p.15 抽出テキスト
は,23 年間の追跡調査によって心血管死亡の相対リスクと関連することが明らかとなった76.フラミンガム研究の対象者で運動負荷試験を実施した心血管疾患のない2,885 人では,年齢と性別(男性)が運動負荷中のPVC 発生と強い相関があり,15 年の観察期間で総死亡率の有意な上昇が認められた77.運動中の心拍上昇は副交感神経の抑制と交感神経の活性化のバランスに起因するが,運動後に迷走神経の代償性亢進がない場合,心拍数の回復反応が減弱し,死亡や冠動脈疾患が増加することが知られている78.死亡リスクの予測有用性に関して,運動中のPVC 発症および増加と運動後回復PVC 発症および増加を比較した研究がある.心不全,心臓弁膜症,不整脈の病歴のないトレッドミル運動負荷試験実施患者29,244 人を対象としたコホート研究である.この結果では,運動中よりも運動回復期のPVC が死亡リスク予測に有用であったと報告されている 79 3.5.3 血圧反応 50 歳以下の若年のHCM 患者において,運動負荷試験による血圧上昇反応の不良あるいは低下は,突然死の主要危険因子の1 つである80-82.若年HCM 161 人を対象にトレッドミル運動負荷試験を実施し,44 ± 20 ヵ月の追跡を行った検討では,12 人で突然死が発生し,血圧上昇反応異常による突然死予測は感度75%,特異度66%,陽性適中率15%,陰性適中率97% であった83.また,HCM 126人に対するエルゴメーター負荷時の血圧上昇反応異常は,心血管死亡の発生と関連していた(追跡期間3.7 ~4.7 年における陽性適中率14%,陰性適中率95%) 84. 3.6 最新の心電図モニタ 3.6.1 接触型光プレスチモグラフィ スマートフォンのカメラ部分に指をあて,得られる脈波の振動から心拍を測定することができる(巻末図36).さらに,脈波の変動を解析することにより心房細動(AF)の検出が可能である85-87(臨床成績については第2 章2.1.3.c参照). 3.6.2 非接触型光プレスチモグラフィ 無拘束・非接触型の心拍計の開発も進められている.具体例としてウェブカメラやスマートフォン内蔵カメラを用いて顔面の光電脈波を検出し,その変動を計算することによりAF の診断を行う試みが報告されている88, 89. 3.6.3 オシロメトリック自動血圧計 電子血圧計は脈波を利用して血圧を測定する(オシロメトリック法).電子血圧計のカフに内蔵されたセンサーは減圧過程で血管壁から発生する脈波の規則性から不整脈の有無を判定する.これまでの報告では,AF 検出の感度も特異度も90% 以上と高いことが示されている90, 91. 3.6.4 着用型心電計 発生頻度の低い不整脈の検出には,長期間記録が可能な着用型心拍計や着用型心電計が役立つ.着用型心拍計は,スマートウォッチのようなリストバンド型(巻末図37)や指輪型,ネックレス型(巻末図38),ブレスレット型,眼鏡型などがある92-94.着用型心電計(巻末図39)はT シャツの内側に電極が縫い込まれており,そこに小型心電計を取り付けることにより長時間にわたり心電図が記録され,これを携帯型デジタル端末やクラウドにアップロードして診断を行う(巻末図40). 3.6.5 スマートスピーカーなど スマートスピーカーは,発せられた声を人工知能(AI)が処理し,指示された出力を行うものである.スマートスピーカーから18 ~22 kHz の非可聴域音波を生体に向けて発し,その反射音信号を解析することにより心拍モニタリングが可能となったという報告がなされた95.さらに,これは心拍の不規則性も識別可能で,不整脈の診断支援となる可能性が示唆されている.また,マイクロ波(10 GHz)を背部や大腿に照射して,返ってきた反射波を処理することにより心拍を測定する機器が開発されている96.これを椅子の背面に設置すれば,椅子に掛けるだけで心拍を測ることができる.介護施設などでは,ベッド裏に設置すれば利用者を見守る際に役立つと期待される. 3.6.6 スマートフォンとスマートウォッチ スマートフォンと外付けの心電図記録専用器を使うとI 誘導心電図を記録し,ペアリングされたスマートフォンのアプリ上で,PDF 化された心電図を確認することができる(AliveCor 社,巻末図40) 97, 98.スマートウォッチはウォッ チ裏面とベゼル部分,またはベルトに電極があり,ここに触れることによりI 誘導心電図が記録できる(巻末図37).その直後にペアリングされたスマートフォンのアプリ上でPDF 化された心電図を確認することができる 99 スマートフォン向け「家庭用心拍モニタプログラム」,な らびにスマートウォッチ向け「家庭用心電図プログラム」は, 2021 年1 月に国内使用が承認され,疾患症状を検知・提