p.72 抽出テキスト
成により呼吸障害も認めるが(新生児型),呼吸障害を含めた心不全症状の多くは成人で出現する(成人型) 707, 708). 5.2 修復手術 新生児期に発症する重症例でも,右室機能が保たれている場合には両心室治療も考慮されるが,これらの重症例の多くでは右室機能が期待できず,単心室としての治療戦略がとられ,最終手術はFontan手術となる.また,拡大した右室により左室機能が制限されるが,このような症例に対し拡大した右室の縫縮術を併用することで左心機能の良好な改善を認めたという報告もある710). 5.2.1 軽症,中等症例 小児期以降に症状が出現するような軽症から中等症の症例では,三尖弁の病変が軽度で右室容積が保たれていることが多い.しかしながら,合併する心房中隔欠損や不整脈の存在に伴う症状が認められる場合には,右房化右室の縫縮と三尖弁輪形成術または三尖弁置換術が行われることが多い103, 711, 712).特に前尖が十分に大きい場合は,Carpentier法に代表される前尖を用いた弁形成手術が行われ,良好な成績が得られている103).三尖弁置換術の遠隔期予後は満足すべきものではない711)とされたが,これは右心不全が成立した後の手術であり,適応に問題があった可能性がある.成人期の三尖弁置換術においては有効性に統計上の有意差はでておらず,議論の分かれるところである48). 外科治療に関してはさまざま術式が考案されたが,1993年に発表されたCone手術は外科手術成績の向上や適応拡大に大きく寄与した104).この手術においては,各弁尖の大きさが十分でない場合でも形成術の適応範囲が拡大し,現在では良好な成績とともに三尖弁形成の第一選択の術式となっている713).最近の論文においては,Cone手術の登場前後での比較がなされるほどであり,Ebstein病の外科治療におけるCone手術の寄与は大きい105). 5.2.2 重症例 重症例(重度の右心不全と形成機能的右室)においては三尖弁形成術と両方向性Glenn手術を組み合わせた手術も行われる714, 715).術前に心房粗細動を合併する症例では,不整脈手術も同時に行うことがある.近年ではCone手術の成功率が高まり,重度の右心不全と三尖弁閉鎖不全の症例に関しては,上記の症状がみられなくても,より早期に(成人期になる前に)外科手術を考慮することで,心房中隔欠損や卵円孔を合併した症例での奇異性塞栓症予防や右心機能保持が可能とされており,手術適応の拡大が推奨されている105). 以下の症例に対しては,三尖弁形成術または三尖弁置換術を行い,必要に応じて心房中隔欠損閉鎖術を併せて行う(推奨クラスI,エビデンスレベルC):有症状または運動耐容能が低下した例,チアノーゼを呈する例,奇異性血栓の既往例,胸部X線写真にて進行する心拡大を認める例,進行性の右室拡大または右室収縮能低下を認める例. 以下の症例に対しては,CHDの経験のある外科医により不整脈手術を同時施行する(推奨クラスI,エビデンスレベルC):カテーテル治療不能な(WPW症候群によるものを除いた)上室頻拍,心室頻拍を有する例,カテーテル治療不能な早期興奮症候群. 以下の症例には外科的再手術が必要である(推奨クラスI,エビデンスレベルC):有症状または運動耐容能が低下した例,あるいはNYHA心機能分類III ~IV度の例,術後進行性の右室拡大と右室収縮力低下に伴う重度三尖弁閉鎖不全・上室頻拍・心室頻拍が出現または増悪した例,狭窄と閉鎖不全を伴う生体弁機能不全例,平均圧較差12 ~15 mmHg以上の生体弁狭窄例,以上の狭窄基準以外でも有症状または運動耐容能が低下した例. 成人期の術式にはCarpentier法,弁置換術,Cone手術などが選択される(推奨クラスI,エビデンスレベルC).現在では形成術はCone手術が第一選択であり,今後は術後の再手術の減少が期待できる713).術後は運動耐容能が改善され,上室不整脈の頻度が著明に減少する.とくに心房中隔欠損合併例ではチアノーゼが改善される.年齢,性別,心拡大の程度が術後運動耐容能に影響する715).小児例においては弁形成術のほうが弁置換術よりも遠隔期予後が良好であるが,成人例においては弁形成術と弁置換術の遠隔期予後に関する有意差は報告されていない. 術後患者は三尖弁機能,人工弁機能の観察が必要である.外科手術により生じた切開線に伴う瘢痕が心房不整脈の新たな起源となりうる.心室不整脈や心室機能についても,生涯にわたる経過観察が必要である. 5.3 術後の遠隔期予後 三尖弁形成術後や三尖弁置換術後の生命予後は良好で, 10~15年生存率は約90%,死亡原因は心不全,不整脈,突然死となっている103, 711, 712).術後のQOLは有意に改善されるが716, 717),Cone手術登場以前には三尖弁に対する再手術率が40%以上であった712).また,生体弁と機械弁との間で耐用年数に有意差を認めていない717, 718)が,人工弁置換術後に合併症(抗凝固薬による出血,血栓塞栓症,感染性心内膜炎)が多い傾向にある719).議論が分かれるところ