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p.66 抽出テキスト

2.3.2 肺高血圧

1歳までの心内修復術により高肺血流が是正された場合には,二次性肺高血圧の遠隔期の進行は予防されるが, Eisenmenger症候群の45%に21トリソミーを合併しており,本疾患に多くみられる21トリソミーでは不可逆的な肺血管性肺高血圧症が出現しやすいとの報告もある649). ACHDについての大規模研究では,肺高血圧を伴う場合の死亡率は肺高血圧を伴わない場合の約4倍であることが報告されている650).

2.3.3 妊娠

AVSDの妊婦において,23%にNYHA心機能分類の悪化を認め,残存する房室弁逆流の悪化を17%に,不整脈の発症を19%に認めたという報告があり651),体心室機能不全や高度の房室弁逆流を認める場合には,妊娠前の心機能評価を行い再手術の必要性を検討する必要がある.妊娠中であれば,場合によっては妊娠を中断する選択肢もでてくる.第3章の「3. 妊娠,出産」を参照のこと.

2.4 術後の再侵襲的治療

表31 房室中隔欠損の術後遠隔期における再手術の推奨とエビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

遺残短絡肺体血流比(Qp/Qs)≧1.5 で,肺動脈圧が体血圧の50%未満,肺血管抵抗が体血管抵抗の1/3 未満の場合に行う. I C肺体血流比(Qp/Qs)≧1.5 であれば,肺動脈圧が体血圧の50%以上,肺血管抵抗が体血管抵抗の1/3 以上の両方,あるいはいずれか一方を認めたとしても考慮してもよい. IIb C肺動脈圧が体血圧の2/3 以上,肺血管抵抗が体血管抵抗の2/3 以上,または右左短絡を認める場合は手術を行うべきではない. III Harm C房室弁閉鎖不全房室弁逆流が中等度または高度で,房室弁逆流に起因する症状を認める場合,房室弁に対する手術を行う.その場合,可能であれば房室弁形成術を選択する. I C弁逆流に起因する症状を認めないが,左側房室弁逆流が中等度または高度で,左室収縮末期径(LVESD)≧45 mm,左室機能低下(LVEF <60%)の両方またはいずれか一方を認めた場合,他に左室機能低下の原因がないことを確認のうえ,房室弁に対する手術を行う. I B

左側房室弁逆流が中等度または高度で,左室容量負荷を認める場合,房室弁形成術が可能と判断されれば,手術を考慮する. IIa C

術後遠隔期に再手術を要する主な病態は,LAVVR,遺残短絡,左室流出路狭窄である.また,左側房室弁狭窄,右側房室弁逆流,洞機能不全や房室ブロックによる徐脈が手術適応になることもある.

初回手術後に再手術を必要とするのは15%前後で,再手術を複数回必要とする症例も少なくない.完全型では再手術回避率は10年後88~91%,20年後83~89%,30年後78%である652, 653).完全型以外でも10年後81~84%, 15年後78.6%,30年後75%であり654, 655),完全型と同等である.両タイプともに術後遠隔期における再手術介入の理由として最も多いのはLAVVR(66~77%)であり,続いて遺残短絡(10~19%),左室流出路狭窄(4~9%),徐脈(2.7~7%)であった656–660).

2.4.1 左側房室弁逆流

初回手術後患者の7~14%でLAVVRに対する再手術が行われている652, 656, 657, 661).元々AVSDの共通前尖・後尖は,正常の僧帽弁尖と比べて弁輪や弁尖の形態が異なることに加え,弁下組織の異常も伴い,初回手術で分割形成しても正常の僧帽弁機能は保てない.再介入となる危険因子として弁尖の異形成,裂隙の未閉鎖または再発661, 662),左室の小さいunbalanced AVSD,double orifice LAVV,初回手術後退院時のLAVVRが中等度以上663, 664),などが指摘されている.

小児期における再手術の時期に関して明確な基準はないが,LAVVRが中等度以上で逆流に起因する症状があれば手術を行う(推奨クラスI,エビデンスレベルC).成人期であれば後天性心疾患における僧帽弁閉鎖不全の手術適応時期を参考にする665, 666).また,欧州心臓病学会(ESC)の2010年ガイドライン157)とAHA/ACCの2018ガイドライン3)も参考にし,LAVVRが中等度以上で症状を認めなくても,左室の拡大や機能低下を認める場合は手術を行い(推奨クラスI,エビデンスレベルB),左室容量負荷を認め房室弁形成術が可能と判断すれば手術を考慮する(推奨クラスIIa,エビデンスレベルC).