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p.65 抽出テキスト

2 房室中隔欠損

以前は「心内膜床欠損」という名称で呼ばれていたが,現在では欧米での呼称に合わせて「房室中隔欠損」(AVSD)の名称で国内でも統一されている.出生児の約0.04~ 0.05%にみられるとされ,CHDの3~5%を占め,21トリソミーの約20%に合併する.右房と左室を隔てる房室中隔が欠損する一連の疾患群であり,完全型,不完全型,中間型に分類される644).不完全型は一次孔欠損型の心房中隔欠損としても分類されている.Fallot四徴や両大血管右室起始など他の複雑心疾患に合併することがある.また,心房内臓錯位症候群においては総肺静脈還流異常など多くの合併疾患を認める.これら複雑型と孤立型のAVSDで初回手術後死亡率に有意差はないが,複雑型は再手術の危険因子であるとの最近の報告もある645).

2.1 解剖学的特徴

正常心では左右に分離した房室結合が存在するが, AVSDでは共通房室結合をもつことにより生じる5葉の共通房室弁,左室流出路の前方偏位,心室中隔の流入部-心尖部間の短縮と心尖部-流出部間の延長,房室結節・His束・近位刺激伝導路の下方偏位が特徴であり,これらは完全型,不完全型,中間型に共通して存在する646).

完全型AVSDは,前後の共通弁尖と左右の側方弁尖で構成される5葉の共通房室弁が存在し,この共通弁尖が心室中隔の稜線上に付着しないために心房,心室の双方のレベルで欠損孔が生じる.Rastelliらは心室中隔上に位置する共通前尖の形態と腱索の付着部位によりA,B,Cの3タイプに分類している647).

不完全型AVSDでは,前後の共通弁尖がconnecting tongueで繋がることで房室弁口が左右2つに分かれ,またこの弁尖が心室中隔の稜線上に付着するため,心室間レベルでの短絡はない.左側房室弁には裂隙が存在する.

中間型は不完全型と同様に前後の共通弁尖がconnecting tongueで繋がって左右2 つの房室弁口に分かれているが,心室中隔の稜線上への付着が不十分なため心室間レベルの短絡が存在する.中間型の心室間交通はrestrictiveであることが多い.

左右心室の大きさに不均衡がある場合にunbalanced AVSDと分類されるが,二心室修復に適しない場合は単心室に分類するべきである. 2.2 心内修復術

完全型AVSDでは早期より肺高血圧を来すため,乳児期早期での治療が必要となる.低体重や複雑心疾患の合併例では先行して肺動脈絞扼を姑息術として行い,二期的に心内修復を行うことがある.完全型と中間型の心内修復術では共通房室弁の分割,心室間交通の閉鎖,左側房室弁の裂隙閉鎖,心房間交通(一次孔欠損)の閉鎖を行う.心室間交通にパッチを用いるtwo patch法に加え,近年パッチを用いないmodified one patch法が行われるようになり, 5~15年の中期遠隔期では死亡率や再手術回避率に差がないとの報告が多いが,今後は長期遠隔期での比較が待たれる648).

不完全型AVSDでは,左側房室弁の裂隙閉鎖と心房間交通(一次孔欠損)の閉鎖を行う.unbalanced AVSDで二心室修復に適しない形態の場合は,Fontan手術を目標とした段階的手術に向かう.

2.3 術後の管理

心内修復術後は生涯にわたる定期的な経過観察を行う.特に遺残短絡,房室弁機能障害,両心室機能障害,肺高血圧,左室流出路狭窄の出現に注意を要する.その他,左側房室弁狭窄の出現にも注意する必要があり,肺高血圧を認めた場合に精査すべき病態である.不整脈は年齢が増すにつれ多く発症する.さらに房室結節とHis束が通常より下方偏位しているという解剖学的特徴から,初期より房室伝導遅延を認めることがある.成長とともに房室伝導遅延が悪化する可能性も指摘されていることから,心電図とホルター心電図による房室伝導の定期的な評価が必要である.

2.3.1 運動制限

術後管理において心臓の状態に合わせた適切な生活規制がきわめて重要である.心内修復術後に有意な遺残病変を認めない症例では運動制限をする必要はない.また,左側房室弁逆流(left atrioventricular valve regurgitation: LAVVR)があっても,自覚症状を認めず,著明な左室拡大や左室駆出率の低下がなければ,体育の授業の制限は必要ない.重度のLAVVR,左室流出路狭窄,左室の著明な拡大,左室機能の低下,肺高血圧,不整脈を認める場合は,その程度に応じた運動制限が必要である.