.運動療法による心筋虚血の改善,交感神経の抑制,副交感神経活性の上昇などの機序を介し,心室性不整脈の抑制が期待される.3 連発以上や多形性のVT が生じた場合は,運動を中止する. 9.5.1 QT 延長症候群 高強度の運動のみならず通常の作業,運動あるいは感情的な興奮が不整脈の誘引となることがある340.QT 延長症候群(LQTS)患者コホートの2 研究によると,競技スポー