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p.9 抽出テキスト

改訂にあたって

改訂の背景

近年の先天性心疾患(CHD)に対する手術の成績向上により,多くのCHD術後患者,とくに最近では重症度の高い術後患者が急増し,一般の循環器診療の場で遭遇する機会も増えてきている.したがって,長期生存患者の数は本ガイドラインの前回(2012年)改訂時からさらに増加した.同時にこれらCHD術後の病態に関する理解が深まり, CHD術後遠隔期の管理や治療の知見も蓄積されつつある.病態の理解については最近の画像診断法の開発,管理や治療については新薬の登場や手術とカテーテル治療法の進歩がめざましい.

これらの最近の医療事情に沿ったガイドラインが望まれることから,今回の改訂に至った.

対象疾患とその特殊性

本ガイドラインの対象はCHD術後遠隔期の患者,すなわち主に成人先天性心疾患(ACHD)患者であるが,循環動態に関連した遠隔期の問題を中心に,その管理と侵襲的治療に焦点を当てることを意識した.ACHD患者については精神発達障害やうつ病などの精神疾患合併,医療保険制度や障害者福祉制度などの社会的問題も指摘されているが,本ガイドラインで扱えなかったこれらの問題に関しては日本循環器学会による「成人先天性心疾患診療ガイドライン(2017年改訂版)」1)の「I. 総論」の「8. 心理的問題」と「9. 社会的問題」を参照されたい.

複雑なACHDでは修復手術(definitive repair)終了後であっても,各々の疾患に特徴的な術後遺残症や新たな術後続発症を有する患者が多く存在する.単心室循環のFontan術後,体心室が左心室でない修正大血管転位に伴う循環はそれらの典型であるが,ACHD患者において最も多く経験するFallot四徴術後の右室流出路狭窄や肺動脈弁閉鎖不全などは,一般の循環器科医には馴染みのない循環病態である.

しかし,これらACHD患者群の遠隔期における病態に対する管理・治療法は十分に確立されていないのが現実である.その主な原因として,CHD術後では,疾患や術式の種類による相違のみならず,手術時年齢,補助手段,心

筋保護法,再建に用いた補填材料,使用した血液製剤など,時代によって異なる種々の要因のため,心肺の形態的・機能的状態の程度に大きな差異があり,同じ疾患,同じ術式でも個々の患者の術後状態は千差万別であることが挙げられる.さらに,ACHD本来の病態に加え,高血圧,糖尿病,高脂血症などの生活習慣に関わる後天的要因,さらには,右心不全が多いACHD患者での臓器うっ血と関連する肝腎機能異常などの多臓器機能異常が,ACHDの病態をより複雑にしている.加えて,一般循環器病患者と同様に生活の質(QOL)を意識した終末期医療の問題がある.複雑CHD患者を理想的に修復できない場合も少なくなく,心血管機能や多臓器機能が早期に破綻し治療困難な患者に遭遇するなど,生命の尊厳を意識した対応が要求される機会が増加している.

このように先天性,後天性,時代背景,QOLなど種々の要素が絡み合うACHD術後病態の複雑性,患者数の急増,そして,統一された知見の希少性を勘案すると,CHD術後遠隔期に特有の管理や再侵襲的治療の適応と方法についての標準的ガイドラインを提示する意義は大きいといえる.

改訂の基本方針と主な改訂事項

本ガイドラインは,見やすく容易に理解でき,多くの医療関係者に役立つものとすることを基本方針とし,各疾患に共通する項目を総論として第1章~第3章で述べ,各疾患ごとに特徴的な問題を各論として第4章に記載した.第2章ではCHD術後遠隔期に問題となる主要な病態である,心不全,不整脈,肺高血圧症を取り上げるとともに,「不整脈」の項に「突然死」を追加した.また,ACHDの病態への関与が重要となる生活習慣病と慢性腎臓病などを新たに加えた.第2章の一部の項では,「先天性心疾患の特殊性」の項目も新たに加え,一般循環器疾患患者とCHD患者とにおける管理・治療の違いの有無を明記し,診療の助けとなるように努めた(治療法などの適応基準の推奨クラス分類とエビデンスレベルについては後述).

前述したように,現在,CHD術後症例は増加しており,