p.63 抽出テキスト
1 心房中隔欠損,心室中隔欠損, 動脈管開存 1.1 心房中隔欠損 1.1.1 カテーテル閉鎖術と外科手術の適応 カテーテル治療の普及により心房中隔欠損(ASD)の治療の主体は外科治療からAmplatzer TM Septal OccluderやOcclutech Figulla ® Flex IIを用いた経カテーテル閉鎖術に移行している.すでに国内の治療患者数も1万5000例に達している.治療適応の判断には経食道心エコー法による欠損孔周囲縁の評価が重要であり,一般に大動脈側を除く周囲縁が5 mm以上が適応となっている563).広範囲の大動脈側周囲縁欠損や後下縁欠損に対する有効性も報告されている616). 1.1.2 急性期合併症 カテーテル閉鎖術は外科手術と比べて急性期合併症が少ないことが報告されてきたが,閉鎖栓の脱落(0.5%程度)や閉鎖栓による心穿孔(0.2%程度)の合併症が発生しており,特に心穿孔に関しては長期フォローアップを行う上で重要である563, 616).本邦では本治療関連死亡の報告はないが,閉鎖栓留置に起因する心穿孔・浸食(erosion)の合併には細心の注意が必要である.心浸食発生時期は術後72時間以内の急性期が多く,急性の心嚢液貯留,心タンポナーデを起こすことが多い.このため術後は穿孔に伴う胸痛,息苦しさなどの症状に注意し,さらに術後の経胸壁心エコー所見で心嚢液の貯留の有無について経時的な評価が重要である.ただし,閉鎖栓留置後,数ヵ月から数年を経て発症する症例もまれではあるが報告されている617). 本合併症を発生するリスクの高い患者として,1欠損孔に対して大きすぎる閉鎖栓を選択された例(特に欠損孔径の150%を超える閉鎖栓の選択),2大動脈側周囲縁の広範な欠損例,3心房中隔の偏位(malalignment)によりデ バイスと心房壁さらに大動脈壁との間に過度の圧迫が生じる例,が考えられている618, 619).このような症例では,閉鎖栓と大動脈壁との機械的摩擦によって心房または大動脈壁の穿孔が起こるのではないかと推測されている. 国内で使用されるAmplatzer TM Septal OccluderとOcclutech Figulla ® Flex IIで心浸食の発生率に差があるかどうかは比較検討が行われておらず,現時点での評価は難しい618, 620).国内の経験ではいずれの閉鎖栓ともに心浸食の発生が報告されており,どちらの閉鎖栓の治療後であっても,慎重な形態評価と長期にわたる経過観察が必要である621, 622).心房中隔の偏位は加齢とともに発生率が高くなることが報告されている619).また,中隔偏位を伴う症例では一次中隔付着が左心房側に後方偏位するので,欠損孔径の測定には注意を要する.まれに閉鎖栓に感染性心内膜炎を合併したとの報告もある623, 624). 1.1.3 長期経過観察 術前から肺高血圧を合併していた症例では,術後に肺高血圧の改善の確認のため定期的な経過観察が重要である.近年,肺血管作動薬を用いて肺高血圧を管理したのちにカテーテル閉鎖術を施行する試みが行われており,この場合はより詳細で長期の観察が重要である183).2021年からは新たに延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)膜を主体に構成されたGore ® Cardioform ASD Occluderが導入された620). 外科治療,カテーテル治療いずれの治療を受けた患者であっても,遠隔期のフォローアップが必要である.残存短絡の有無,右心室容量,三尖弁閉鎖不全の有無と圧較差,心房不整脈の有無,僧帽弁閉鎖不全の程度を評価する必要がある.特に重要な項目は,成人期に発生する心房不整脈(心房細動)の合併である625).カテーテル閉鎖術は外科手術と比較し,術後の心房不整脈の発生率が低いという報告があるが,現在において同一基準で2つの治療法について比較検討することは難しい.一般に心臓手術を選択された患者はカテーテル閉鎖術の患者と比べ,欠損孔が大きく,短絡量も大きいことが多いが,周術期の心房不整脈の発生 第4章 疾患別の管理と治療