p.78 抽出テキスト
流れてTGA類似の血行動態となる.NC型ではRV内で相当程度に混合される. 一方,大血管配置がAo前・PA後の場合には,Aoは心室中隔から離れ,SP型あるいはNC型となる.これらを,「TGA 型DORV」や「false Taussig-Bing 異常」(original Taussig-Bing はAo 右・PA 左side-by-side でSP 型のDORV)と呼ぶことがあり,概念的混乱の一因となっている. Ao-PA間の隔壁(動脈中隔,流出路中隔)形成時の偏位も主要な血行動態的要因である.偏位がなければAo弁・PA弁ともに狭小でなく,肺血流増加型となる.PA側へ有意に偏位した場合(肺動脈狭窄合併,いわゆるFallot四徴型)は肺血流減少型,逆にAo側へ偏位していればAo弁・弁下狭窄や大動脈縮窄合併型788)となる. その他の合併構造異常として,多発性心室中隔欠損,左室低形成,僧帽弁狭窄,房室弁straddling/overriding (騎乗),心房中隔欠損などが挙げられる789–792).これらは互いに連関してDORVの二心室修復を困難にする要因となりうる. 外科系統一データベースのための分類793, 794)では,修復術式を主眼とする観点から,心室中隔欠損に類似した型, Fallot四徴に類似した型,完全TGAに類似した型,その他,に大別する. 7.2 二心室修復 7.2.1 術式 DORVの解剖学的二心室修復は,LV→心室間交通孔→RV内トンネル→Aoの通路作製と,RV→PAの血流路確保との,2点に集約される.LV→Aoに際して,狭窄素因を取り除くために心室間交通孔の拡大または流出路中隔の一部切除を行うことがあり,その割合を45~63%とする報告がある790, 792, 793).RV→PAについては,必要に応じてRV切開やPA弁輪切開,さらには心外導管を用いた再建やLecompte法によるPAの前方転位再建を行う. SA型ではトンネルが比較的短くてすむ.DC型ではLV→AoとRV→PAの両血流路のバランスに配慮が必要となる.NC型では心室内トンネルが有意に長く,三尖弁支持組織や他の心内構造物が障害となるので,バッフル設置自体が難しい.術後の続発症と併せて,Fontan型の治療戦略を選択することも少なくない.SP型では肺動脈狭窄のない例すべてに動脈スイッチ手技を採用するチーム795)と,original Taussig-Bingに限っては心室内reroutingによる修復796)を推奨する一派がある.動脈スイッチ手技を併用すれば,到達経路を転換することでバッフルが短 くなり,心内手技が容易になる.本型に多い大動脈縮窄を合併して大動脈弁輪が潜在的に狭小な症例でも,動脈スイッチにより狭窄素因のない半月弁へ移行することができるというメリットもある.その他,Damus-Kaye-Stansel吻合の応用797)やréparation à l’étage ventriculaire(REV)手術798),half-turned truncal switch手術799)など,さまざまな工夫により肺動脈狭窄に対処したり心室内トンネル造設を効率化しようとする試みがある. 心房内血流転換術を用いて機能的二心室修復を行う術式800)は,近年では採用されない. 7.2.2 成績 二心室修復術の成績に関しては,DORVの型や仔細な形態診断のバリエーション,術式,手術年代など識別すべき項目が多く,実際には異種不均一な群の解析結果しか参照できないが,生存率は5年で87~88% 791, 801, 802),8年で81%との報告がある792). 7.3 術後の遠隔期予後 二心室修復術後に明らかな遺残症,続発症がなく心機能が標準的な状態であれば,運動制限は必要ない.年1回程度の経過観察で標準的な心エコー検査や心電図検査を実施する.心外導管や心室内バッフルに対する抗凝固薬と予防的抗菌薬の投与については,一般的な指針に従う. 続発病変の進行が懸念される症例では,経過観察の頻度を増やし,ホルター心電図検査や運動耐容能試験,心臓MRI検査などの追加を考慮する.日本循環器学会のガイドライン803)に示されるように,突然死の主因は心室不整脈であることから,これに関連しうる心室肥大,流出路圧較差,心筋虚血,半月弁逆流,不整脈出現の程度を参考にして,生活や運動の指導方針を決める. 留意すべき遺残症・続発症は,1LV→Ao血流路障害, 2RV→PA血流路障害,3心室内バッフル関連の障害,に大別される. LV→Ao血流路障害は狭窄が主で,発生率は0~10%と報告されている789, 792, 794, 801, 804–806)が,観察期間制限のため過小評価されている可能性がある.機序としては,トンネル内に形成される内膜肥厚や線維性組織増生,心室間交通孔の狭小化などがある.有意の大動脈弁下狭窄が長期間に及ぶと,狭窄部で発生する乱流がAo弁尖の肥厚・変性を惹起し,閉鎖不全をきたす.先行修復時に動脈スイッチ手術やDamus-Kaye-Stansel吻合などを併用していた場合にも,大動脈弁逆流に留意する必要がある.