p.83 抽出テキスト
形成されることがある890, 891).小児期はVSD閉鎖術,三尖弁置換術,左室肺動脈心外導管修復術が施行される92, 892).非手術例や機能的修復術後において,体心室右室機能,三尖弁逆流が経年的に悪化し,頻脈性不整脈を合併することが多い889, 893–896).左室圧の低下がなければ,体心室右室機能の低下による心不全を回避するため,解剖学的修復術が行われることがある897–900). 9.2 非手術例の予後 VSDや肺動脈弁狭窄を合併しない症例では,自然歴は完全房室ブロックや三尖弁閉鎖不全に左右される.これらが軽度であれば60~70歳代まで生存することがある. Grahamらによる多施設共同研究83)によれば,45歳までに合併心疾患のあるccTGAでは67%,合併心疾患のないccTGAでは25%でうっ血性心不全が発症した.右室機能不全は前者で70%,後者で55%に発症し,三尖弁閉鎖不全はそれぞれ82%と84%に生じた.一方,左室機能障害は前者で25%に出現し,後者ではわずかに7%であった. 生命予後については,トロント小児病院の報告では20年で75%,30年で約60%,40年で50%を下回り,60年では15%程度である892).完全房室ブロックの発生率は2%/年である890).非手術例での予後は以上のとおりである一方,ダブルスイッチ手術では長期予後が良好であるとされる.しかしながら,ダブルスイッチ手術は熟達した外科医のいる施設での施行が望ましく,心内奇形を合併しない症例に対する治療戦略は議論のあるところである. 9.3 手術治療 9.3.1 機能的修復術 本手術には,右心室を体心室として二心室治療を行う古典的な手術(生理的修復術)と,心室容積が十分でない場合や,VSDの位置により左室流出路形成が困難な症例に適用される単心室治療,すなわちFontan手術が含まれる.二心室治療の場合には,肺動脈弁狭窄に対して弁切開や弁輪拡大術が可能なこともあるが,多くは心外導管修復術が行われる.心外導管修復術は導管狭窄進行のため,術後10~15年で再手術となることが多い. 中等度以上の三尖弁逆流がある場合,肺動脈絞扼術を施行すると心室中隔の偏位によって逆流が改善されることがある.逆に,肺動脈弁狭窄を解除したときに三尖弁逆流が増悪することがあるので,注意が必要である.中等度以上の三尖弁逆流で右室機能が保たれている症例に対しては,弁置換術が推奨される.弁置換術は不可逆的な右室 機能低下をきたす前に施行しなければ予後不良で,右室駆出率40~43%がボーダーラインと考えられる91, 901, 902).合併する心奇形の中でも,左右の心室容積は十分ありながらも左室流出路狭窄がある場合には,術後中期までに限ればFontan手術での良好な成績が報告されているが903, 904),術後長期においてはFontan手術特有の合併症を否定できないと考えられる. 9.3.2 解剖学的修復術 本手術は左室が体心室となる解剖学的な修復を行う.機能的な手術介入(右室を体心室として行われる手術)と比べて,左室を体側心室として用いることを意図したダブルスイッチ手術も,1990年代以降多く行われるようになっている897).肺動脈弁狭窄がないかごく軽度の場合には, MustardまたはSenning手術などの心房スイッチ手術(心房内血流転換術)と大血管スイッチ手術(Jatene手術)が行われる.肺動脈の狭窄または閉鎖に加えてVSDがある症例では,心房スイッチ術と心外導管修復術の組み合わせが行われる(後者は本来のダブルスイッチ手術ではないため,単に「anatomic repair解剖学的修復術」とよばれることもある) 897–900).ただし,VSDが大動脈への通路となり,右室内でルートをとりながら大動脈につながることになるので,十分なサイズのVSDと右心室が必要である.また,左室圧が低下している場合は肺動脈絞扼術を行い,左室に対して圧負荷によるトレーニングを行ってからダブルスイッチ手術に進む必要があるが,思春期以降はトレーニングに耐えられずに左室機能低下が進行して,ダブルスイッチ手術まで到達できないことが多い.肺動脈弁狭窄を合併する場合,左室圧が成人期まで維持され,解剖学的修復術が可能な症例を認める.しかしながら,このような症例においても,左室機能が保たれ十分に高圧に維持されているにもかかわらず,単心室治療に比して中期成績での有利性は認められてはいない903, 904). 9.4 術後遠隔期の予後 最近になりccTGAに対する移植,Fontan手術,機能的および解剖学的修復術のそれぞれの遠隔期成績が比較検討されている88).15年の観察期間で,解剖学的修復術では左心不全の発生も少なく良好な成績であるが,機能的修復術では12年経過以降に三尖弁逆流と右心不全が多く発生するとされている.適応を選択することにより解剖学的修復術の有利性が示されている.以下にそれぞれの術後遠隔期予後について述べる.