p.13 抽出テキスト
3.1.2 T 波異常 T 波の陰転化は,虚血や肥大などを反映する.肥大型心筋症(HCM),たこつぼ心筋症,急性心内膜下梗塞では,巨大陰性T 波を示すことが多い.T 波の分析は,QT 延長症候群(LQTS)の患者を特定するのに有用である46, 47.カテコラミン誘発多形性心室頻拍(CPVT)の一部において非発作時(安静時)にT 波に続いてU 波を認めることが報告 されている48.T 波の頂点から終点まで測定することで得られるTpeak-Tend 間隔は,再分極の不均一性を反映し,さまざまな疾患でのリスク評価に用いられている49.QT 短縮症候群ではST 部分がみられず,Tpeak-Tend 間隔が短縮し,左右対称性の尖鋭T 波を示す 50 3.1.3 ST-T 変化 ST-T 変化は,狭心症や心筋梗塞などの冠動脈疾患,心筋症,ブルガダ症候群で認められることが多い44.心疾患の既往がなくともST-T 変化を示す群では,それを示さない群に比べ,突然死は男女とも約2 倍に上昇すると報告されている51.また,T 波の軸異常が突然死の予知因子に有用であるとの報告もある52.ST 部分の変化によってブルガダ症候群の病型診断が行われており,リスク評価にも活用されている 53 3.1.4 QT 異常 LQTS の診断において,12 誘導心電図は有用である. QT 間隔の計測については,通常12 誘導心電図のII 誘導またはV5,V6 誘導で行い,接線法などを用いて用手的に計測するのが望ましい.洞不整脈が存在する場合は,少なくとも連続3 心拍の測定値の平均を求める54.先天性LQTS については,特徴的なQT 延長を示すことが知られている.二次性LQTS については,QT 延長が認められる場合もあれば,QT 間隔が正常であることもあり,QT 延長をきたす何らかの要因が存在するという特徴がある.徐脈に伴うQT 延長では,洞不全症候群や2 度以上の房室ブロックの存在,心拍数に伴うT 波の変化,R on T 型の期外収縮の発現などが診断に役立つ 55 3.1.5 QT dispersion QT dispersion は12 誘導心電図の最大QT 間隔と最小QT 間隔の差であり,心室筋の再分極時間の不均一性の指標である56, 57.心筋梗塞後58,大動脈弁狭窄症59, 60, ARVC/ACM 61 で心室性不整脈や心臓突然死の発現と関連することが報告されている.カットオフ値については70 ms 前後とすることが多い.ただし,近年では他の有用な心電学的指標の登場もあり,臨床での活用は減っている. 3.1.6 早期再分極 早期再分極は健常人にも認められることが多いが,Rossoらは0.1 mV 以上のJ 点上昇が重要であるとし,V4 ~V6誘導での変化は診断的価値が低く,下壁誘導(II,III, aVF 誘導)あるいはI,aVL 誘導でのJ 点上昇に注目すべ 表3 心電図検査の不整脈診断とリスク評価における推奨と エビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル 12 誘導心電図12 誘導心電図を,不整脈の原因となる冠動脈疾患,ARVC/ACM などの器質的心疾患の検索に使用する. I A 12 誘導心電図を,QT 延長症候群やブルガダ症候群などの遺伝性不整脈疾患などの診断に使用する. I Aホルター心電図/ イベント心電図ホルター心電図を,症状の有無によらず発作性の不整脈の検出に使用する. I Aループ式イベントレコーダを,症状の有無によらず発作性の不整脈の検出に使用することを考慮する. IIa B非ループ式イベントレコーダを,症状と不整脈の関係を知るために使用することを考慮してもよい. IIb B心臓突然死あるいは致死性不整脈の予知に,ホルター心電図の指標を使用することを考慮してもよい. IIb B運動負荷試験(心電図)運動負荷試験を,CPVT 患者の運動誘発性心室不整脈の評価に用いることを考慮する. IIa C運動負荷試験を,先天性LQTS が疑われる患者の診断において考慮する. IIa B運動負荷試験時のHCM 患者の血圧異常反応を,心臓突然死のリスク評価に用いることを考慮する. IIa B最新の心電図モニタ/AI 自動診断不整脈検出のために,スマートフォン内蔵カメラと心拍数モニタプログラムの使用を考慮してもよい. IIb B不整脈検出のために,スマートウォッチ心電計プログラムの使用を考慮してもよい. IIb B AI アルゴリズムを用いたAF 診断機能の補助的な使用を考慮してもよい. IIb C