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p.82 抽出テキスト

動脈病変としては冠動脈主幹部の求心性内膜肥厚を伴う線維細胞性の内膜増生であり,末梢側狭窄はまれである.冠動脈走行様式としては,冠動脈壁内走行例,左右いずれかの冠動脈が大動脈と肺動脈の間を走行する例が最も多く,次いで単冠動脈,左冠動脈が肺動脈後方を走行する例が多い829, 875, 876).冠動脈病変は進行性であると考えられている872). b. 診断と侵襲的治療の適応

胸痛などの臨床症状や負荷心電図,心エコー検査で心筋虚血の徴候を認めた場合,厳重な経過観察と心筋シンチグラフィ,選択的左右冠動脈造影検査が必須である.一方,明らかな冠動脈虚血症状がない場合でも,冠動脈狭窄を除外できないことに留意する必要がある.さらに,冠動脈狭窄がない場合でも,左冠動脈は正常に比べ血管径が有意に細いこと,遠隔期の左室心筋灌流欠損の発生率が高いことが報告されているので,注意深い評価が必要である847–851).ASO術後は非侵襲的冠動脈検査の感度は低いため,成人例では冠動脈造影を含めた冠動脈評価を検討する(推奨クラスIIb,エビデンスレベルC).

心筋虚血症状を有する例,または検査で冠動脈狭窄に伴う虚血が確認される例は,侵襲的治療の適応があると考えられる.適応となる冠動脈病変としては,左右冠動脈本幹の高度閉塞性病変と危険側副路状態であり,心筋梗塞の既往例では積極的に侵襲的治療を検討する必要がある(推奨クラスIIa,エビデンスレベルC) 877). c. 術式の選択と予後

冠動脈の経皮的カテーテル治療は有用であり,バルーン形成術やステント留置術が報告されている.カテーテル治療ができない例には外科手術の適応を検討する.外科手術としては冠動脈バイパス手術や冠動脈入口部パッチ形成術などが報告されている877–883).ASO術後の冠動脈狭窄に対する再侵襲的治療の経験は限られており,長期的予後は現在のところ不明である.

8.2.4 術後不整脈

ASO術後遠隔期の有意な心房不整脈は5%前後にみられ884, 885),複雑な心房内手術操作が加わる心房内血流転換術に比べ発生率が低い883, 886, 887).本邦における多施設共同研究(1976~1995年に手術し1年以上生存した624例)では884),完全房室ブロック,洞機能不全を含む徐脈性不整脈,上室頻拍,心房細動,心室頻拍など多彩な不整脈が9.6%に認められている.術後不整脈が遠隔期死亡や罹患率に関連すること,心室中隔欠損の合併は遠隔期の不整脈発生,特に完全房室ブロックの危険因子であること,不整脈発生例の半数では遠隔期に進行することが報告されている.診断,管理と侵襲的治療の適応については第2章の

「3.3 薬物治療」と「3.4 非薬物治療」に準ずる.

9 修正大血管転位

修正大血管転位は心室中隔欠損(VSD),肺動脈弁狭窄など他の心内奇形を合併することが多く,三尖弁置換術または心外導管修復兼VSD閉鎖術が行われることが多い.機能的修復術後は体心室右室機能不全,三尖弁閉鎖不全が年齢とともに増悪し,経年的に再手術率が高くなる.しかし,解剖学的修復術後で動脈スイッチ手術を併用した場合は再手術率が低い.完全房室ブロックや頻脈性不整脈を認めることも多い.

9.1 解剖学的特徴

修正大血管転位では心房–心室結合が不一致である.すなわち,右房は解剖学的左室とつながっており,左房は解剖学的右室とつながっている.心室–大血管関係も不一致で,左室から肺動脈につらなり,右室から大動脈が出ている.この組み合わせによって血行動態的には修正されることになるため,「修正大血管転位」(congenital corrected transposition of the great arteries: ccTGA)と呼ぶ.

形態学的にもっとも特徴的なのは,解剖学的左室から出る肺動脈が大動脈の後方にあり,両房室弁に深く楔入しており,肺動脈と僧帽弁との間に線維性連続があることである.これに対して,大動脈は前方に位置し,流出路に漏斗部がある.血行動態的には修正されているが,しばしば合併心疾患が存在するため,治療的介入が必要となることが多い.

合併疾患として多いのは,VSDが60~80%,肺動脈弁狭窄・閉鎖が30~50%,房室弁(とくに左側三尖弁)の異常が14~56%である83, 888, 889).肺動脈弁狭窄は弁性狭窄または弁下狭窄である.弁下狭窄では心室膜様部からの瘤状物や房室弁からの線維性組織が狭窄を形成していることがあるので,注意を要する.肺動脈弁閉鎖の場合は,ほとんどの症例で前方の大動脈はVSD上に騎乗し,VSDの大きさによって,大動脈弁下狭窄を形成する.

房室弁の異常で多いのは三尖弁のEbstein病様変化と房室弁のstraddling(騎乗)であり,三尖弁と僧帽弁の両者に解剖学的異常が認められる.心房心室の並列異常に付随して伝導路の走行異常がみられる.このため房室ブロックが生じやすく,前方房室結節と後方房室結節の間にslingが