p.17 抽出テキスト
や立位負荷などと同様に,積極的病的状況を再現する動的検査と位置づけられる2, 4, 132, 133. 不整脈診療におけるEPS の役割は,非薬物治療の進歩に伴い大きく変遷してきた.頻脈性不整脈ではアブレーションの飛躍的な進歩に伴い,その焼灼至適部位を判定する目的に用いられることが主要な役割となっているが,突然死予防の観点からは,致死的な心室頻拍(VT)/心室細動(VF)の発生リスクを評価する目的に用いられることがある2, 4, 8, 132, 133.表4 におもな不整脈の重症度評価における標準的な評価方法2, 132 を,表5 に推奨とエビデンスレベルを示す. 4.1 徐脈性不整脈 徐脈性不整脈は,心臓突然死全体の10 ~20% を占めるとされる14, 64, 134-137.突然死例では心静止による直接的死亡も30% 程度認められるが,徐脈依存性のQT 延長に伴うトルサードドポアント(TdP)やVF によるものがより多い14, 134.徐脈の原因となる不整脈は,洞不全症候群(SSS)と房室ブロックがほぼ同数で90% を占める 138 ガイドライン上,ペースメーカの適応は長時間記録で確 認される徐脈と臨床症状(めまいなどの脳虚血症状あるいは徐脈による心不全症状)の有無で定められており,EPSの積極的適応はない2, 4.しかし,疑わしい症候があるが異常心電図を確認できない症例において,EPS から補助的情報を得ることができる.SSS では,心房刺激による洞房伝導時間の計測,オーバードライブ抑制試験による洞結節自動能の評価が有用である139, 140.房室ブロック・心室内伝導障害症例ではヒス束電位記録を行い,HV ブロック(HV時間の異常延長ないし伝導途絶)が確認されればペースメーカの適応と判断する.二束ブロックでHV 時間延長を 認める例の3 度房室ブロック移行率は2.3%/ 年であるが, HV 時間が100 ms を超えると22 ヵ月で25% に3 度房室ブロックが出現する141-143.アトロピンや抗不整脈薬(プロカインアミドなど)負荷によってHV ブロックが発現する場合には,ペースメーカの適応を考慮する必要がある144, 145.しかし,徐脈の結果として心臓突然死をきたしうるか否かを明確に判断する指標はない. 4.2 頻脈性不整脈 4.2.1 器質的心疾患を有する心室性不整脈の二次予防 リエントリー性持続性単形性VT は,1 ~3 連の心室早期刺激を用いたプログラム刺激により高率(>80%)に誘発可能であり,診断的価値が高い132, 146.単形性VT が誘発される場合は,心室内に比較的安定したリエントリー基盤が存在することを意味しており147-151,アブレーションなどの効果も期待される.複数のVT 波形を有する症例,多形性VT 症例,VF 症例ではEPS における頻拍誘発の再現性は低下する.治療の予防効果を頻拍誘発阻止効果で判定する,いわゆるEPS ガイド治療の信頼性も限定的となるため,現在ではEPS による予防治療効果判定はほとんど行われない2, 152.抗不整脈薬による催不整脈性(異なる頻拍を誘発する作用)はEPS におけるVT/VF 誘発で評価できるが,原則的に植込み型除細動器(ICD)を適用する二次予防症例における必要性は低い. 4.2.2 器質的疾患を有する心室性不整脈の一次予防 心筋梗塞後に左心機能低下[左室駆出率(LVEF)≦35 ~ 表4 EPS による不整脈の重症度判定における標準的な評価方法 不整脈電極配置おもな評価項目刺激部位プログラム刺激負荷薬物SSS HRA, HBE SNRT, SACT HRA OST,単発早期刺激*1 PAB *2房室ブロックHRA, HBE房室,ヒス- 心室伝導HRA基本刺激+単発早期刺激,頻回刺激アトロピン,プロカインアミドPSVT HRA, HBE, RVA, CS頻拍誘発,副伝導路など異常伝導の有無HRA, RVA基本刺激+単発早期刺激,頻回刺激イソプロテレノール VT/VF HRA, HBE, RVA *3 VT/VF 誘発性RVA, RVOT,左室基本刺激+1 ~3 発早期刺激*4,頻回刺激イソプロテレノール*1: ストラウス法によるSACT 評価.固定周期長刺激を用いることもある(Narulla 法). *2: アトロピンとβ遮断薬による内因性機能評価時に行う. *3: 誘発プロトコールに従ってRVOT や左室も用いる. *4: 非特異的VT/VF 誘発を避けるため,早期刺激連結期は一般に180 ms 以上に設定.ブルガダ症候群における誘発では連結期200 ms 以上, 2 連までの心室早期刺激が推奨される. HRA:高位右房,HBE:ヒス束電位記録部,RVA:右室心尖部,CS:冠状静脈洞,SNRT:洞結節回復時間,RVOT:右室流出路,SACT:洞房伝導時間,OST:高頻度駆動抑制試験,PAB:薬理学的自律神経遮断,PSVT:発作性上室頻拍