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p.27 抽出テキスト

RR 間隔延長の程度を定量化してBRS 値(ms/mmHg)とする307.正常値は若干の幅があるが,8 ~15 ms/mmHgとされている.

ATRAMI 試験では心筋梗塞後患者において,BRS, HRV,ホルター心電図での不整脈,心室LP と予後との関連が評価された293.その結果,BRS(<3 ms/mmHg), LVEF およびPVC 数が予測因子であった.NSVT が確認され,かつBRS <3,あるいはSDNN <70 ms の群の予後は不良で,LVEF ≦35% でBRS <3 の例では死亡率が高いことが示された308.しかし,現代の最適薬物治療下で行われた臨床試験では,BRS の予後予測における有用性については一定の知見が得られておらず309, 310,心機能が比較的保たれた患者では心臓突然死の予知指標としての有用性を否定する報告もあり311,その活用は減ってきている.フェニレフリン静注は侵襲的手法であるため,代替となる非侵襲的な検査法による評価も検討されている

312 7.7.4 deceleration capacity(DC)

心臓副交感神経は,1 心拍ごとに心拍変動を制御し,迅速な効果を現すことが知られている.DC はRR 間隔の変動の中から,直前のRR 間隔よりも延長するものだけを抽出して加算平均し,心臓副交感神経による心拍変動の制御能力を評価する指標である.

心筋梗塞後患者を対象とした研究で,DC ≦2.5 ms がHRV 指標(SDNN)よりも予後予測精度が高く,DC >4.5 msでは心イベント発生率が低いことが示された313.一方で,心機能が比較的保たれた心不全患者(LVEF >30%)を対象にした研究では,DC の突然死および不整脈イベントの予知における有用性は示されなかった

314 8. 不整脈の遺伝学的検査の 方法と特徴

8.1 遺伝学的検査とは

近年の遺伝学的研究と遺伝子解析・診断技術の進歩に伴い,不整脈疾患において遺伝学的検査・診断の臨床的意義が高まっている.遺伝学的検査は一般的な臨床検査とは異なり,その結果には世代を超えて影響する内容が含まれるため,検査前,検査精度,検査後(結果の解釈)プロセスのいずれもが重要である.遺伝学的検査の実施に際しては,2011 年に日本医学会が発表した「医療における遺伝学的検査・診断に関するガイドライン」315 を遵守し,遺伝カウンセリングを含めた総合的な臨床遺伝医療が行える環境

下での実施が望ましい.

検査の実施にあたっては,患者または家族に遺伝学的検査の利点と注意点について説明と同意が必要である.特に家族性を疑う場合には,得られた結果によっては家族への影響も考える必要があることを説明し,理解を得る.また未成年者に対する保因者診断や,成年期以降に発症する疾患の発症前診断については,原則として本人が成人し,自立的に判断できる年齢になってから行うべきである.早期の検査を必要とする医学的な理由がない限り,両親などの代諾で安易に実施すべきではない

315 次世代シーケンサー(NGS)を用いた網羅的遺伝学的検

査を診療に応用する場合には,2 次的所見・偶発的所見の取り扱いや検査結果を開示する際の説明手順などを定めておくこと,研究として実施する場合でも倫理委員会の承認を得ておくことが必要である316.遺伝学的検査に関する推奨とエビデンスレベルを表11 に示す.

8.2 対象となる不整脈疾患

遺伝学的検査が実施される不整脈疾患は,心臓突然死の原因となりうる致死性不整脈を発症し,失神,突然死の原因となる疾患が多い.先天性QT 延長症候群(LQTS)やカテコラミン誘発多形性心室頻拍(CPVT),ブルガダ症候群などが代表的な疾患である.

先天性LQTS の遺伝学的検査は,不整脈疾患のなかではわが国では唯一保険適用となっている.先天性LQTS に対する遺伝子診断は,循環器内科医が臨床的に先天性LQTS を強く疑う場合,あるいは無症状でも12 誘導心電図でQT 延長が顕著である場合(未成年:QTc ≧480 ms,成人:同≧500 ms),さらに,発端者に同定されたLQTSの原因遺伝子変異についての家系調査は積極的に推奨される8, 317.

CPVT については,臨床的にCPVT と診断あるいは疑われた患者に対して,診断確定のため遺伝学的検査が推奨される.また家族に対しては,当該患者においてみつかった遺伝子異常の有無を検査することが推奨される317.ブルガダ症候群においてはSCN5A 変異がリスク評価に有用との報告もあるが318,診療目的での遺伝学的検査の明確な適応基準はない.

その他に後天性LQTS 319 や進行性心臓伝導障害320,家族性徐脈症候群,QT 短縮症候群や,不整脈原性右室心筋症/ 不整脈原性心筋症,拡張型心筋症(DCM)の一部などの心筋症も遺伝学的検査の対象に含まれる.特にラミン心筋症は中年期以降に不整脈による突然死や心不全などをき