p.25 抽出テキスト
ている.心室LP を評価に加えたわが国の多施設共同前向き試験(JANIES 試験)やこれまでの試験においても,器質的心疾患患者では心室LP と他の非侵襲的心電学指標を組み合わせると有用性が高まることを報告している270, 271.心室LP を含めた非侵襲的心電学指標の組み合わせは,心筋梗塞などの器質的心疾患患者でも有用といえる 133. 7.5 T 波オルタナンス(TWA) TWA とは,形の異なるT 波が1 拍ごとに交互に出現する現象であり,心室の再分極異常を反映する272.急性心筋虚血,電解質異常,重症心不全,低体温,心膜液貯留, QT 延長症候群(LQTS),ブルガダ症候群などで検出されることが知られている. 運動負荷中に記録した心電図をスペクトル解析することで得られるマイクロボルトTWA(M-TWA)については,虚血性心疾患患者や非虚血性心筋症患者を対象とした多くの前向き試験の結果が出されており,メタ解析においてもその有用性が示されている252, 264, 271, 273-275.2009 年に報告されたABCD 試験でも,心筋梗塞後低心機能患者(EF ≦ 40%)において,M-TWA は不整脈イベントおよび突然死の予知において有用としている276.しかしMASTER 試験では,心筋梗塞後低心機能患者においてM-TWA を単独で評価したところ,心臓死の予知に対しては有用であったものの,不整脈イベントに対しては有用ではなかった 277 これにより,致死性不整脈予知におけるM-TWA 単独使用 の有用性が否定されたことになる. TWA は,致死性不整脈予知において陽性適中率は低く,一方で陰性適中率がきわめて高いという特徴がある278.そのため,TWA は陽性判定によって高リスク患者を同定する指標ではなく,陰性判定によって低リスク患者を選び出す指標ということになる.複数の試験のメタ解析で,TWAを陰性と非陰性(陽性または判定不能)に分けて評価しているが,これはTWA 陰性の意義を評価したものといえる279.わが国でも,低心機能患者に限定してTWA の有用性を前向きに評価した試験(PREVENT-SCD 試験)が行われたが,致死性不整脈に対して高い陰性適中率を示している 280 TWA は,他の非侵襲的心電学指標と組み合わせること で,心イベント(致死性不整脈,心臓突然死,心臓死)予知に対する有用性が高まることが知られている271.近年,心筋梗塞後患者において,M-TWA もしくは後述するmodified moving average(MMA)法を用いたMMA- TWA とHRT を組み合わせた評価が,心臓死および致死性不整脈の予測に有用であることが示されている281, 282.虚血性心疾患を多く含む器質的心疾患患者を対象にした試 験のメタ解析で,心臓突然死に対する予測因子を評価したところ,LVEF,冠動脈疾患の存在,M-TWA 陽性が有意な予測因子として挙げられ,これらの組み合わせによる評価はLVEF 単独に比べ予後の予測精度が高いことが示された283.器質的心疾患患者においては,TWA は単独でなく他の非侵襲的指標と組み合わせて活用する予知指標といえる 133 非虚血性心疾患患者についてもTWA の評価が複数行わ れているが,その有用性は一貫していない.比較的症例数の多いALPHA 試験では,心臓死と不整脈イベント予測に関しM-TWA は有用と報告しているものの284,小規模であるが他の試験ではその有用性を否定している.HCM や遺伝性不整脈疾患(ARVC/ACM,LQTS,ブルガダ症候群)などについても,TWA の有用性を評価しているが,いずれも小規模な試験であるためエビデンスとしては不十分である. 最近,ホルター心電図の波形をMMA 法とよばれる時間領域解析,あるいはM-TWA と同様に周波数領域/ スペクトル解析(FD-TWA)で24 時間連続的にTWA を検出する測定法もあり,すでに臨床利用されているものの285, 286,十分なエビデンスは揃っていない. 7.6 他の再分極異常指標 7.6.1 T 波バリアビリティ(TWV) TWV はT 波の変動性を反映し,再分極のばらつきを評価する指標である.前述したTWA は交互に変動するT 波の変動を評価したものであるが,TWV/T wave amplitude variance(TAV)はT 波の形状,振幅,極性の変化を含めて解析する方法である.MADIT II 試験のサブスタディでは,LVEF ≦30% の心筋梗塞でICD 治療が行われた症例において,TAV >59μV が不整脈イベントの予測因子(HR2.01,95%CI 1.2-3.5)であることが示された249.その他,DCM における不整脈イベント287,シャーガス病での全死亡のリスク層別化288 に有用とする報告がある.最近ではT 波の振動性を考慮したTWA(T-var)のほうが不整脈イベントの予知に有用との報告もある 289 7.6.2 QT 計測指標 近年のガイドラインやステートメントで報告されているように,器質的心疾患患者では心臓突然死や致死性不整脈のリスク評価において,QT dispersion をはじめとするQT間隔指標の有用性は否定的とされている133.しかし,QT/