p.23 抽出テキスト
7.1 左室駆出率(LVEF) 心機能の低下を反映する指標はいくつかあるが,各種画像診断装置で計測されるLVEF の低下は,予後指標のゴールドスタンダードとなっている.現在のところ,器質的心疾患を有する患者においては,もっともエビデンスレベルが高い指標である.LVEF の低下は≦35% または40% と定義されることが多い. LVEF の予知指標としての有用性は,植込み型除細動器 (ICD)の一次予防(危険な不整脈を一度もきたしたことのない患者における不整脈死の予防)としての適応を評価した欧米でのMADIT II 試験(LVEF ≦30% の低心機能心筋梗塞後患者における評価) 154,およびSCD-HeFT 試験 (LVEF ≦35% の心不全患者における評価) 159 によって確 立された.わが国でも,心筋梗塞後患者においてLVEF 低下の有用性が評価され,LVEF のカットオフ値は欧米と異なるものの,LVEF 低下患者(≦40%)では致死性心室性不整脈イベントが多いことが示された252.LVEF のカットオフ値を下げれば心臓突然死に対しての特異度は上がるが,逆に感度は下がってしまう.これらの臨床試験の結果から,LVEF 低下のカットオフ値は35 ~40% が妥当とされている. 7.2 非持続性心室頻拍(NSVT) ホルター心電図で評価される心室期外収縮(PVC)およびNSVT は,致死的となるVF や持続性VT のトリガーとなる不整脈であり,古くから致死性不整脈あるいは心臓突然死の予知指標として活用されてきた.PVC は頻発性や多源性の場合にリスクがあると判断されるが,予知指標としてのエビデンスレベルは,NSVT のほうがPVC よりも高い 253 NSVT は3 連発以上のPVC の連続で,周期が100 拍/ 分以上と定義するのが一般的である4, 254, 255.しかし, MERLIN-TIMI 36 試験で評価されたように,より厳格な定義(4 ~7 連発,さらには8 連発以上)を用いたほうがよいとの報告も出されている254.NSVT の有用性については,心筋梗塞後,拡張型心筋症(DCM),肥大型心筋症(HCM)患者で確立している4, 188, 255.なかでもHCM 患者においては,現在もなお,もっとも信頼のおける指標となっている133. 7.3 心臓電気生理学的検査 心臓電気生理学的検査(EPS)によるプログラム刺激は,心臓突然死の予知における唯一の観血的な検査法である. EPS は侵襲的な検査であることから,スクリーニングで行うというよりは,危険性の高い患者を絞り込むための二次検査として位置づけられる. 予知指標としてのEPS の有用性は,MUSTT 試験256 によって示された.同試験では,心筋梗塞後でLVEF ≦ 40%,NSVT を有し,EPS で心室性不整脈(持続性VT またはVF)が誘発された患者において,ICD の一次予防と 表10 心イベントのリスク評価に関する推奨とエビデンス レベル 推奨クラスエビデンス レベル LVEF心筋梗塞後あるいは心不全患者において, LVEF 低下(35 ~40% 以下)を心イベントのリスク評価に用いる. I A NSVT心筋梗塞後,DCM,HCM 患者において, NSVT を心イベントのリスク評価に考慮する. IIa B EPS LVEF 低下(35 ~40% 以下)の心筋梗塞後患者において,EPS をNSVT と組み合わせてリスク評価に用いることを考慮する. IIa B脱分極/ 再分極異常を反映する指標心筋梗塞後,あるいは非虚血性心筋症患者において,心室LP やTWA などの非侵襲的心電学指標を組み合わせてリスク評価に用いることを考慮する. IIa A心筋梗塞後あるいは非虚血性心筋症患者において,心室LP やTWA などの非侵襲的心電学指標のいずれかをLVEF と組み合わせてリスク評価に用いることを考慮する. IIa A ARVC/ACM が疑われた患者の診断において,心室LP の検出を考慮する. IIa Bブルガダ症候群が疑われた患者の診断において,心室LP の検出を考慮する. IIa B自律神経活動異常を反映する指標心筋梗塞後あるいは非虚血性心筋症患者において,HRT をTWA またはNSVT と組み合わせてリスク評価に用いることを考慮する. IIa B心筋梗塞後患者のリスク評価に,HRT,正常心拍間隔標準偏差(SDNN)などのHRV 指標,BRS,DC を用いることを考慮してもよい. IIb B