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p.84 抽出テキスト

9.4.1 機能的修復術後

ccTGAでは右心室が体心室であるため,右心不全の報告が多く,経年的に三尖弁逆流,右室機能低下,房室ブロック,導管狭窄・逆流が進行する.術後10年生存率は55~85%で,主な死因は再手術,突然死,右室機能不全,不整脈である.心疾患を合併する場合の死亡年齢の平均は40歳前後とされる83, 88, 92, 892).

三尖弁置換術,心外導管兼VSD閉鎖術後の心外導管狭窄に対する再手術率は高く,10年で約1/3である.10~20年ごとに導管形成術を行うことが多く,導管の材質やその選択は時代的な背景と今後の技術革新によるところが大きい.VSD+肺動脈弁狭窄合併例は,初回心外導管手術後に三尖弁閉鎖不全の悪化を認めることが少なくない.これは,右室圧の低下により心室中隔のgeometryが変わるためと推測されている92, 525, 905, 906).同様に,心外導管狭窄解除術後に左室の前負荷が増大し,三尖弁閉鎖不全を悪化させることがある.したがって,三尖弁閉鎖不全合併例では軽度の狭窄が残存する方が,三尖弁と右室機能の観点から望ましいと考えられる.

完全房室ブロックにより突然死や心不全の悪化をみることがある.頻脈性不整脈は体心室機能低下を反映して経年的に増加する.機能的根治術後にはさまざまな内科治療や心臓再同期療法,手術治療を行っても右室不全が進行する場合,最終的には心移植の適応となることがある906–909).

9.4.2 解剖学的修復術後

ダブルスイッチ手術後の体心室左室機能は良好である.遠隔期予後に関する報告はまだ少ないが87, 909–913),術後生存率は10年で90~100%,15年で75~80%とされ,遠隔期死亡の危険因子は三尖弁逆流の残存との報告がある.ダブルスイッチ手術と従来の生理学的修復との比較では,心房スイッチと大血管スイッチによる本来のダブルスイッチ手術では比較的良好な遠隔期予後が期待できるが,心房スイッチと心外導管修復術の組み合わせでは,肺動脈弁狭窄,大動脈弁下狭窄,右心不全,不整脈などに対し再手術が必要となることが多い.

9.5 術後遠隔期の管理

機能的修復術後は右室機能低下,三尖弁閉鎖不全,房室ブロックの発生に注意する.三尖弁閉鎖不全や右室機能不全の予防・治療として,ACE阻害薬,β 遮断薬を用いることがあるが,大規模研究で肯定的結果は得られていない198, 914–917).肉柱の多い右室が体心室であるため,心機能低下例では抗凝固・抗血小板療法を行うこともある.機械

弁置換術後はワルファリンを継続投与する.持続性または抗不整脈薬投与中の上室頻拍には,抗凝固療法の併用を検討してもよい.

解剖学的手術後で,特に肺動脈絞扼術での左室トレーニング後の症例においては,左室機能の経時的な評価が必要である.また心房内血流転換術による上室不整脈の出現や体静脈,肺静脈の狭窄の評価も重要である.

感染性心内膜炎の予防は推奨される.妊娠を考えるにあたっては,ACHD専門医のカウンセリングが必要である.事前に心エコー法,MRIなどで現状の心機能や問題点をスクリーニングし,妊娠とその継続の可否を総合的に判断する.また,呼気ガス分析を伴う運動負荷試験からは重要な情報を得ることができる.一般的に運動耐容能が推定値の75%以下では妊娠の継続は困難なことが多い564).

9.6 経過観察での検査方法

内科的管理の方法は患者の病態に応じて行う.外来受診の頻度は,軽症では1年ごととし,必要に応じて心電図,ホルター心電図,心エコー法により検査を行う.より正確な形態や病態の把握には経皮酸素飽和度測定に加え, MRIやCTを用いた画像診断や運動負荷試験を適宜加える.中等度以上の病態では観察や評価の頻度を多くすること(3 ~6ヵ月ごと)が望ましい.詳細はAHA/ACCの2018年ガイドラインのTable 31を参照されたい3).

心電図検査では房室ブロックの進行に注意を要する.胸部X線写真にて右室拡大,肺うっ血に注意する.心エコー法は心室機能低下,三尖弁閉鎖不全,左室圧,肺動脈圧を観察できるが,定量的評価は難しい918).心臓MRIは体心室右室の心室機能評価に優れるが,ペースメーカ装着例では行えない919).体側心室としての右室の心機能評価は(とくに正中心または右胸心の場合)エコー法では困難なことがある.心臓MRIは心室機能評価とともに弁逆流の重症度評価に有用である.同時に大血管と心室の位置関係なども明瞭になるため,術前評価にもしばしば用いられる920―922).CTは右室機能,左室肺動脈導管の狭窄・石灰化,冠動脈の評価に有用である.

ダブルスイッチでの動脈スイッチ手術後例では左室機能低下とともに大動脈弁逆流が進行することもあるので,注意が必要である898).心臓カテーテル検査は心室機能,房室弁逆流,肺動脈弁狭窄,冠動脈狭窄の評価に有用である.また心臓再同期療法(CRT)を考慮した電気生理学的検査も有用である.体心室右室の冠動脈分布は右冠動脈の分布となるため923, 924),核医学検査では心筋虚血,自律