p.26 抽出テキスト
RR slope などのQT/ RR 関係指標は心臓死の予知に有用とされている.QT/ RR 関係はホルター心電図を用いて解析され,RR 間隔を横軸に,QT 間隔を縦軸にプロットして得られた散布図から回帰式で算出される.QT/RR slope の値が大きいほど突然死および全死亡リスクが高いとされており,心筋梗塞患者ではQTe/RR slope >0.18,心不全患者ではQTa/RR slope >0.20,QTe/RR slope >0.22 のカットオフ値が用いられている290, 291. 7.7 自律神経活動異常指標 7.7.1 心拍変動(HRV)指標 自律神経のゆらぎによる心拍数の周期性変動を心拍変動とよび,ゆらぎの減少が自律神経機能低下を反映する.実際には,ホルター心電図などの長時間心電図記録における洞調律時のRR 間隔を解析する.解析方法は線形解析と非線形解析に分類される.線形解析指標には,時間領域解析指標(SDNN)などと周波数解析指標[低周波(LF),高周波(HF),LF/HF など]がある.非線形解析指標には, Poincaré plot,フラクタル指数(α1,β)などがある. 時間領域解析は古くから心筋梗塞後の突然死との関連性が示唆されており,もっとも多くの評価がされている 292 心筋梗塞後患者を対象にした前向き観察試験(ATRAMI 試験)では,SDNN ≦70 ms の群では心臓死の相対危険度が高くなることが示された 293 周波数領域解析においては,睡眠時無呼吸294,心不 全295,高血圧296 を含むさまざまな疾患における交感神経のバランスを評価するために,LF,HF,LF/HF 比が用いられてきた. 非線形解析では,Poincaré plot 解析はDCM 患者のリスク評価に有用であることが示された297.DIAMOND-MI試験のサブスタディでは,detrended fluctuation analysis (DFA)法を用いて算出した短期フラクタル指数α1 <0.75の場合,急性心筋梗塞後患者の死亡の相対リスクが高くなることが明らかになり,従来の時間領域および周波数領域解析指標よりも転帰に強く関連することを示した298.急性心筋梗塞患者を対象とした別の試験では,α1 <1.025とβ≦-1.507 の両方が,非致死的冠動脈イベントの再発と関連していた299.しかし,近年HRV 解析指標の有用性を否定する研究結果も出されており,特に,周波数領域解析であるLF 成分,LF/HF 比を交感神経機能の評価として用いることには限界があるのかもしれない300. 7.7.2 心拍タービュランス(HRT) HRT とは1 発のPVC を基点とし,代償性休止期後のRR 間隔,すなわち心拍がどのように変動するかをみたものである.この反応は,PVC 後の一過性血圧低下に対する頸動脈洞圧受容体反射による迷走神経刺激を介した心拍応答であり,副交感神経機能を反映する指標である.先述したHRV はPVC が頻発すると測定できないが,HRT は逆にPVC を活用し測定する指標である. HRT はホルター心電図を用いて測定し,代償性休止期後のRR 間隔の短縮量を表すturbulence onset[TO(%)]と,それに続くRR 間隔延長の速度turbulence slope[TS (ms/RR)]で評価を行う.心筋梗塞後患者を対象として行われたMPIP 試験,EMIAT 試験において,心イベントおよび生命予後の予知指標としてのHRT の有用性が示された301.これらの試験では,TO およびTS の異常値は, TO ≧0%,TS ≦2.5 ms/R-R と定義された.多変量解析から,HRT 陽性の心イベント予知における有用性は高く,これはLVEF 低下と同等の予測精度を示した.HRT の判定には3 つのカテゴリーがあり,TO とTS の両方が正常,あるいはPVC がほとんど出現していない場合をカテゴリー0,TO またはTS のどちらか1 つが異常な場合をカテゴリー1,両方が異常な場合はカテゴリー2 と定義されている.陽性判定にはカテゴリー2 を使用することが多い. 心筋梗塞後あるいは心不全において,複数の前向き試験およびメタ解析で心臓死に対する予知指標としての有用性を示す報告がなされており302, 303,自律神経活動異常指標を反映する予知指標の中でHRT がもっとも信頼性が高くなっている.特に,TWA との組み合わせで心臓死の予知に対する有用性を示した報告が多く281, 282, 304, 305,現在,その組み合わせの有用性を立証する臨床試験(REFINE-ICD)も行われている.また,低心機能あるいはLVEF が比較的保たれた左室機能障害患者において,NSVT との組み合わせで心臓死および全死亡の予知に対する有用性を示した報告もあり306,わが国で行われた多施設共同前向き試験(JANIES 試験)でもその組み合わせの心臓死予知における有用性が示された250.HRT を含めた非侵襲的心電学指標の組み合わせは心臓死のリスク評価において有用といえる 133 7.7.3 圧受容体感受性(BRS) 大動脈弓および頸動脈洞の圧受容体反射により,血圧上昇に対する反射性の副交感神経活性化が起こり,昇圧に反応して徐拍化が起こる.BRS 試験ではα受容体刺激薬のフェニレフリンを静注し,収縮期血圧上昇の程度に対する