p.71 抽出テキスト
が無効な場合には外科手術を行う563)(推奨クラスI).また,無症状高度肺動脈弁性狭窄において,三尖弁逆流の増悪,右室機能低下の進行,心房中隔欠損・心室中隔欠損合併例における右左短絡に対しても,バルーン弁形成術が無効な場合には外科手術を行う563)(推奨クラスI). 4.2 単独肺動脈弁性狭窄術後の肺動脈弁逆流 表34 単独肺動脈弁性狭窄の術後遠隔期における肺動脈弁 逆流の治療の推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル 症状を有する単独肺動脈弁性狭窄に対する術後の中等度以上の肺動脈弁逆流で,右室拡大,右室機能不全を伴う症例に対し肺動脈弁置換術を行う. I C無症状の単独肺動脈弁性狭窄に対する術後の中等度以上の肺動脈弁逆流で,経年的に右室拡大,右室機能不全が進行する症例に対し肺動脈弁置換術を考慮してもよい. IIb C (日本循環器学会ほか. 2020 666),Stout KK, et al. 2019 3),Baumgartner H, et al. 2021 563) より作表) 単独の肺動脈弁性狭窄に対する介入術後には,肺動脈弁逆流,右室容積,右室機能,運動耐容能に留意した経過観察が必要である.術後肺動脈弁逆流に対する右室拡大や右室機能の推移は,単独肺動脈弁性狭窄とFallot四徴とで同一ではない700, 701)ため,再介入の基準となる右室容積は明確ではなく,現時点でFallot四徴での基準値を用いることは推奨されない3).中等度以上の肺動脈弁逆流,右室拡大に加えて息切れ,胸痛,運動耐容能低下など肺動脈弁逆流に関連する症状がある場合には,弁置換術を行う(推奨クラスI).中等度以上の肺動脈弁逆流がある無症状例で経過観察中に右室拡大や右室機能不全の進行,運動耐容能の進行性の低下がある場合は,弁置換術を考慮してもよい(推奨クラスIIb). 4.3 肺動脈弁上狭窄,分枝肺動脈狭窄 肺動脈弁上狭窄は症候群性(Noonan症候群,Williams症候群,Alagille症候群)であるか,または右室流出路狭窄に合併する.末梢肺動脈狭窄の心エコー法による評価は困難であり,MRI,CTによる狭窄部位の形態評価,MRIや肺血流シンチグラフィによる還流評価を行う.明確な治療適応基準を示すエビデンスに乏しく,主に症状,肺循環障害の範囲,右室収縮期圧を指標にして,総合的に介入方針を決定する3).血管径狭小率>50%,右室収縮期圧>50 mmHg,かつ/ または肺還流異常が存在する場合には,症状によらず修復を考慮する(推奨クラスIIa) 1).修復方法として,バルーン 拡張術702),ステント留置術,外科的肺動脈形成術がある. 4.4 右室流出路狭窄,右室二腔 右室流出路狭窄は通常は心室中隔欠損,Fallot四徴,および肺動脈弁性狭窄(狭窄に対する代償性右室肥大)によって生じ,動的狭窄を呈する.右室二腔は漏斗部下の異常筋束の肥厚により進行性の狭窄703)をきたし,70~80%が心室中隔欠損を合併する704). 重症度評価は肺動脈弁性狭窄に準じる.圧較差の推定は心エコー法で困難な場合が多いため,カテーテルなどによる圧較差の確認により診断する.筋束の異常の検索には心臓MRI,心臓CTが有用である.治療は外科的な筋肉の切除と心室中隔欠損の閉鎖705)で,術後の長期予後は良好である703).心内膜肥厚が著明であるため,カテーテル治療は無効である1).中等度以上の右室流出路狭窄があり,心不全,チアノーゼ,運動耐容能低下がある場合は外科的修復術を行う(推奨クラスI). 5 Ebstein病 Ebstein病はCHD全体の0.5%を占める比較的まれな疾患で,1866年にWilhelm Ebsteinによって最初に報告された706).この疾患は新生児期に発症する重症例から生涯無症状で経過する症例まで,バリエーションはさまざまである707, 708). 5.1 解剖学的特徴 右室壁形成過程の異常により生じるさまざまな病態を呈し,三尖弁閉鎖不全を特徴とするが,右室病として捉えることが重要である.すなわち,右室の発育の程度により,その病態と重症度が決定される.三尖弁中隔尖と後尖の右室内への下方偏位,偏位部分の右房化右室の菲薄化,三尖弁閉鎖不全,右室狭小化が主な病態で,心房位右左短絡を伴うことが多い.左室心筋異常を合併することもあり,その場合は予後規定要因となる. 右房化右室が大きく,これによる前壁の可動制限が強いほど,右室機能は低下し,三尖弁閉鎖不全も増大して重症となる709).重症例では新生児期より症状を認め,肺低形