p.75 抽出テキスト
菌性心内膜炎などがみられる.このほか,大動脈拡張を認めることがある(第2章の「5. aortopathy」を参照). 6.3.1 肺動脈弁閉鎖不全 表36 Fallot 四徴術後遠隔期の肺動脈弁閉鎖不全に対する 肺動脈弁置換術の推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル 右心不全症状がある例に行う. I B 運動耐容能低下例に行う. I B中等度以上の右室拡張を認める例に考慮する. IIa B 右室機能不全を認める例に考慮する. IIa B進行性で有症状の心房不整脈または心室不整脈がある例に考慮する. IIa C 心内修復時に肺動脈弁切開や肺動脈弁輪切開を施行すると,程度の差はあるが肺動脈弁閉鎖不全がみられることが多い.術後5~10年で40~85%の症例に中等度以上の肺動脈弁閉鎖不全が認められるとされるが729),カラーフローマッピングやパルスドプラ法で評価すれば,一部を除いて大半の症例で閉鎖不全がみられる.また,閉鎖不全による右室拡大や右室機能低下については,小児期後期あるいは思春期に心内修復術を受けた患者に問題が多い.このほか,大きな右室切開や広範囲の肺動脈弁輪拡大術が施行された場合も,閉鎖不全による影響が大きくなる.肺動脈弁閉鎖不全により右室拡張が進行すると,容量負荷が過大となり収縮不全が生じる.小児期・青年期は無症状で経過することが多いが,術後20年を経過した成人期には運動耐容能の低下や心不全,心室頻拍などが出現し,死亡に至ることもある730–732). Fallot四徴の心内修復術後で成人期に施行した肺動脈弁置換術(pulmonary valve replacement: PVR)の手術死亡率は低い733–736).しかし,PVRで一般に使用される生体弁は,数年から10年程度で弁の石灰化による狭窄や閉鎖不全を生じることが多く,再手術が必要になる.英国でPVRを施行した2733例では,10年で8%,15年で11%に再手術を行ったとされている737).適切な時期にPVRを施行すれば右室容積は減少し,右室機能の改善が得られる733, 734, 738–740).NYHA心機能分類は改善されるが733, 741),運動耐容能の客観的改善については未だ明確ではない736, 742–745).心室頻拍や突然死のリスクはPVRのみでは低下しないとする報告もある746–748). 右室容積や右室機能の計測,肺動脈弁逆流の定量的評価,心筋障害などの検査の手段としてはMRIが優れている749–754).右室拡張末期容積が150~170 mL/m 2未満または右室収縮末期容積が82~90 mL/m 2未満であれば, PVR後に右室容積は正常化すると報告されている752, 755, 756).CTは空間解像能が高くMRIと同様の計測も可能で,人工ペースメーカやICDを使用している患者にも施行可能であるが,放射線被ばくと造影剤使用が欠点である757, 758). 現時点における肺動脈弁閉鎖不全に対するPVRの適応は,重度の肺動脈弁逆流があり,かつ以下1~3のいずれかを認める場合と考えられる.すなわち,1右心不全症状や運動耐容能の低下(推奨クラスI,エビデンスレベルB) 563, 759, 760),2中等度以上の右室拡張や右室機能不全(推奨クラスIIa,エビデンスレベルB) 563, 759, 760),3進行性で有症状の心房不整脈または心室不整脈がある(推奨クラスIIa,エビデンスレベルC) 563, 759, 760).PVRの至適時期についてはさまざまな意見があり,未だ統一見解は得られていない.さらには左心機能についても注目されており,死亡の有意な危険因子としての左室機能低下が注目されている340).右室流出路に心外導管を用いた手術において,海外では経皮的PVRが臨床導入されて良好な成績を収めている743, 761).これは当初もともとの手術が右室-肺動脈導管の症例,すなわちRastelli手術の術後遠隔期をターゲットとしていたが,Fallot四徴手術のように導管を使っていない症例を半数以上含む774例(Sapien植込み)において成功率97.4%,14例で緊急手術に移行したとの報告762)もある.Fallot四徴術後例の肺動脈弁閉鎖不全に対する今後の発展が期待される. 6.3.2 右室流出路狭窄 心内修復後に重度の残存狭窄がみられる症例では,右室の圧負荷によって右室心筋の線維化が進行する.また,狭窄解除によって右室機能が改善されると報告されている763).したがって,右室収縮期圧が左室収縮期圧の70%を超えるか,右室流出路の圧較差が50~60 mmHg以上であれば,外科手術やカテーテル治療による狭窄解除が推奨される(推奨クラスIIa,エビデンスレベルC) 563, 759).狭窄解除の基準については,右室収縮期圧が左室収縮期圧の1/2 ないし2/3以上か,狭窄部の圧較差が20~30 mmHg以上を適応とする報告もある764). 片側性の末梢肺動脈狭窄は心内修復術後にしばしば認められる.この場合はカテーテル治療を実施することが少なくないが,肺血流シンチグラフィによる患側/健側肺血