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p.69 抽出テキスト

3.2.2 肺高血圧

心疾患合併のないTAPVCでは,肺動脈や肺静脈の中膜平滑筋増殖,および内膜線維性肥厚を観察すると,前者は術前のPHと相関する可逆的病変であり,後者は臨床的に重大なものではないとされており,PVOを発症しなければ術後PHは改善されると報告されている689).リンパ管拡張,肺静脈閉鎖やび漫性肺静脈狭窄690)を伴う症例では術後PHが残存し,遠隔期予後は不良である.PVOに伴うPHは右室/左室圧比が0.5を超えると生命予後に影響するとの報告もあるが691),肺血管拡張薬はPVOに伴うPHに対する有効性が確立されておらず,むしろ肺うっ血をきたす可能性もあるため,使用には注意が必要である.PVOへの治療介入が不可能な症例においては,肺移植または心肺移植の適応が検討されることもある(推奨クラスI,エビデンスレベルC).

3.2.3 不整脈

TAPVCの手術は心房切開線が右心房,左心房ともに大きく存在するため,上室頻拍が発生することがあるが,頻脈性不整脈の発生は比較的まれである692).一方,TAPVCの術後11年経過した時点で,約3割の症例に運動負荷時の洞機能不全を認めたとの報告もあるため693),遠隔期においても12誘導心電図,ホルター心電図,運動負荷心電図によって不整脈を検索することが望ましい(推奨クラスIIa,エビデンスレベルC).

4 肺動脈狭窄,右室流出路狭窄

肺動脈狭窄(PS)は,1肺動脈弁性狭窄,2肺動脈弁上狭窄,3肺動脈弁下狭窄(右室流出路狭窄)に分類され,全CHDの8%で,そのうち8~9割を弁性狭窄が占める.孤立性PSに加え,その他のCHDとの合併も多い.小児期にカテーテル的・外科的治療を要した例から無症状の成人例までさまざまである.

PSは狭窄部位にかかわらず,重度狭窄が長期に及ぶと右室線維化をきたし,右室拡張期圧の上昇とともに右房圧が上昇する.時期を逸すると生命予後が悪化する591)ため,右心障害が不可逆的になる前の適切な時期にカテーテル的または外科的治療を要する.また,術後遠隔期の逆流も問題となる.肺動脈異形成にはNoonan症候群,肺動脈弁上狭窄にはWilliams症候群,Alagille症候群が知られており,症候群として総合的管理を要する.本項ではPSとして肺動脈弁性狭窄,肺動脈弁上狭窄,

肺動脈弁下狭窄に対する術後遠隔期の管理と侵襲的治療について述べる.Fallot四徴,心室中隔欠損のない肺動脈閉鎖についてはそれぞれの項(「6. Fallot四徴」,「12. 心外導管を用いた手術」)を参照のこと.

4.1 肺動脈弁性狭窄

小児期の弁形成術後の残存狭窄,再狭窄,未治療の成人期の肺動脈弁性狭窄がある.重度肺動脈弁性狭窄では小児期にバルーン形成術または外科的形成術が行われ,総じて予後は良好であるが,バルーン形成術後の9%で主に狭窄に対して再介入を要する694).軽度肺動脈弁性狭窄は無治療で予後は良好である.中等度肺動脈弁性狭窄の経過はさまざまであり,一般的に生命予後は良好だが,遠隔期に狭窄の進行や心室不整脈のため治療を考慮しなければならないことがある695).

4.1.1 診断

診断は肺動脈弁の肥厚,ドーミングを伴う開放制限,加速した弁通過血流を確認することで行う.成人では経胸壁心エコー法で弁上狭窄との鑑別が困難な場合も少なくない.経食道心エコー法,心臓CT,心臓MRIによる肺動脈弁の観察,心臓カテーテル検査による狭窄部位の診断が必要となる.重症度評価として,心エコードプラ法による狭窄部の最大圧較差<36 mmHg(最大血流速度:Vmax<3.0 m/s)であれば軽症,36~64 mmHg(Vmax3.0~4.0 m/s)で中等症,>64 mmHg(Vmax >4.0 m/s)で重症と分類する3, 666).心エコー法による計測では三尖弁逆流圧較差を併せて評価し,収縮期の右室圧が上昇していることを確認する.

4.1.2 カテーテル治療と外科治療

表33 肺動脈弁性狭窄の術後遠隔期における再狭窄に対する侵襲的治療の推奨とエビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

重度肺動脈弁性狭窄以下を有する症例に対しバルーン形成術を行う.・ 心不全症状・ 右左短絡によるチアノーゼ・ 運動耐容能低下I B