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p.81 抽出テキスト

8.2.2 右室流出路狭窄,肺動脈狭窄

a. 発生率と発生機序

ASO術後の右室流出路狭窄と肺動脈狭窄(PS)の発生率は3~30%で,比較的多く認められる術後続発症である822–836, 861–865).狭窄部位としては,肺動脈弁および弁下,吻合部(弁上部),主肺動脈,左右末梢肺動脈で,単独または複合的に発生する.狭窄の発生原因としては,手術による肺動脈前方移動(Lecompte法)に起因する大動脈の後方からの圧迫と左右肺動脈の過伸展,肺動脈再建に用いるパッチの肥厚・退縮,肺動脈弁輪部と吻合部の成長障害,小口径の旧大動脈弁などが考えられている.ASOにおけるPSはある程度不可避な合併症であり,その発生率は経年的に増加し,狭窄の程度も進行することが知られている.多施設共同研究によると,新生児ASO術後遠隔期の右心系狭窄に対する外科的あるいは経皮的再治療の施行率は12%で,累積回避率は術後1年で94%,10年で83%と報告されている865). b. 外来受診と侵襲的治療の適応

臨床症状の確認,心電図,胸部X線写真,心エコー法などにより定期的に経過観察を行う.通常の右室流出路狭窄は右室の代償性肥大により比較的長期にわたって無症状に経過し,右心機能も正常に維持されていることが多い.一側PS例では有意の右室圧上昇がみられないことがある.軽症例では運動耐容能や心機能は正常であるが,重症例では比較的早期に有意の心拡大や右室機能低下,心室期外収縮が出現する可能性がある.動悸,労作時呼吸困難,肝腫大などの右室流出路狭窄による症状出現に留意しつつ,心エコー検査による右室機能,運動負荷試験,肺血流シンチグラフィによる左右肺動脈血流分布の評価が必要である866).

軽度の右室流出路狭窄で右室拡大がない無症状例では, 1年ごとの定期検査を検討する(推奨クラスI,エビデンスレベルC).中等度の右室流出路狭窄で右室拡大を認める例は中等度リスク群であり,6~12ヵ月ごとの心エコーなどの心機能評価を検討する(推奨クラスI,エビデンスレベルC).右室流出路狭窄や右室拡大がなくても安静時および運動誘発性の期外収縮を認める例では,6~12ヵ月ごとの右室機能評価を検討する(「8.2.4 術後不整脈」を参照).高度の右室流出路狭窄(圧較差≧50 mmHgあるいは右室圧/左室圧≧0.7)は侵襲的治療の適応となる(推奨クラスI,エビデンスレベルC).高度の右室流出路狭窄でなくても,妊娠を希望する症例,より高度の運動を希望する症例,高度の肺動脈弁逆流を伴う症例では手術を考慮してもよい.右室流出路に対する再侵襲的治療前には冠動脈の評価が必要である(推奨クラスIIa,エビデンスレベルC).

c. 侵襲的治療と予後

狭窄の外科的解除法としてはパッチによる肺動脈拡大が行われ,狭小弁輪例に対しては弁輪拡大が適用され,PS再発率は低い(推奨クラスIIa,エビデンスレベルB)

824, 861, 862).

一方,経皮的バルーン形成術の有効率は外科治療より低いが,低侵襲で繰り返し行えるという利点がある(推奨クラスIIa,エビデンスレベルB).バルーン形成術後の狭窄病変部は身体発育に応じて成長することが報告されている867–869).Lecompte法による大動脈スイッチ手術後のPSは,大動脈前方に広範囲に癒着していることが多く,経皮的バルーン形成術により血管壁の断裂が癒着した大動脈方向に伸展した場合に医原性大動脈肺動脈窓を形成することがあるので,注意が必要である.造影CTにより,狭窄の発生機序や重症度の評価,形態学的評価を行うことができる.

ステント留置術とバルーン形成術の比較では870),狭窄部拡大率,圧較差減少率,右室/大動脈圧比低下率はステント使用例が良好であったと報告されている(レベルC).ステント留置術の適応は本手術の特殊性に鑑み注意が必要になる.狭窄が大動脈壁に沿って湾曲している病変では,大動脈の圧迫によるステント断裂のリスクが高くなる.また,ステントによる冠動脈圧迫を回避するため,事前に移植冠動脈と予想されるステント位置を評価することが必要である.造影CTによる狭窄部位と形態の評価が有用である(レベルC).

8.2.3 冠動脈閉塞,冠動脈狭窄

a. 発生率と発生機序

ASO術後例に対する冠動脈移植は繊細かつ難易度の高い手技であり,冠動脈屈曲や冠動脈入口部狭窄による心筋虚血は術後早期のみならず遠隔期成績にも重大な影響を及ぼす.近年,ASO術後遠隔期の冠動脈閉塞や狭窄が多数報告されている.急性期死亡を除く冠動脈関連の死亡時期は,術後1年以内が多い871).ASO術後遠隔期に冠動脈造影あるいは大動脈基部造影を行った報告では,冠動脈病変は3.6~17.4%に認めるとされている824, 826, 829, 847, 872).しかし,心筋虚血の徴候がある群では40%に冠動脈狭窄病変がみられ,心筋虚血の徴候がない群でも7%に狭窄病変がみられたとする報告がある829).冠動脈狭窄の形態は長期遠隔期でも変化することが知られ873),症状のない例でも術後遠隔期の血管内超音波検査で89%の冠動脈に種々の程度の狭窄変化がみられたと報告されている874).

冠動脈狭窄の発生機序としては,冠動脈ボタン吻合部の屈曲,冠動脈口または主幹部の内膜損傷が原因となる.冠