p.79 抽出テキスト
RV→PA血流路障害の狭窄のうち,心室内トンネルに関連したRV-PA狭窄は右室切開や右室筋切除による対処が必要となる.DORVの肺動脈弁逆流に対する弁置換の報告はまだきわめて限定的だが,今後はFallot四徴修復術後に準じて注意喚起されると予想される.先行修復でREV手術が採用された場合には,肺動脈弁位に人工弁を留置することが技術的に難しいと懸念する意見がある.心外導管機能不全(狭窄または弁逆流)には導管置換で対処する.動脈スイッチ後の肺動脈狭窄は,その性質(弁下,弁性,弁上)に即して適切な拡大術を採用する.冠動脈が右室流出路を横切って走行する場合は術式に工夫が必要となることがある. 心室内バッフル関連の障害としては,第1にバッフル縫着に関連した遺残短絡がある.長い縫合線からのリークのみならず,右室の肉柱形成(trabeculation)に隠れた短絡遺残も起こりうるので,その位置同定は必ずしも容易でない.第2に右室内バッフルが長く複雑な経路の場合,三尖弁の弁尖や弁下組織がバッフルに固着して可動性が低下し,三尖弁逆流が進行することがある.第3は心室内バッフルの細菌感染で,治療には難渋する. 7.4 術後の侵襲的治療 DORVの再手術に関する報告は少なく,明確な基準もない.対象群の多様性により,再手術率は13%から54%までと報告により幅がある792, 794, 795, 805, 807, 808).LV-Ao狭窄については,収縮期圧較差が50 mmHg前後で手術が検討される(推奨クラスIIa,エビデンスレベルC) 804).狭窄解除には経三尖弁的のみならず,経右室切開,経大動脈弁による狭窄病変への直逹が適正となることが多い. これを含め,再手術の潜在的可能性は,おおむね心室間交通孔の位置に基づいたDORVのタイプに関連している. SA型では,前記の2のRV-PA部の狭窄・逆流,3の遺残短絡に対する再手術が主となる.1の狭窄は高率ではない. DC型では,SA型とSP型の間で移行形が存在し,バッフルのデザインも画一的ではないため,1,2の狭窄進行に留意する.SP型は,動脈スイッチ術後では,1のLV-Ao狭窄については有利である.一方で,RV-PA狭窄の再手術に関しては,DORVに特徴的な冠動脈走行異常ゆえに右室流出路切開が大きく制限されることがある786).心室内トンネルによる修復(川島法)後では,トンネルは比較的長く,三尖弁に接しているので,1と3に留意する必要がある.これら以外の術式については,それぞれの術式の特徴をよく理解し,潜在要因まで含めた的確な診断が必要となる.NC型で二心室修復を耐術した場合には,1~3のすべてにおいて再手術となる可能性が高い.特に左室流出 路狭窄に対する再手術は有意に多く792, 809),技術的にも困難なため十分な解除効果が得られないこともある.三尖弁逆流に対しては人工弁置換を余儀なくされることが多い.また,大きく非可動性の流出路バッフルが心室の収縮能や容積効率に与える機能的影響も無視できない. 再手術以外の侵襲的治療に関しては未だ十分な知見が集積していない.他のより単純な疾患で行われているカテーテル治療手技を,各症例に即して適用している現況である.例えば,右室流出路狭窄や肺動脈弁逆流に対するカテーテル治療は,Fallot四徴修復術や他の術式810)の術後に準じて可能性を探る.不整脈に対する知見もFallot四徴とまとめて論じられることが多く811, 812),それ以外は症例報告813, 814)が散見される.左室から大動脈への心内トンネル狭窄に対するステント留置815)はきわめて珍しい. 8 完全大血管転位 8.1 心房内血流転換術 完全大血管転位に対する心房内血流転換術(心房スイッチ手術)は,1970年頃より自己組織を用いたSenning手術,人工材料を用いたMustard手術が行われたが,1980年代からは心機能的に有利でより生理的な動脈スイッチ手術が行われることが多くなった.最近では左室圧低下や肺動脈弁異常がある例,冠動脈移植が困難な例を除いて行われることはなく,修正大血管転位におけるダブルスイッチ術の手法として行われる.導管型(Rastelli)手術については「12. 心外導管を用いた手術」に譲る. 8.1.1 術後(体)心室不全 術後の合併症としてもっとも重要なのが,体心室としての右室機能低下や三尖弁閉鎖不全であり,加齢とともに増悪する(不整脈については次項参照).修正大血管転位ほど多くはない重度の三尖弁閉鎖不全に対しては,三尖弁形成術や人工弁置換術が行われる816).右室心機能低下に対して左室心機能低下と同様にβ 遮断薬やACE阻害薬などの血管拡張薬が使用されるが,体心室右室に対する効果は不明である817, 818).心機能低下が高度で,循環動態の維持にカテコラミンの投与を要する状態であれば,補助人工心臓や心臓移植の適応を考慮する(「9. 修正大血管転移」を参照).右室と左室の収縮同期不全がみられる場合は,