p.64 抽出テキスト
率が高いことが知られている392).また術後に心膜切開後症候群や収縮性心膜炎を合併する危険性もある625).いずれの治療においても閉鎖術に先立ち,心房不整脈合併の有無の確認のため詳細な検討を行うことが重要である.心房細動を合併しているようであれば,閉鎖術前にカテーテルアブレーションを行うことで閉鎖術後に洞調律を長期に維持できることが報告されている392). 高齢者で左室拡張能の低下が危惧される例では,欠損孔を閉鎖することにより左室拡張末期圧が上昇し,うっ血性心不全を発症する危険性が報告されている626, 627).特にカテーテル閉鎖術を施行する場合には肺動脈楔入圧をモニタするなど,慎重な術中術後評価が必要である. 遠隔期には1年から数年に1回の胸部X線,心電図,心エコー法による経過観察が望ましい.また,不整脈を認める場合にはホルター心電図や運動負荷心電図を検討すべきである. 部分肺静脈還流異常を合併した静脈洞型ASDの術後には,肺静脈狭窄や上大静脈症候群を合併することがあるので,CT,MRIによる経過観察を検討する628, 629). 1.2 心室中隔欠損 1.2.1 外科手術とカテーテル閉鎖術 心室中隔欠損の手術成績は良好で,近年の手術による死亡率は1~2%未満となっており,長期予後も良好である563, 625).本疾患に対して海外ではカテーテル閉鎖術も施行されているが,外科手術との比較検討は行われておらず,カテーテル閉鎖術後の長期予後に関する情報は限られている630).2020年現在,国内では心室中隔欠損に対するカテーテル閉鎖術は未承認である. 1.2.2 急性期・遠隔期の合併症 心室中隔欠損のカテーテルによる閉鎖術後には房室ブロック,三尖弁損傷による三尖弁閉鎖不全,大動脈弁閉鎖不全(AR)などを合併することが報告されており,今後の検討が必要である631). 外科手術後遠隔期には,漏斗部欠損例におけるAR,膜性部欠損例における三尖弁閉鎖不全,残存短絡の有無と程度,左室機能不全,肺高血圧の合併,右室二腔症の合併の確認のため定期的な心エコー評価が必要である.大動脈弁逸脱を伴う例では,術後にARが進行する可能性があるため,注意深い経過観察が薦められる632–634).術後に房室ブロックを合併することがあり,遠隔期に房室ブロックの程度が悪化することがないか,定期的な評価が必要である.漏斗部心室中隔欠損に合併する大動脈右冠尖逸脱に 伴うARに対する外科治療は,弁組織自体の状態を評価したうえで大動脈弁修復または大動脈弁置換を選択する. 1.2.3 長期経過観察と生活指導 遺残短絡,残存病変,肺高血圧が認められない場合は,遠隔期には1~3年に1回程度の経過観察を推奨する.有意な遺残短絡を有する症例,左心機能不全を伴う症例,肺高血圧を合併している症例では,年1回の経過観察を推奨する.遺残短絡に対する外科治療の適応は,未手術例に準じて検討すべきである635).肺高血圧の残存は重大な予後不良因子であり,十分な注意が必要である.遺残短絡閉鎖などの外科治療追加で改善の可能性があれば考慮する.肺血管作動薬などの内科治療により遠隔期予後が改善されるかどうかについては,十分なエビデンスがない. 術後の身体活動は,肺高血圧や左室機能不全を合併していなければ,原則として制限する必要はない.血行動態に影響を及ぼさない軽度の遺残短絡を有する場合も運動制限の必要はないが,感染性心内膜炎のリスクがあり,その予防が必要である. 1.3 動脈管開存 動脈管開存の多くは小児期にカテーテル閉鎖術,外科手術が実施され,その遠隔期予後は良好である636–638).現在,動脈管開存に対してはコイルやAmplatzer TMのDuct Occluder,Vascular Plugを用いたカテーテル治療,結紮術,離断術などが行われている.現在用いられている閉鎖栓はすべてMRI対応である. 外科治療後の遠隔期予後が良好であるため,離断術が行われて残存病変がなければ遠隔期の経過観察は不要とされる.カテーテル治療や結紮術の後に連続性雑音を聴取する遺残短絡を認める場合,再カテーテル治療または再手術が薦められるが639, 640),心雑音を聴取しない遺残短絡は放置してもよいとの意見もある641, 642).感染性心内膜炎のリスクがあるため予防処置が必要である.カテーテル閉鎖術後の遺残短絡には追加で閉鎖栓の留置が行われることが多い640). いずれの治療を行った場合でも,他のCHDの合併例や肺高血圧を合併していた例については,長期にわたる経過観察を検討すべきである643).